続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリース・天空の王〜

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『盟友よ。
 我と共に参れ。』

 魔法陣にいざなうスカイヤにイオリは胡散臭さを感じていた。

「どこへ?
 俺1人ですか?」

『其方の家族や供の者達も招待しよう。
 さぁ、参れ。』

「面倒だなぁ。」

『良いから、早よ来いっちゅうに!
 ハッ!ゴホン。
 では、皆。
 カプリースを頼むぞ。』

 一瞬、おっさんドラゴンが見え隠れしたスカイヤにイオリは片眉を上げた。
 どうやら、訳があるらしい。

 イオリは苦笑しながら“ドデカゴン”達に振り返った。

「お世話になりました。」

 王に褒められ機嫌が良いのか、ジェモーが優しい笑顔で頷いた。

『こちらこそ、会えて良かった。
 火の山に住む火龍にも無事の到着を伝えましょう。』

 イオリは楽しそうに歌を口ずさむ火龍を思い出し微笑んだ。

「ありがとうございます。」

 別れの手を振る子供達と共にスカイヤに近づいて行くと、リオンが前に出てきた。

『次こそは俺が勝つぞ!』

「面倒な人・・・いや、ドラゴンですねー。
 次も俺の勝ちです。」

『生意気な人族め。』

 イオリが微笑めばリオンも楽しそうに笑った。

『まだ、全ての絵本を読めていない。
 また語り合おうぞ。』

 周りを気にして内緒話のように顔を近づけてくるトーロにナギはニコリと頷いた。

「お話は世界中にあるんだ。
 楽しい話は山ほどあるよ。」

『山ほど・・・それは楽しみである。』

 珍しくトーロの顔が緩むとポワソンが大袈裟に驚いた。

『まぁまぁ、トーロの笑顔なんて何年振りかしら?
 珍しい事もあるのね。
 坊や達、またね。』

『うるさい!』

 トーロの抗議の声もお構いなしにポワソンが別れの手を振ると、隣に真っ黒なドラゴンがやって来た。

『我らが王がお待ちだ。
 さぁ、行け。』

 相変わらず簡潔明瞭なトラゴスにリブラが呆れた顔をした。

『お前は本当に・・・残念な奴だな。
 短い間だったけど、有意義な時間だった。
 “愛し子”と友人達。
 また、会う事もあるかもね。』

 すると、紫のドラゴンがイオリに顔を近づけていた。

『次も楽しい事して遊ぼうね。』

「真っ平ですよ。
 サジテールさんもお元気で。」

『うん。スカル、スカル。
 イオリ、良い奴だった!』

 傍若無人なサジテールにスカルピーネが面倒そうに顔を顰めた。

『オイラは、とっくに知ってるよ。
 “愛し子”元気で。』

 頷くイオリに影が覆った。

『“愛し子”なんて面倒な役目を背負ったわね。
 別に貴方が英雄にならなくても良いんじゃない?』

 アリエーテのキツイ物言いにも慣れたもんで、イオリは笑顔で顔を上げた。

「心配してくれて有難うございます。
 ごもっともです。
 だから、無理だったら逃げますよ。」

『変わってるわね。
 精々、頑張って。
 またカプリースに来なさいな。
 私達には時間がある。
 いつまでも待っているわ。』

 まるでドレスを捌くように、尻尾を回転させるとアリエーテは離れて行った。

 少し、離れたところでは子供好きが発覚したキャンサーにニナを筆頭に子供達が構われている。
 皆んなが思い思いの別れを告げている中、イオリは雲間から恐る恐る覗いている幼ドラゴン達に手を振った。
 
『ありがとう。
 貴方のおかげね。』

 嬉しそうな声に振り返ると、ヴァルジネが誇らし気に立っていた。

「いいえ。
 ヴァルジネさんの努力の賜物ですよ。
 どうぞ、ドラゴンの努めとやらを守って下さいね。」
 
『えぇ、頑張るわ!』

 コーラルピンクの尻尾が嬉しそうに揺れる隙間からヴァルソーが何やらスカイヤと話しているのが見えた。

「そろそろかな?
 皆んな~。
 行くよ!」

 それぞれが別れを終えるとイオリの元に集結した。
 光り輝く魔法陣の中心に立つとイオリは“ドデカゴン”に手を振った。

「それじゃ皆さん、お元気でー!
 バイバイ。」

 そうしてイオリ達は眩い光に包まれていった。
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