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旅路 〜カプリース・玉座なる山頂〜

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 山頂である“玉座”に神々しく輝く光の柱がたった。

 人型だった“ドデカゴン”のメンバー達が一斉にドラゴンの姿に変化し、一体は大きな光の塊となっていた。
 
 眩しさで顔を背けたイオリ達が目にしたのは色取り取りのドラゴン達が自分達を見下ろす様子だった。

 ドレスや髪と同じ華やかな赤のドラゴンはアリエーテ。
 小さなメガネを掛けた緑のドラゴンはトーロ。
 知的さを隠さない黄色のドラゴン、ジェモーは目に薄い傷を持っていた。
 恥ずかしそうにしていたアプリコット色のキャンサーは子供達が怖がらないかと顔を覗き込んでいる。
 藍の色を持つリブラはドラゴンに変化しても爽やかさは失っていない。
 今だに頭を摩るダークレッド色のスカルピオーネを、美しいパープル色の鱗を煌めかせるサジテールが笑い。
 黒色のトラゴスは腹を抑え、納得できないと不満そうだった。
 心ここに在らずのミント色のヴァルソーがフラフラしているのを、水色のポワソンが世話を焼くように話しかけている。

「「「「「おぉぉ!!」」」」」

 人型ではなく、ドラゴンの姿で揃った“ドデカゴン”に子供達やヴァルトが感嘆すると、黄色のドラゴンのジェモーがイオリに顔を近づけた。

『リオンは何とか出来ませんか?』

 今も尚、眠りこけているリオンを困った様に見つめるジェモーにイオリは笑った。

「そうですね。
 そろそろ起こしましょうか。
 さてさて、どうやって起こそうかな?」

「「任せて!」」

 イオリが考え込む間もなく双子が飛び出して行く。
 そしてリオンを仰向けにして口を大きく開けると大量の胡椒の実をその中に詰め込み始めた。

「うわぁぁ・・・。」
「ひでぇ。」

 容赦のない双子にドン引きするイオリとヒューゴの側で、ゼンやクロムスが笑い転げていた。
 どうやら、ドラゴンのマイペースにゼンのストレスも溜まっていたようだ。

「スコルちゃん、これもいる?」

 ニナが差し出す瓶を見て、双子はニヤリとした。

『それは何です?
 随分と鼻につく匂いがします。』
 
 ドラゴン達は鼻も効く。
 ジェモーが顔を顰めると、可愛い容姿の少女がニッコリと見上げた。

「お酢!」

 満面の笑みのニナをヴァルトが引き攣った顔で指差した。

「胡椒と酢かよっ!
 お前ら、鬼だなっ!
 ニナまで・・・。
 誰だ!
 いたいけな少女に悪の教育を施したのは!?」

 恐らく、その教育をした張本人である狼獣人の双子がニヤニヤしながらリオンの口にお酢を流し込み始めた。

「「お目覚めの時間ですよ~。」」

 優しく声を掛ける双子はリオンの口と鼻を抑えた。
 
『ボゴ。。
 ガァッ!!
 オエェェェ。
 ゴホゴホ。
 ん??
 あ・・アァァァァ!!』

 目をカッ開き悶絶して転げ回るリオンを見た双子は満足そうに互いに握手をした。

「「成功!」」

 確かにオレンジ色の男は目覚めた。
 
 しかし、誰もが男の悲鳴に顔を顰め、双子の恐ろしさを知った瞬間だった。

『アンタも貰えば?』

 呆れ顔のアリエーテに、そう言われたサジテールは初めて顔を青くして首をブンブンと横に振ったのだった。
 
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