続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリース・玉座なる山頂〜

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『オラァァ!小僧!!
 勝負だ!』

 振り上げたリオンの拳は、ただの拳ではなかった。
 その拳は炎を纏わし強烈なパンチを繰り出す。
 ドラゴンと比べて、ちっぽけな人間など簡単に塵になってしまう位のパワーがあった。

 ドンッ!!

 それは一瞬の事だった。
 
 聞いた事のない破裂音に耳を塞ぐドラゴン達は、リオンが崩れ落ちて膝をつくという姿を目撃した。
 
 ドサッ

 力無く倒れたリオンと涼しい顔で近づいて来るイオリに驚愕の視線が集まる。

「到着しました。」

 ニコッと微笑むイオリに一同が静まり返った。

「ここが“玉座”ですか?
 何にもないなぁー。」

 リオンの暴走には“ドデカゴン”のメンバーですら惨事が起こると覚悟していた。
 辺りを見回し、ただ平地が広がるだけの山頂に首を傾げるイオリには、先程のリオンの攻撃など気にするまでもないようだ。

 “絶対神の愛し子”

 ドラゴン達は今になってイオリの計り知れない力に気づいた。

「「「「イオリー!!」」」」

 駆け寄る子供達に不安は見えない。
 どうやら、本当にイオリが“ドラゴンの試練”をクリアすると信じていたようだ。

「みんなは無事?」

 子供達との再会を喜ぶイオリの肩をヴァルトが叩いた。
 その顔はイオリが見事に試練を達成したからなのか、先程の騒動も無事に解決したからなのか、実に安堵した顔で微笑んでいた。

「ドラゴンに乗っての登場とは派手な事だな?」

「フフフ。
 結構、大変でしたよ。」

 互いの無事を確認していたイオリ達にジェモーが近づいた。

『何をしたのですか?』

 それは仲間のドラゴンが簡単に膝をつかされた事への怒りよりも純粋な好奇心からの質問だった。

「えっ?
 一緒に食事したら仲良くなったんですよ。
 それで送ってもらいました。」

『えっ?
 食事?』

 質問した内容とは明らかに違う答えである事はジェモーにも直ぐに分かった。

『・・・あぁ。
 あの幼いドラゴンの事ですね。
 えぇ、確かにその事も大いなる疑問ですが、私が聞きたいのはリオンに何をしたんですか?と言う事です。』

 今だに起き上がる気配のないリオンを指差すジェモーは真剣な顔をしていた。
 
 恐る恐るとリオンに近寄ったリブラが怪訝な顔をする。

『寝てる?』

 小気味良いリズムで呼吸をしているリオンは眠りについていた。
 リブラが揺り動かしながら声を掛けても目覚める気配がない。

「ちょっと強めの睡眠弾を撃ち込みました。
 大丈夫です。
 暫くしたら目覚めると思いますよ。
 悪戯する魔獣にはいつも眠ってもらうんです。」

 イオリが拳銃をクルクルと回しているのを見てもジェモーやリブラ達はチンプンカンプンの様子だ。

 ただ1人、危険を察して逃げようとする男がいた。

『は~い。逃げなぁい。』

 それは“遊興の道化”サジテールが“慈愛の啓示”ポワソンに捕まった瞬間だった。
 
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