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旅路 〜カプリース・玉座なる山頂〜
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ジェモーの石造りの塔より移動した仲間達はイオリより一足先に“玉座”に辿り着いていた。
「何もない。」
「思っていた以上に何もないな。」
思わずパティとヴァルトが口するのも無理はない。
下から見れば険しく見えていた山であったが、到着してみれば山頂は穏やかな平地が広がっていた。
下を覗こうにも、いつの間にやら分厚い雲海が広がり、山の麓が見えなくなっていた。
「どうだ?
イオリはどの辺にいる?」
『分かんない。
何かに邪魔されてる。』
縁から山下を見つめてたヒューゴとゼンの会話を紫色のツンツンした髪を持つ男・・・サジテールがニヤニヤとしながら聞いていた。
『おい。』
サジテールが振り返れば、幼馴染であるスカルピオーネが睨めつける視線を向けていた。
『余計な事してないよな?』
問い詰めるスカルピオーネにサジテールはヘラヘラと笑いながら首を横に振った。
『この雲の事なら俺も知らないよ。
今、ジェモーが“絶対神”の思し召しって言ってたじゃない。』
スカルピオーネが顔を近づけてヒソヒソ声で咎めた。
『それじゃない。
今、お前・・・何かやらかしてる顔してたぞ。』
『何言ってんのさ。
スカル~♫
別に、お前達を呼びに行く途中で見つけた奴らをけしかけてなんかいないぜ。』
頭上で手を組んで戯けるサジテールにスカルピオーネは大きな溜息を吐いた。
『お前ぇぇぇ・・・。
さっきの神獣・フェンリルの言葉を忘れたのか?
神獣に喧嘩売るな。バカ!
オイラを巻き込むなよ。』
頭を抱えるスカルピオーネをサジテールはお構いなしでケラケラと笑う。
『何事もさ、怒られなきゃ面白くないじゃん。』
いらん事をするサジテールが、ここにきて“遊興の道化”の姿を見せ始めた。
「何したの?」
2人の会話に夢中になっていたスカルピオーネがビクリと振り返った。
「イオリに何したの?」
それはスミレ色の耳をピンっと立てて見上げていた狼獣人の少年だった。
「な・に・し・た・の?」
腰に手を当てて睨みつけるスコルにスカルピオーネは顔を引き攣らせ、サジテールは戯けた。
『別に大した事じゃないんだよ。
スカルが大袈裟なんだ~。
俺がしたのは同胞に客人が来た事を教えただけ。』
「ふーん。」
狼獣人の少年の疑う様な視線を楽しみながらサジテールはニヤリとした。
『まぁ、少し遊んでもらいな。
・・・とは言ったかなぁ。』
スコルが、どんな反応を見せるか楽しんでいたサジテールは、騒ぐか怒るかと想像していた期待を裏切られる事になる。
「へー。
そうだったんだ。」
狼獣人の少年は実につまらなそうに、分厚い雲を見つめた。
『・・・?
それだけかい?』
「ん?
何が?」
『君等のイオリが心配じゃないのかい?』
スコルは考え込むと首を傾げた。
「心配はしてるけど、イオリがドラゴンに負けるとは思ってないよ。
どっちかというと、ドラゴンと遊べて良いなぁ。
かな。」
もう、用はないとばかりにスタスタと去るスコルをサジテールとスカルピオーネはポカンとして見送った。
『なぁ・・・お前。
別の意味で余計な事したんじゃないか?』
『え?』
サジテールが間抜けな声を出した時だった。
ドガァァン!!
唐突な爆音に視線が集まる。
分厚い雲を突き抜けて飛び上がってきた真っ黒なドラゴンの頭にイオリが優雅に胡座をかいて座っているのが見えた。
「何もない。」
「思っていた以上に何もないな。」
思わずパティとヴァルトが口するのも無理はない。
下から見れば険しく見えていた山であったが、到着してみれば山頂は穏やかな平地が広がっていた。
下を覗こうにも、いつの間にやら分厚い雲海が広がり、山の麓が見えなくなっていた。
「どうだ?
イオリはどの辺にいる?」
『分かんない。
何かに邪魔されてる。』
縁から山下を見つめてたヒューゴとゼンの会話を紫色のツンツンした髪を持つ男・・・サジテールがニヤニヤとしながら聞いていた。
『おい。』
サジテールが振り返れば、幼馴染であるスカルピオーネが睨めつける視線を向けていた。
『余計な事してないよな?』
問い詰めるスカルピオーネにサジテールはヘラヘラと笑いながら首を横に振った。
『この雲の事なら俺も知らないよ。
今、ジェモーが“絶対神”の思し召しって言ってたじゃない。』
スカルピオーネが顔を近づけてヒソヒソ声で咎めた。
『それじゃない。
今、お前・・・何かやらかしてる顔してたぞ。』
『何言ってんのさ。
スカル~♫
別に、お前達を呼びに行く途中で見つけた奴らをけしかけてなんかいないぜ。』
頭上で手を組んで戯けるサジテールにスカルピオーネは大きな溜息を吐いた。
『お前ぇぇぇ・・・。
さっきの神獣・フェンリルの言葉を忘れたのか?
神獣に喧嘩売るな。バカ!
オイラを巻き込むなよ。』
頭を抱えるスカルピオーネをサジテールはお構いなしでケラケラと笑う。
『何事もさ、怒られなきゃ面白くないじゃん。』
いらん事をするサジテールが、ここにきて“遊興の道化”の姿を見せ始めた。
「何したの?」
2人の会話に夢中になっていたスカルピオーネがビクリと振り返った。
「イオリに何したの?」
それはスミレ色の耳をピンっと立てて見上げていた狼獣人の少年だった。
「な・に・し・た・の?」
腰に手を当てて睨みつけるスコルにスカルピオーネは顔を引き攣らせ、サジテールは戯けた。
『別に大した事じゃないんだよ。
スカルが大袈裟なんだ~。
俺がしたのは同胞に客人が来た事を教えただけ。』
「ふーん。」
狼獣人の少年の疑う様な視線を楽しみながらサジテールはニヤリとした。
『まぁ、少し遊んでもらいな。
・・・とは言ったかなぁ。』
スコルが、どんな反応を見せるか楽しんでいたサジテールは、騒ぐか怒るかと想像していた期待を裏切られる事になる。
「へー。
そうだったんだ。」
狼獣人の少年は実につまらなそうに、分厚い雲を見つめた。
『・・・?
それだけかい?』
「ん?
何が?」
『君等のイオリが心配じゃないのかい?』
スコルは考え込むと首を傾げた。
「心配はしてるけど、イオリがドラゴンに負けるとは思ってないよ。
どっちかというと、ドラゴンと遊べて良いなぁ。
かな。」
もう、用はないとばかりにスタスタと去るスコルをサジテールとスカルピオーネはポカンとして見送った。
『なぁ・・・お前。
別の意味で余計な事したんじゃないか?』
『え?』
サジテールが間抜けな声を出した時だった。
ドガァァン!!
唐突な爆音に視線が集まる。
分厚い雲を突き抜けて飛び上がってきた真っ黒なドラゴンの頭にイオリが優雅に胡座をかいて座っているのが見えた。
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