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旅路 〜カプリース・ドラゴンの試練〜
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ブチブチ
ガブガブ
バリバリ
ベチャベチャ
おおよそ、食事をしている音に聞こえない無作法な食卓についているのは、摩訶も不思議なドラゴンと人族の青年だった。
解体したジェネラルオークの肉を良質な油で揚げると、パリパリな皮が香ばしい香りを引き立たせる。
手を混み過ぎるとドラゴン達が嫌がるかと思い、塩と香り高いスパイスだけのシンプルな味付けは正解だったらしい。
肉なんて焼く事のないドラゴン達は、当初イオリのする事に懐疑的だったが、素晴らしい匂いの前に敗北を選んだ。
イオリが手早く解体し、丸揚げにしたジェネラルオークは彼らにとって、この上ない初めての料理になったようだった。
夢中になっていたドラゴン達であったが、腹が満たされると落ち着いたのか、腹ばいになりながらマッタリとし始めた。
『イオリ 王サマ アウ?』
「うん。
スカイヤに会いに来たんだ。
そろそろ、山頂に向かわないとな。」
呑気に山を見上げたイオリに幼いドラゴン達は心配そうに顔を見合わせた。
『“ギョクザ” イク?』
「うん。
“ドデカゴン”のメンバー達と約束してるんだ。」
幼きドラゴンの彼等にとっても山頂である“玉座”は特別なのだろう。
そこを目指すイオリを尊敬するようなキラキラした眼差しで見つめてきた。
「みんなと遊ぶのも楽しかったけど、急がないと。
食べたら行くよ。」
イオリが皿に残った料理を頬張ると、別れを察したドラゴン達は寂しそうに首をフラフラとさせた。
『・・・オクル。』
それまで無口だった黒のドラゴンがグイッと顔をイオリに近づけた。
「えっ?」
唐突な出来事にイオリが首を傾げると、黒のドラゴンは甘えるように顔をイオリに擦り付けた。
『イッショ イク。』
「玉座に?」
『ウン。』
全身で離れたくないと意思表示をする黒のドラゴンにイオリは微笑んだ。
「ありがとう。」
_________
何も特別な物などなかった。
玉座と呼ばれた山頂は険しい山において、実になだらかな場所だった。
「何もない。」
呟くパティの隣でヴァルトが頷いた。
「思っていた以上に何もないな。」
ドラゴン達の力によって瞬時に移動してきた彼等は“玉座”と呼ばれる平地に辿り付くと、それを待っていたかのように分厚い雲が空一面を覆い尽くした。
「どうだ?
イオリはどの辺にいる?」
山頂の縁に立ち、目を凝らすゼンにヒューゴが話しかけた。
『分かんない。
何かに邪魔されてる。』
突如現れた分厚い雲を見て不満そうなゼンにジェモーが近づいてきた。
『この雲は珍しいですね。
“絶対神”による保護の影響かも知れません。
神獣である貴方でさえも干渉出来ないとなれば、絶対神も何かお考えがあるのでしょうか。』
『・・・リュオン様め。
次に文句言ってやるんだから。』
プリプリと不満そうにするゼンをヒューゴとジェモー宥めた。
どれ程経っただろう。
変化は突如としてやって来た。
ドガァァン!!
白雲が広がる一面から、唐突に真っ黒なドラゴンが分厚い雲を突き抜けて飛び上がってきた。
『何で、あの子が?』
ジェモーが驚く中、ゼンが嬉しそうに吠えた。
『イオリだ!イオリ!』
一同の視線を集めた真っ黒なドラゴンの頭にイオリが胡座をかいて座っていた。
ガブガブ
バリバリ
ベチャベチャ
おおよそ、食事をしている音に聞こえない無作法な食卓についているのは、摩訶も不思議なドラゴンと人族の青年だった。
解体したジェネラルオークの肉を良質な油で揚げると、パリパリな皮が香ばしい香りを引き立たせる。
手を混み過ぎるとドラゴン達が嫌がるかと思い、塩と香り高いスパイスだけのシンプルな味付けは正解だったらしい。
肉なんて焼く事のないドラゴン達は、当初イオリのする事に懐疑的だったが、素晴らしい匂いの前に敗北を選んだ。
イオリが手早く解体し、丸揚げにしたジェネラルオークは彼らにとって、この上ない初めての料理になったようだった。
夢中になっていたドラゴン達であったが、腹が満たされると落ち着いたのか、腹ばいになりながらマッタリとし始めた。
『イオリ 王サマ アウ?』
「うん。
スカイヤに会いに来たんだ。
そろそろ、山頂に向かわないとな。」
呑気に山を見上げたイオリに幼いドラゴン達は心配そうに顔を見合わせた。
『“ギョクザ” イク?』
「うん。
“ドデカゴン”のメンバー達と約束してるんだ。」
幼きドラゴンの彼等にとっても山頂である“玉座”は特別なのだろう。
そこを目指すイオリを尊敬するようなキラキラした眼差しで見つめてきた。
「みんなと遊ぶのも楽しかったけど、急がないと。
食べたら行くよ。」
イオリが皿に残った料理を頬張ると、別れを察したドラゴン達は寂しそうに首をフラフラとさせた。
『・・・オクル。』
それまで無口だった黒のドラゴンがグイッと顔をイオリに近づけた。
「えっ?」
唐突な出来事にイオリが首を傾げると、黒のドラゴンは甘えるように顔をイオリに擦り付けた。
『イッショ イク。』
「玉座に?」
『ウン。』
全身で離れたくないと意思表示をする黒のドラゴンにイオリは微笑んだ。
「ありがとう。」
_________
何も特別な物などなかった。
玉座と呼ばれた山頂は険しい山において、実になだらかな場所だった。
「何もない。」
呟くパティの隣でヴァルトが頷いた。
「思っていた以上に何もないな。」
ドラゴン達の力によって瞬時に移動してきた彼等は“玉座”と呼ばれる平地に辿り付くと、それを待っていたかのように分厚い雲が空一面を覆い尽くした。
「どうだ?
イオリはどの辺にいる?」
山頂の縁に立ち、目を凝らすゼンにヒューゴが話しかけた。
『分かんない。
何かに邪魔されてる。』
突如現れた分厚い雲を見て不満そうなゼンにジェモーが近づいてきた。
『この雲は珍しいですね。
“絶対神”による保護の影響かも知れません。
神獣である貴方でさえも干渉出来ないとなれば、絶対神も何かお考えがあるのでしょうか。』
『・・・リュオン様め。
次に文句言ってやるんだから。』
プリプリと不満そうにするゼンをヒューゴとジェモー宥めた。
どれ程経っただろう。
変化は突如としてやって来た。
ドガァァン!!
白雲が広がる一面から、唐突に真っ黒なドラゴンが分厚い雲を突き抜けて飛び上がってきた。
『何で、あの子が?』
ジェモーが驚く中、ゼンが嬉しそうに吠えた。
『イオリだ!イオリ!』
一同の視線を集めた真っ黒なドラゴンの頭にイオリが胡座をかいて座っていた。
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