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旅路 〜カプリース・ドラゴンの試練〜
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森の中に入ったイオリは辺りを見渡した。
「ふふ。
随分とお喋りな森だね。」
思わず微笑むイオリに、小さな笑い声が聞こた。
足を踏み入れた世界は、輝く光の玉が踊る様に飛び跳ねていた。
光の正体が精霊と分かっているイオリに恐怖はない。
「ニナが喜ぶな。」
楽しそうな彼らの囁き声が聞こえてくる様でイオリは軽やかな気持ちで歩みを進めた。
それは本当に突然だった。
近寄って来る気配すら感じなかった。
今まで何処に隠れていたのかライノライというサイに似た大型の魔獣が姿を現したのだ。
殺気が漏れているライノライをイオリは穏やかに見守った。
「そうか。
ドラゴン達がいたからジェモーさんの塔の周囲には魔獣の気配がなかったんだね。
でも、俺が来たから様子を見に来たのかい?」
ブルルルルッ。
鼻息を荒くするライノライの様子から、イオリを警戒しているのが分かる。
ライノライだけじゃない。
見慣れぬ侵入者に、森の住人達の様々な視線が突き刺さっていた。
イオリはグローブを取ると、ゆっくりと右手を伸ばした。
暫くすると、ライノライが近づき匂いを嗅ぎ始めた。
「君と喧嘩する気はないんだ。
怖がらないで。」
微笑むイオリをライノライは、値踏みするように見つめていた。
ライノライから殺気が消えた。
イオリは、さらに腕を伸ばしライノライの顔を撫でた。
「山頂に行きたいだけなんだ。
通らせてくれないか?」
ブロロ・・・
まるで返事をしたかのように短い泣き声を上げたライノライは『もう、用はない。』とばかりにイオリに背を向けた。
「ありがとう。
君も気をつけて。」
帰っていくライノライを見送るとイオリは大きな息を吐いた。
「頭の良い子だったな。
これからも、彼みたいに理解の早い子が来ると良いんだけど・・・。
そうは、甘くないか。」
自分の発言に笑うとイオリは、クスクスと笑う光の玉にウィンクをした。
「さて、何処からいけば良いのかな?」
光の玉は我先にと進むべき方向に移動すると、ピョンピョンと飛び跳ねた。
「そっちなんだね。
ありがとう。」
強者として自然を支配をしていたドラゴン達にとって、これは誤算だった。
彼らは知らなかったのだ。
この森にはイオリに手助けをするモノ達が存在する事を・・・。
ジェモーの石造りの塔を出発して暫く経ってもイオリは危険な目に遭う事もなければ、襲ってくる魔獣に出会う事もなく山頂への道を進んでいた。
「上から様子を見てみるか・・・っ!」
木を登ろうとしたイオリの直感が警告音を鳴らしていた。
飛んで避けたイオリは思わず舌打ちをした。
ドンッと鈍い音をして落ちてきたソレは、大きな口からチロチロと二又に別れた舌を出していた。
ギョロリとした大きな黄色の目はイオリを捕食しようと狙いを定めている。
「大蛇・・・こいつは、サーペントの別種のニューサンスか。
知能は高いが話を聞いてくれる相手でもないな。」
腹を空かせた大蛇は餌を前に欲望を抑える事ない。
体をしならせ、一気に襲い掛かってきた大蛇にイオリは拳銃を放った。
「ふふ。
随分とお喋りな森だね。」
思わず微笑むイオリに、小さな笑い声が聞こた。
足を踏み入れた世界は、輝く光の玉が踊る様に飛び跳ねていた。
光の正体が精霊と分かっているイオリに恐怖はない。
「ニナが喜ぶな。」
楽しそうな彼らの囁き声が聞こえてくる様でイオリは軽やかな気持ちで歩みを進めた。
それは本当に突然だった。
近寄って来る気配すら感じなかった。
今まで何処に隠れていたのかライノライというサイに似た大型の魔獣が姿を現したのだ。
殺気が漏れているライノライをイオリは穏やかに見守った。
「そうか。
ドラゴン達がいたからジェモーさんの塔の周囲には魔獣の気配がなかったんだね。
でも、俺が来たから様子を見に来たのかい?」
ブルルルルッ。
鼻息を荒くするライノライの様子から、イオリを警戒しているのが分かる。
ライノライだけじゃない。
見慣れぬ侵入者に、森の住人達の様々な視線が突き刺さっていた。
イオリはグローブを取ると、ゆっくりと右手を伸ばした。
暫くすると、ライノライが近づき匂いを嗅ぎ始めた。
「君と喧嘩する気はないんだ。
怖がらないで。」
微笑むイオリをライノライは、値踏みするように見つめていた。
ライノライから殺気が消えた。
イオリは、さらに腕を伸ばしライノライの顔を撫でた。
「山頂に行きたいだけなんだ。
通らせてくれないか?」
ブロロ・・・
まるで返事をしたかのように短い泣き声を上げたライノライは『もう、用はない。』とばかりにイオリに背を向けた。
「ありがとう。
君も気をつけて。」
帰っていくライノライを見送るとイオリは大きな息を吐いた。
「頭の良い子だったな。
これからも、彼みたいに理解の早い子が来ると良いんだけど・・・。
そうは、甘くないか。」
自分の発言に笑うとイオリは、クスクスと笑う光の玉にウィンクをした。
「さて、何処からいけば良いのかな?」
光の玉は我先にと進むべき方向に移動すると、ピョンピョンと飛び跳ねた。
「そっちなんだね。
ありがとう。」
強者として自然を支配をしていたドラゴン達にとって、これは誤算だった。
彼らは知らなかったのだ。
この森にはイオリに手助けをするモノ達が存在する事を・・・。
ジェモーの石造りの塔を出発して暫く経ってもイオリは危険な目に遭う事もなければ、襲ってくる魔獣に出会う事もなく山頂への道を進んでいた。
「上から様子を見てみるか・・・っ!」
木を登ろうとしたイオリの直感が警告音を鳴らしていた。
飛んで避けたイオリは思わず舌打ちをした。
ドンッと鈍い音をして落ちてきたソレは、大きな口からチロチロと二又に別れた舌を出していた。
ギョロリとした大きな黄色の目はイオリを捕食しようと狙いを定めている。
「大蛇・・・こいつは、サーペントの別種のニューサンスか。
知能は高いが話を聞いてくれる相手でもないな。」
腹を空かせた大蛇は餌を前に欲望を抑える事ない。
体をしならせ、一気に襲い掛かってきた大蛇にイオリは拳銃を放った。
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