続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリース〜

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 ズラリと並んだドラゴンがイオリを囲んだ。 

『我々は山の山頂“玉座”にてお迎え致します。
 どうぞ、お気をつけて。』

 真剣な顔のジェモーにイオリは頷いた。

『大きな花には触っちゃ駄目よ。
 綺麗だけど、大体が猛毒だから。』

 穏やかに手を振るポワソンにイオリは微笑み返す。

『到着を楽しみにしている。』

 ぶっきらぼうなトラゴスをイオリは何だな好きになってきていた。

「はい。」

 その他のドラゴンも色々と労いの声を掛ける中、ヴァルジネはコソッと手を振っていた。


「じゃ、行ってきます。」

 笑顔で振り返るイオリを子供達が手を振って見送った。

「「「「いってらっしゃーい!!」」」」

『イオリ。
 早く終わらせてね。』

 ゼンが声を掛けると、イオリはニコッと頷いた。

 軽く屈伸し、イオリは迷う事なく木々の中に入って行った。

 イオリが姿を消したのを確認したドラゴン達が山頂へと飛び立とうとしていた時だった。

『もし・・・。
 もし、イオリに何かあったら世界の滅亡と思えよ。
 ”ダークエルフ・ルミエール“の野望を止めるのはイオリだけだ。
 再び混沌の世界に舞い戻った時、その責任はドラゴンにもあると自覚しろ。』

 聞いた事のないゼンの低い声だった。

 種族が違っても神獣であるゼンの言葉はドラゴン達を氷つかせた。

 スタスタと歩いたゼンは振り返ると、ギラリとした目を向けた。

『ほら、さっさと“玉座”って所に案内してよ。
 イオリはすぐに着いちゃうよ。』

 それに同意するかのようにルチアがゼンに続いた。

『そうですね。
 どうやら、ドラゴン達は“神の愛し子”であるイオリの力を過小評価している様です。』

 澄ました顔で微笑むルチアにドラゴン達が困惑した。

『我々が思っているよりも彼は強いと?』

 ジェモーの問いに答える事なく騒いだのは子供達だった。

「イオリ笑ってたね。」
「満面の笑みだった。」
「凄い集中しているって事じゃない?」
「早く行かないと、イオリの方が先に着いちゃうよ。」

『笑ってた?
 笑うと、どう変わるのだ?』

 興味深げに近寄ってきたトーロにヴァルトが苦笑した。

「イオリは常に笑顔でいますが、今日の笑顔は嘗て”パライソの森の主“を跪かせた時を思い出します。
 アイツは大型魔獣だろうと、果敢に立ち向かう男です。
 俺達はイオリが笑顔で山の頂に到着すると信じています。」

 ドラゴン達は子供達やヴァルト達が期待に満ちた瞳でイオリを見送ったのに気づいた。

 決して、“天空の王”スカイヤが望んで迎えた客人であり、火の国の火龍からの推薦を受けた人物に嫉妬したから意地悪をして試練を与えたわけではない。
 
『・・・っは!
 今のは?』
 
 限りなく近くで大型魔獣の殺気が途切れ事に気付いたリオンが森を振り返った。

「始まったな。」

 そう呟くと、ヒューゴはニヤリとして困惑顔のドラゴン達を見つめたのだった。
 
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