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旅路 〜カプリース〜

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 “情熱による華美”アリエーテ
 “探求への欲望”トーロ
 “知識への献身” ジェモー
 “怯懦ゆえの慧眼”キャンサー
 “果敢なる強靭”リオン
 “顧慮する激昂”リブラ
 “不撓の忍耐”スカルピオーネ
 “遊興の道化”サジテール
 “至誠ゆえの叡智”トラゴス
 “神秘の輪廻”ヴァルソー
 “慈愛の啓示”ポワソン

 そして、彼らと同じ特別な席に座ろうとしているヴァルジネ。

 彼らをドラゴンの頂点“ドデカゴン”と呼ぶ。

 知能も強さも持ち合わせた彼らはドラゴン種達の中でも特異な存在だった。
 その訳をジェモーが教えてくれた。

『スカイヤ様は神獣であられ、我ら“ドデカゴン”はその眷属という事になります。
 ドラゴンだとて、“天空の王”に謁見できるのは我々だけです。
 とは言え、そんな我々も直接お会いできる機会は多くはありません。
 それ故に、ドラゴン達を差し置いて、客人をスカイヤ様に面会させる事を不満に思う者もいるのです。』

 ドラゴンの試練は、そんな不満な声を消し去る為にある。
 彼は、そう言いたのだろう。
 
「“ドデカゴン”の皆さんもスカイヤには簡単に会えないのですか?」

 イオリの問いかけにジェモーは深く頷いた。

『当然です。
 絶対神より神獣として任された務めがあるスカイヤ様には、我々も簡単には会えないんですよ。』

 誇らしげなジェモーを前に、イオリは暇そうに眠りこけていた純白のドラゴンを思い出し首を傾げた。

 瞬間的にチラリと双子を見れば、口を出したくてソワソワしているパティをスコルが余計な事を言わせない様に引っ張っていた。

『そんな訳だからさぁ。
 “愛し子”イオリ君には試練を受けてもらって、スカイヤ様に謁見出来る奴だっていうのを証明してもらいたいわけ。
 雛鳥みたいに弱っちい奴じゃないって分かれば良いんだよ。
 ドラゴンってのは単純だからさ。』

 ジェモーの肩越しに顔を出したサジテールが、ニヤニヤしながら見下ろしてきた。

 ドラゴンにはドラゴンの矜持があり、彼らが崇拝する“空の王”に格下が会うのが許せないのだと隠す事なく言う彼らをイオリは気に入った。

 ニコッと笑ったイオリをサジテールの目がギラついた。
 獲物を見つけた獣の様な顔は、面白い物を見つけた子供の様でもあった。

『君の了解を得たのなら試練について説明しよう。』

 それまで黙っていたトラゴスが、スッとイオリの頭上を通り越して指差した。
 そこには高く聳え立つ山があるだけだった。

『簡単な事だ。
 あの山の頂まで来ればいい。』

 試練という、ソレが簡単な筈がなかった。

『君が山頂に向かう道中、様々な困難が立ち向かう事だろう。
 君は仲間も従魔も連れずに、たった1人で終着地を目指さねばならない。』

 至誠の名を持つトラゴスの言葉が実に冷徹に聞こえた。

『さぁ、準備が整い次第始めよう。
 我々はにて待つ。』
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