続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリース〜

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 いくら人型と言っても、機嫌の悪いドラゴンと対峙するには勇気がいる。

 自己紹介をされても“探究への欲望”トーロは、唐突にヴァルジネが飛ばされてきた事で集中していた読書の時間を邪魔されたと大変の御立腹だった。

『ジェモー!
 吾輩が邪魔をされるのが嫌いな事くらい分かっているだろう!』

『貴方が何をしていたかなんて私が知るはずがないでしょう。
 ヴァルジネの教育係を請け負った際に私が忙しい時には代わりを担うと言っていたのを忘れたのですか?』

『それは吾輩だけではないだろう?
 大体だな。
 来た時から小娘はビャービャー泣いて、うるさくて敵わん。』

『絶対に居場所が分かっている貴方が捕まえ易かっただけの話です。
 トーロ。
 私はお客様の相手をしているのです。
 貴方が巷の絵本とやらにうつつを抜かしている間でも、私は自分の研究を休止しているのですよ。
 それ以上の我儘は許しませんよ。』

『フンッ!
 忙しいってのは“愛し子”の世話か?
 だったら早く終わらせろ。
 吾輩には新しい物を知識として得る時間が必要なのだ。』

 現れて以来、実に自分の欲求に忠実なドラゴンにイオリ達は驚きを隠さずに唖然としていた。

「絵本・・・?」

 トーロが左手に掴んでいた本を指差しナギが首を傾げた。
 
「そう言えば、ジェモーさんが言っていたね。
 絵本に現を抜かしているって。」

 イオリがクスッと笑うとトーロは不愉快そうに眉間に皺を寄せた。

『何だ“愛し子”。
 吾輩の何が可笑しい?』

「あぁ、そうじゃなくて。
 フフフ。
 その絵本の事なら知ってます。」

『知っていて当然だ。
 らしいからな。』

 嫌味ったらしくジェモーを睨みつけるトーロを子供達がクスクスと笑う。

『何が可笑しい!?』

 今度こそ、厳しく顔を顰めたトーロにスコルが笑いながら答えた。

「だって、その絵本を世間に普及させたのはイオリだもん。
 イオリがオレ達に聞かせてくれた話をアースガイルの貴族のお姉さんが本にまとめたんだよ。」

『何とっ!』

 トーロは驚きを隠す事なく、自身の手にあった絵本とイオリを見比べた。

「確かに俺が子供達に話し聞かせた事が始まりですが、アースガイルでは各地から集めた逸話を御伽噺として改編して絵本にしているんです。
 今では俺より子供達の方が詳しいくらいです。」

 柔かに笑うイオリをトーロは気味悪そうに顔を引き攣らせた。

『申し訳ない。
 私が過去の研究に勤しんでいるのとは反対にトーロは新しい知識を得る事が至高なのです。
 一度スイッチが入ってしまうと、それ以外は邪魔だと排除してしまう悪い癖があるんですよ。』

 固まったままのトーロをジェモーは呆れた様に見つめた。
 そんな時だった。

「ねー。
 ドラゴンさんは暇なの?」

 誰もが油断していた。

 どんな時でも恐れを知らないパティが爆弾の一投を投下したのだ。


 
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