続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリース〜

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「塔の住人というとヴァルジネさんも、“ドデカゴン”と呼ばれるドラゴンという事ですか?」

 イオリは怯えているヴァルト達に構わずにジェモー問いかけた。

『おや、“ドデカゴン”という名称をご存知でしたか。』

「はい。
 ヴァルジネさんが教えてくれました。」

 ジェモーは納得したように頷くと再び椅子に座り落ち着いたように一同を見渡した。

『“ドデカゴン”とは野良ではなく建造物を寝ぐらにしているドラゴン達の総称です。
 12のドラゴンが“ドデカゴン”の椅子に座っていますが、50年ほど前に1翼が欠けましてね。
 長年、空席でいたのですが近年になってヴァルジネが誕生したのです。
 ドラゴンとしては幼体のヴァルジネは“ドデカゴン”の候補として教育を受けている身です。
 ですので、正確には“ドデカゴン”を名乗る事は出来ません。』

 ジェモーの話を聞いたイオリは純白のドラゴンを思い出していた。

「それではスカイヤも“ドデカゴン”のメンバーなのですか?」

 ジェモーは『クククッ』と笑うと首を横に振った。

『とんでもない。
 ドラゴンの序列は色の薄さにより決まります。
 純白のドラゴンであるスカイヤ様は最高位であり、我々“ドデカゴン”の上に君臨する御方です。』

「ドラゴンの王様って事?」

 恐れる事のないパティがキラキラした顔で問いかけるとジェモーは楽しそうに頷いた。

『そうです。
 “天空の王”とは我ら“ドラゴンの王”を意味するのです。
 イオリさんがダンジョンでスカイヤ様の元に辿り着いたのも理由があったのでしょう。
 “カプリース”まで導いてきた此の子が、それを証明してくれました。』

 ジェモーに優しく撫でられてソルは擽ったそうに尾をプルプルと振った。

『全ての運命は繋がっていた。』

 カーバンクルのルチアが呟いた時だった。

ドーンッ!!

 屋根に大きな塊がブツかった衝撃でジェモーの塔が大きく揺れた。
 外を視線をやれば土煙が上がっている。

「何事だ!」

 ヴァルト、トゥーレ、マルクル、そしてヒューゴが警戒する中、ジェモーが呆れた様に溜息を吐いた。

『どうやら今日は、御機嫌が悪かった様ですね。』

 ジェモーがイオリ達に苦笑して見せると同時に1人の男が窓から姿を現した。

『吾輩の楽しみを奪ってまで小娘を送って来るな。
 ジェモー。』

 不機嫌を隠そうとすらしない男はクシャクシャの緑色の髪をよりクシャクシャっとさせ、ポイっと少女を放り投げた。

 ズルズルにベソを掻いた少女・・・ヴァルジネは声を上げる事すらせずにジェモーの足に縋りついた。

『お客様の前ですよトーロ。
 近々来る事は伝えてあった筈ですが?』

『あぁ?客?』

 振り返った男は首に下げていたメガネを掛け、部屋を見渡すとイオリに視線を固定した。

『“愛し子”か。』

 フンと鼻を鳴らした男は机に腰掛けると再び頭をクシャクシャとした。

 ジェモーはグスグスと泣くヴァルジネの頭をポンポンと叩くと立ち上がった。

『ご紹介しましょう。
 此方は私と同じく“ドデカゴン”の一席に座る“探求への欲望”トーロ。
 世界の謎を調べる心強き仲間です。』

 楽しそうに紹介するジェモーは反対にトーロは面倒臭そうに顔を顰めた。
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