続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリース〜

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 ジェモーは話を続けた。
 怒涛の様にもたらされる情報をまとめると・・・。

 “カプリース”は世界の何処からでも繋がっていて、何処にあるのかと聞かれてもドラゴン達ですら分かっていないらしい。
 時折、海から遭難者が紛れ込んでくる事があり、見つける度に助けていたら海の民と呼ばれる様になっていたとジェモーは笑った。

 ドラゴンの気質は基本的に勝手気まま。
 思いついた時に勝手に何処かに行っては、前触れも無く帰ってくるのが当たり前で、中には何年も帰って来ないドラゴンもいるらしい。

「やはり“カプリース”のが人を助けてくれていたのか・・・。」

 思わず、ヴァルトが呟くとジェモーは戯けた様に肩を竦めた。

『何だかんだ言って、我々ドラゴンにも縄張りという考え方があり“カプリース”に迷い込んだ人を助けたという感覚よりも、異物を排除したという事だと思いますよ。
 有り難がる必要はありません。』

 クスクスと笑うジェモーにイオリは親近感を感じ始めていた。

「俺が初めてスカイヤに会ったのはダンジョンでした。
 この子・・・フェニックスを授けてくれたんです。」

 イオリの肩に目を止めたジェモーは興味深そうに近づいてきた。

『あぁ、貴方がソルレカランテという名のフェニックス・・・いや私はサラマンダーと呼びましょう。
 よくぞ、此処まで“愛し子”を導いて来ました。
 スカイヤ様もお喜びになるでしょうね。』

 差し出された手に迷いなく飛び移ったソルが訴えかけるように「ピチチッ」と鳴いた。

『・・・それで遅くなったのですか?
 ヴァルジネ?貴方・・・。』

 それまでの優男から冷え凍える空気が醸し出された。

『あっ!
 言い付けた!』

 ジェモーがイオリ達に解説する様をニコニコと見つめていた美少女が慌てた様に立ち上がった。

『先生っ!
 違うの!お腹すいちゃって!
 出て行く時に食べていけば良かったんだけど・・・あのね。あのね。』

 言い訳をするヴァルジネにジェモーとソルの冷たい目が突き刺さる。

「・・・ソル。
 許していた訳ではなかったんだね。」

 イオリを見上げたパティが怯えたように震えた。

 さすがのジェモーもドラゴンだった。
 人型を取っていても威嚇の空気が只事でないと子供達ですら気づいた。

『ヴァルジネ。
 ちょっとの間、トーロの所に行ってきなさい。』

 ジェモーの人差し指にロックオンされたヴァルジネは慌てて逃げ出した。

『やだぁぁ!
 トーロ様、いつも機嫌悪いよ!?』

『お使いも出来ない子にはお仕置きです。』

 もがく美少女の抵抗が無駄だと分かったのは、ジェモーがピンっと指を弾いた瞬間に空間が開き、あっという間に吸い込まれていくヴァルジネを見た時だった。

『全く・・・。
 あの子は力がある故に他のドラゴンとは馴染めなくてね。
 塔の住人として迎えたんですが、幼さが邪魔をして余計な問題を引き起こすんですよ。
 教育を任された身としては甘やかしてばかりもいられないのでね。
 時には突き放すのも勉強です。』

 スッキリした顔で微笑むジェモーが唯の優しいドラゴンではないと知り、顔を引き攣らせるヴァルト達だった。

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