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旅路 〜カプリース〜
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美しく煌めく白い砂浜、コバルトブルーの海、艶やかな緑が印象的な森。
突如現れた風景に心を持って行かれているイオリ達の前に1人の美少女が後ろに手を組み、ニコニコと微笑んでいた。
「ヴァルジネさん?」
『そうよ。
あぁ、この姿ね?
この“カプリース”では私達ドラゴンも人型になれるのよ。
不思議でしょ。
それよりも、早く馬車を降りてらっしゃいよ。
先生の所に行かなくちゃ。』
悪戯っ子のように笑っていたヴァルジネであったが、思い出したように焦り出した。
全員降りたのを確認すると、アウラのハーネスを外しイオリは車輪が砂浜に埋もれている馬車をイベントリに仕舞い込んだ。
『さぁ、こっち。』
イオリの手を取り歩き出したヴァルジネは草木を刈り取っただけの緩やかな坂道をズンズンと進んでいく。
「どこに向かってるの?」
イオリが問い掛ければ、ヴァルジネは鬱蒼とする木々の中からチラリと見える建造物を指差した。
『先生が入り浸っている研究塔があるの。
普通のドラゴンは野良で暮らす事が多いけれど、中には人族と同じような建物を利用するドラゴンもいるのよ。』
「人と同じような生活をするのか?」
追いかけて来ていたヴァルトが問い掛ければヴァルジネは肩を竦めた。
『それもマチマチね。
昼は人型、夜はドラゴンの姿に戻るって子もいる。
“カプリース”で過ごすのが好きなドラゴンもいれば、外の世界でドラゴンとして生き抜く子もいるの。
先生のように建物で暮らすドラゴンは“ドデカゴン”って言われて、他のドラゴンよりも知能も高くて戦闘も高いわ。』
「ドラゴンも人も同じだな。」
唸るヴァルトをルチアは微笑ましく見つめた。
『いつも言っているでしょう。
人族を種族の頂点と考えているのは人族だけだって。
貴方は、そんな愚かしい人間にはならないでね。』
「あぁ。
分かっているさ。
私は世間知らずの、ちっぽけな坊々だ。」
そこまで卑下しなくても良いのでは?
と苦笑するイオリとは逆に慎ましやかなヴァルトにルチア、トゥーレ、マルクルが満足そうに頷いているのを見て何も言わずに前だけを見るイオリだった。
その建造物は石が積み重ねられて作られた背の高い塔だった。
木々の中にあって一際違和感のある塔を見上げるとヴァルジネはニッコリとした。
『ここにいるのは“ドデカゴン”が一翼、“知識への献身”ジェモー。
何かを知りたい時は先生に聞くのが1番よ。
素直に教えてくれるかは別の話だけど。
イオリなら問題ないと思う。
せんせーい!!
お客さんを連れてきたよぉぉぉ!』
ヴァルジネの出す大きな声が空気を震わせる。
耳を抑え疼くまるイオリ達に気づかずにヴァルジネが何度も叫ぶ。
「・・ヴァル・・ジネさん。
声が・・・もう少し・・小さ・・・く。」
辞めさせようとイオリが手を伸ばした時だった。
『ヴァルジネ。
君の声は、いつも五月蝿いと言っているでしょう。
お客様は丁寧にお迎えしなさいと伝えてあったはずですが?』
塔の1番下の扉が開かれ、男が困った顔でヴァルジネを見つめた。
突如現れた風景に心を持って行かれているイオリ達の前に1人の美少女が後ろに手を組み、ニコニコと微笑んでいた。
「ヴァルジネさん?」
『そうよ。
あぁ、この姿ね?
この“カプリース”では私達ドラゴンも人型になれるのよ。
不思議でしょ。
それよりも、早く馬車を降りてらっしゃいよ。
先生の所に行かなくちゃ。』
悪戯っ子のように笑っていたヴァルジネであったが、思い出したように焦り出した。
全員降りたのを確認すると、アウラのハーネスを外しイオリは車輪が砂浜に埋もれている馬車をイベントリに仕舞い込んだ。
『さぁ、こっち。』
イオリの手を取り歩き出したヴァルジネは草木を刈り取っただけの緩やかな坂道をズンズンと進んでいく。
「どこに向かってるの?」
イオリが問い掛ければ、ヴァルジネは鬱蒼とする木々の中からチラリと見える建造物を指差した。
『先生が入り浸っている研究塔があるの。
普通のドラゴンは野良で暮らす事が多いけれど、中には人族と同じような建物を利用するドラゴンもいるのよ。』
「人と同じような生活をするのか?」
追いかけて来ていたヴァルトが問い掛ければヴァルジネは肩を竦めた。
『それもマチマチね。
昼は人型、夜はドラゴンの姿に戻るって子もいる。
“カプリース”で過ごすのが好きなドラゴンもいれば、外の世界でドラゴンとして生き抜く子もいるの。
先生のように建物で暮らすドラゴンは“ドデカゴン”って言われて、他のドラゴンよりも知能も高くて戦闘も高いわ。』
「ドラゴンも人も同じだな。」
唸るヴァルトをルチアは微笑ましく見つめた。
『いつも言っているでしょう。
人族を種族の頂点と考えているのは人族だけだって。
貴方は、そんな愚かしい人間にはならないでね。』
「あぁ。
分かっているさ。
私は世間知らずの、ちっぽけな坊々だ。」
そこまで卑下しなくても良いのでは?
と苦笑するイオリとは逆に慎ましやかなヴァルトにルチア、トゥーレ、マルクルが満足そうに頷いているのを見て何も言わずに前だけを見るイオリだった。
その建造物は石が積み重ねられて作られた背の高い塔だった。
木々の中にあって一際違和感のある塔を見上げるとヴァルジネはニッコリとした。
『ここにいるのは“ドデカゴン”が一翼、“知識への献身”ジェモー。
何かを知りたい時は先生に聞くのが1番よ。
素直に教えてくれるかは別の話だけど。
イオリなら問題ないと思う。
せんせーい!!
お客さんを連れてきたよぉぉぉ!』
ヴァルジネの出す大きな声が空気を震わせる。
耳を抑え疼くまるイオリ達に気づかずにヴァルジネが何度も叫ぶ。
「・・ヴァル・・ジネさん。
声が・・・もう少し・・小さ・・・く。」
辞めさせようとイオリが手を伸ばした時だった。
『ヴァルジネ。
君の声は、いつも五月蝿いと言っているでしょう。
お客様は丁寧にお迎えしなさいと伝えてあったはずですが?』
塔の1番下の扉が開かれ、男が困った顔でヴァルジネを見つめた。
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