続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリースへ〜

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『急いで!急いで!』

 慌てて馬車に飛び乗った一同をドラゴンのヴァルジネが追い立てる。

 その運命は馬車を牽引するバトルホースのアウラに一任されていた。

『お馬ちゃん。
 頑張るのよ。急いでね。
 先生って怒ったら、ずっごい怖いの!』

 《怒られるのは君だけでしょう?》とばかりに呆れるソルの視線に気づくとヴァルジネは目を逸らした。
 気まずそうに馬車の中に戻って来るヴァルジネにルチアは溜息を吐いた。

『慌てん坊さんのドラゴンね。
 “カプリース”には、どう向かうのですか?』

 アウラに鼻先をチョンとされるとヴァルジネは思い出したようにピョンと飛んだ。

『貴方達は“カプリース”の行き方を知らないのね?
 そうか。
 だから、私を迎えに寄越したんだわ。』

「・・・分かっていなかったのか。」

 唖然とするヴァルトと共にイオリは苦笑した。

「旅をしてきた今まで“カプリース”の行き方を知ってる人はいなかったんですよ。
 火龍のラーヴァがヴァルジネさんの先生に“迎え”を頼んでくれたようです。」

『そっか。そういう事だったのね。
 先生ったら《“愛し子”を迎えに行って来い。》しか言わないんだもの。
 全く、分りゃしないわよ。』

 不貞腐れるヴァルジネに対し「ちゃんと全部説明してるじゃない。」と呟くナギの口をマルクルが優しく塞いだのは内緒の話にしておこう。

「ヴァルジネさんが頼りです。
 よろしくお願いします。」

 ニッコリとするイオリにヴァルジネのやる気が漲ってきたようだ。

『まっかせなさい!!
 お馬ちゃん、真っ直ぐよ!』

 ーーー海に向かって真っ直ぐよ
  ーーー海に向かって真っ直ぐよ
   ーーー海に向かって真っ直ぐよ

 ヴァルジネの言葉がこだまする。

「えっ?」

 イオリが間抜けな声を出すと、ヴァルジネが満面の笑みで頷いた。

『海に向かって前進!』

 気合いの入っているアウラはイオリ達の戸惑いに気づかない。
 御者席に座るヒューゴが慌てるのも構わずに目の前の海に直進して行った。

「ちょっと・・・マジで?」
「海に直進ってさ・・・。」
「海に落ちるの?」
「ほらね!
 海の中にお城があるんだよ!!」

 戸惑う双子とニナに比べ、ナギが興奮して顔を外に出した。

「おいおいおい。」
「あぁ・・・。
 イオリと旅するとは、こーゆ事なんですね。」
「あっ!
 ナギ、危ないから中に戻りなさい。」

 馬車の縁にしがみつくヴァルト、天を仰ぐトゥーレ、慌ててナギを抱きかかえるマルクルと大人組もそれぞれの反応を見せた。

『イオリ。
 普通の旅ってないの?』

 呆れるゼンにイオリは笑うしかなかった。

「文句はリュオン様に言ってよ。」

 相棒を抱きしめるとイオリは小高い崖から飛び出す馬車の外を見つめた。

『行くわよ~!!』

 勢いよく崖から飛んだアウラに馬車の中が騒がしく叫んだ。

「「「「ギャァァァ!!」」」」
「「「「うぉぉぉ!!」」」」

 誰が何を言っているか分からない中、落下していく馬車がガシャっと音を立てて、軽い衝撃と共に落ち着きを取り戻した。

「あれ?」

 馬車の下を覗き込めば、大きなコーラルピンクの体が見える。

「ヴァルジネさん?」

 本来の姿に戻ったヴァルジネが自身の背に馬車を乗せ、真っ直ぐに海の上を飛んでいた。

「・・・海を飛んでる。」

 イオリの視線の先に光り輝く魔法陣が現れたのは、その直ぐ後の事だった。
 
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