続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリースへ〜

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『美味しい!!
 こんな美味しい食べ物初めてよ!』

 小さな頬に肉を詰め込み、嬉しそうな声を上げるドラゴンにイオリは微笑んだ。
 
「お口にあって良かったです。」

『もう最高よ!最高!』

 暫くの間、歓喜の声とバクバクと音を立てシチューを夢中に食べていた思えば『ケプッ』と小さな息を吐いた。
 
『あぁ~。お腹いっぱいになったら、眠くなっちゃった。』 

 ドラゴンはパンパンになったお腹を空に向けて、仰向けで眠り始めてしまった。
 
「えっ・・・寝た?」

「眠りましたね。」

「この状況で?」

『やはり、ドラゴン。』

 ヴァルトと従者の2人、そして従魔のルチアは呆れたように溜息を吐いた。

「何なんだコイツは。」

 『スピー』と寝息を立てるドラゴンのお腹を恐る恐る突っつくとヴァルトは困ったように顔を顰めた。

『感情の揺れが幼い。
 この子はドラゴンとしたら幼体ですよ。
 1人立ちして数年と言うところでしょう。』

 ルチアが額の魔石を光らせて鼻を近づけた。

『やはり、邪悪な心も敵意も皆無です。
 私達に近づいたのも、興味本位か本当にイオリの料理に釣られて来たのでしょうね。』

 見上げてきたルチアを目を合わすとイオリは頷いた。

「危害を加える気がないのなら、様子を見ましょうか。
 我々も眠りましょう。
 このドラゴンは・・・どうしましょうか?」

 テントに連れて行くべきか悩むイオリにルチアが首を横に振った。

『放っておきましょう。
 小さくなろうとドラゴンです。
 ここで転がっていても危険は少ないはずですよ。
 むしろ、寝返りついでに大きくなられたらテントが崩壊します。』

「・・・それは困ります。
 それじゃ、こちらで眠ってもらいましょうか。」

 申し訳ない程度の布を掛けてから、全く起きる気配のないドラゴンから離れるとイオリ達は片付けを済ませテントに潜り込んだ。

「何だか面白いドラゴンだったね。」

「ニナ、ドラゴンさん初めて見た!」

「明日も会えるかな?」

「本当に大きくなってたりして・・・。」

 顔を見合わせた子供達は明日を楽しみにニヤニヤとしながらベットに横になった。

「さぁ、明日も早いから眠りな。」

 イオリが頭を撫でてやると、それが合図のように子供達は順に寝息を立て始めていった。

「眠ったか?」

 ダウンフロアに行くとヒューゴを交えた大人組がまったりとハーブティーを飲んでいた。

「はい。
 ドラゴンの出現に興奮気味でしたが、元々みんな寝付きは良い方なんです。
 今頃、夢の中でドラゴンと遊んでいるかもしれませんね。」

 クスクスと笑い声が連なる中、ヒューゴがイオリに問いかけた。

「まさかと思うが、アレか?
 アレがラーヴァが言っていた“迎え”ってやつなのか?」

『アレとは何です?』

「迎えだと?」

 すかさずルチアとヴァルトが聞き返してきた。

「“グランヌス”で別れた火龍のラーヴァが“迎え”を頼んだと言っていたんです。」

「それは“カプリース”への“迎え”と言う事ですか?」

 トゥーレは驚いたように目を丸くした。

「恐らく?」

「何で、そこで疑問系になるんだ。」

 呆れるマルクルにイオリとヒューゴは困ったように顔を見合わせた。

「だって、言い逃げするみたいに帰っちゃったんですもん。」

 頬を膨らますイオリにヴァルトは大きな溜息を吐いて頭を掻いた。

「これだから神獣だか守護者だかは・・・。
 “神の愛し子”は変なのばかりに好かれるな。」

「『『おい。』』」

 当の神の愛し子イオリ神獣ゼン・アウラに聞き捨てならないと睨まれるヴァルトだった。
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