続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリースへ〜

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「あぁ・・・美味い。
 やっぱり、イオリの料理は格別だな。」

「お城の料理長が悲しみますよ。」

「いや、このスペアリブを使ったシチューを食べれば、料理長が再び地面に跪き教えを乞い始めるぞ。」

「はは。」

 乾いた声で笑うイオリにトゥーレとマルクルもヴァルトに同調するする様に頷いた。

「間違いなく、このシチューは絶品です。」

「あぁ、これで腹が満たされるなんて幸せ過ぎる。」

「・・・大袈裟ですよ。」

 流石にのイオリも困った様に笑った。
 イオリとしたら、魔獣の解体時に出た端材で作り上げているのだ。
 それを王侯貴族が唸る料理と持ち上げられても居心地が悪い。

 そんなイオリを置き去りに、トゥーレが思い出した様に自身のイベントリ機能のついた袋を漁り出した。

「私達が旅立つ時に皆さんに渡され物があるんですよ。
 大勢の前で渡すと角が立つと思って、この時を待っていました。」

 そう言うと、トゥーレは次々と土産物を取り出していった。

「カサドからは成長している筈の子供達の新しい防具を渡されました。
 自分達で多少の調整ができる様に工夫されているそうです。
 “日暮れの暖炉”の夫婦からは手紙がありますよ。」

 子供達は新しい戦闘服に大喜びし、早く手紙を読んでと催促してきた。

「ちょっと待って、アハ。
 ベルちゃんが文字を覚える為に図書館に通い始めたって。
 将来は宿に来る子供達にも御伽話を聞かせたいんだって。
 図書館に通う最年少だってさ。」

 イオリが手紙を読んでやると、子供達は楽しそうに微笑んだ。

「ガーリックチキンを目当てに宿に来るお客さんも多いって。
 繁盛してるんだね。
 良かった。」

 イオリが手紙を畳むと拍手が起こった。
 “日暮れの暖炉”は子供達にとっては特別な場所だ。
 ライオン獣人の夫婦が元気にしていると知って安心したようだった。

 思った以上に反応が良い事に満足したトゥーレは引き続き、王妃やポーレット公爵夫人から持たされた土産を子供達に手渡すと、至る所で歓喜の声が上がった。
 それは服だったり、ポーションだったり、子供達を案じた物ばかりだった。
 特に、新たに出版された絵本を貰ったナギは表紙を撫でると嬉しそうに抱きしめた。

「ありがとう!!」

「ふふふ。
 それは、クラーク伯爵令嬢から託された物です。
 あれから、各地より続々と逸話が集まりココ嬢が編集に追われているそうです。
 グラトニー商会の会頭の催促にバートも焦っていましたよ。
 御伽噺は王都でも人気がありますから。
 最近は若い令嬢なども絵本の収集に勤しんでいるとか。
 その分、市民向けの図書館の財源が増えるわけですから喜ばしい限りです。」

 図書館も順調な様で嬉しい反面、何となくバートの泣き顔を思い出し、言い出しっぺのイオリとしては申し訳ない気持ちにもなった。

「こんな沢山ありがとうございました。
 王妃様とオルガ夫人にはお礼を伝えます。」

「あぁ、お前からの通信があれば喜ぶ。
 母上に言えばカサドと“日暮れの暖炉”の夫婦には話が伝わるはずだ。」

 子供達が嬉しそうに新しい戦闘服を見つめているのをイオリとヒューゴは微笑んで見ていた。

『良い匂いね。』

 その声は突然降ってくるようだった。
 まるで直接脳に話しかけてくる様な声にイオリやヒューゴだけじゃなく、ヴァルト達も驚き固まっている。

 声の持ち主に1番最初に気づいたのは大人しく水を楽しんでいたカーバンクルのルチアだった。

『ドラゴン・・・。』

 雲1つない満天の星空の下で1匹のドラゴンがイオリ達を見下ろしていた。

『もしもーし。
 ねぇ、聞こえてる?
 良い匂いね!』

 再び声を上げたドラゴンの声は空気を切り裂くような大声だった。

 

 
 
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