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旅路 〜カプリースへ〜

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『戦士達よ。
 ルミエール様の神託が下った。』 

 薄汚れたローブを纏った老エルフは、湿った暗い洞窟い集まった異形のエルフ達を見渡した。

 誰も彼もが老エルフから血走った目を逸らす事はない。

『大きな計画が頓挫した今、我らが成し遂げるはルミエール様の剣を見つける事に他ならん。
 あれこそが、ルミエール様の復活の鍵なのだ。』

 起死回生の一手は、それ以外にないとばかりに吠える老エルフに戦士達は互いに顔を見合わせた。

『その剣は何処にある?
 我らは世界中を探し回ったぞ。』

 1人の戦士が声を上げれば、他の戦士も頷いた。
 それを見つめた老エルフは神妙な顔だった。

『戦士達が怠惰をしたとは思っておらん。
 ルミエール様も、それは理解している。
 ならば、何故に剣は見つからないのか。
 ルミエール様は答えを出された。
 あの忌々しいが我らの手に届かぬように企ておったのだ。』

『邪神が隠しているのか!?』

 老エルフの言葉を聞いた戦士達は血走った目に殺気を込めて唸り声を上げた。

『先の戦いで、“邪神を崇める穢らわしい血を持つ者”が現れた。
 奴はルミエール様の復活を阻止しようと我らの邪魔立てをしてくるだろう。』

『卑劣な!』
『我らに刃向かう下等種族が!』
『血祭りにあげろ!!』

 洞窟が熱気と湿気で咽せ返るような状態でも彼らの呪詛の言葉は止まない。

『あの者がルミエール様の剣を探しておる。
 我らに見つけられないのなら、奴に探させれば良い。
 そして、我らが奪い取りルミエール様に捧げるのだ。』

 老エルフの醜い微笑みに同調する様戦士達は歯をガチガチと鳴らし、地面をドンドンと踏み鳴らした。

『もう少しだ。 
 もう少しで、再びの繁栄が我らの手に・・・。』

 老エルフの背後で大きな影が楽しそうにユラユラと動いていた。

______

 その時、小さな馬車は海沿いをゆっくりと進んでいた。

「えっ?
 “カプリース”に行くのに一回死ぬの?」

 目を丸くするパティにイオリは笑った。

「実際に死ぬわけじゃないと思うよ。
 死にかけた人だけが“カプリース”に行けた
 って話だよ。」

 イオリに追随するようにヴァルトがパティの頭を撫でた。

「“天空の王”だって、何もイオリを殺そうとしているわけではないだろう。
 逸話には別の意味が含まれている可能性があると、お前達が1番分かっているじゃないか。」

 イオリのお陰で御伽噺に詳しい子供達である。
 その中でも1番の知識者であるナギが思い出すようにコメカミを押さえていた。

「何か知ってる様な気がする・・・。
 何だっけ、海の話で似た様なのがあった気がする。」

 皺を寄せたナギの眉間をイオリが優しく小突いた。

「頭が痛くなるよ。
 海の話でしょ?
 俺が知ってる話で良かったら、話そうか?」

 そうして、イオリが語り出した。

 
 
 
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