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旅路 〜カプリースへ〜
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テントや柵が撤去され、すっかりと何もない広い空き地と化したキャンプ地を見渡すと、所々で魔法使い達が木々や草を復活させていた。
自然の理をコロっと覆す様子を見て、こんな時ばかりは「異世界だなぁ。」とイオリは呟く。
「何言ってんだ?
お前の力の方が現実離れしてるじゃないか。」
呆れた様子のヴァルトにイオリも苦笑するしかない。
「アウラちゃん、重くない?」
心配そうなニナの声がした。
これより先、家族だけでなくヴァルト、トゥーレ、マルクルといった成人男性が3人も増えるのだ。
旅の運命は、彼等を運ぶアウラにかかっていた。
「ヒヒンっ!!」
“任せて!”とばかりに嘶いたアウラはニナの頭に優しく頬擦りをした。
「アウラはバトルホースだからな。
力持ちなんだよ。
本来は、もっと体を大きく出来るはずだけど、馬車に合わせてくれているんだ。」
ヒューゴが優しく抱き上げるとニナは安心したように頷いた。
「悪いな。
目立つのも良くないと思って馬を連れていくのをやめたんだ。
苦労をかける。」
マルクルが首を摩るとアウラは不満そうにドンッとマルクルを押した。
「おっ?
何だ?」
驚くマルクルの隣でパティがクスクス笑った。
「違うよ。マルクル。
“苦労をかける”んじゃなくて・・・。
“アウラ、頼むね” だよ。」
パティが顔にキスをするとアウラは満足したように顔を上下に振るのだった。
「そうか、頼りにしてるぞ。」
労わるのではなく労う。
感謝され嬉しいのは人族だけの特権ではない。
マルクルは感心した様にアウラとパティを撫でた。
「そろそろ行くのか?」
馬車を見つめていたイオリとヴァルトにニコライが声をかけてきた。
ニコライの後には従者のノアとフラン、そしてイグナート・カレリン公爵が揃っていた。
「お前達を見送ったら、我らもデザリアに向かう。」
先を譲ると笑ったニコライは美しいポーレット公爵家の甲冑を身に纏い、冒険者姿の弟の肩を叩いた。
「行ってきます。兄上。」
「あぁ、無事に帰れ。
母上が泣くのはゴメンだ。」
兄弟の別れをイオリは静かに見守った。
「お前もだぞ。イオリ。」
突如ニコライに抱きしめられたイオリは驚きながらも恥ずかしそうに頷いた。
「はい。
また、お会いしましょう。」
足下ではニコライの従魔であるカーバンクルのデニが番であるヴァルトの従魔・ルチア、そして息子のクロムスと別れの挨拶をしていた。
互いに頬を擦れ合っては何かを語るように鼻をピクピクと動かしていた。
そこにゼンが加わるとデニは安心したように鼻を擦り付けた。
『ルチアは聖属性。
クロムスはシールドの力を持っている。
きっと役に立つはずだ。
愛しい子。』
夫として父として、これから危険が増える旅に家族を送り出すデニも妻や子と同じ様に自分にも勤めがある。
『ニコライの事は必ず私が守ろう。
愛しい子。イオリ。
どうか、無事の帰還を。』
「はい。デニさん。
有難うございます。」
家族を頼むと一言も言わないカーバンクルの父に目線を合わせ礼を言うイオリをデニは愛おしそうに目を潤ませるのだった。
自然の理をコロっと覆す様子を見て、こんな時ばかりは「異世界だなぁ。」とイオリは呟く。
「何言ってんだ?
お前の力の方が現実離れしてるじゃないか。」
呆れた様子のヴァルトにイオリも苦笑するしかない。
「アウラちゃん、重くない?」
心配そうなニナの声がした。
これより先、家族だけでなくヴァルト、トゥーレ、マルクルといった成人男性が3人も増えるのだ。
旅の運命は、彼等を運ぶアウラにかかっていた。
「ヒヒンっ!!」
“任せて!”とばかりに嘶いたアウラはニナの頭に優しく頬擦りをした。
「アウラはバトルホースだからな。
力持ちなんだよ。
本来は、もっと体を大きく出来るはずだけど、馬車に合わせてくれているんだ。」
ヒューゴが優しく抱き上げるとニナは安心したように頷いた。
「悪いな。
目立つのも良くないと思って馬を連れていくのをやめたんだ。
苦労をかける。」
マルクルが首を摩るとアウラは不満そうにドンッとマルクルを押した。
「おっ?
何だ?」
驚くマルクルの隣でパティがクスクス笑った。
「違うよ。マルクル。
“苦労をかける”んじゃなくて・・・。
“アウラ、頼むね” だよ。」
パティが顔にキスをするとアウラは満足したように顔を上下に振るのだった。
「そうか、頼りにしてるぞ。」
労わるのではなく労う。
感謝され嬉しいのは人族だけの特権ではない。
マルクルは感心した様にアウラとパティを撫でた。
「そろそろ行くのか?」
馬車を見つめていたイオリとヴァルトにニコライが声をかけてきた。
ニコライの後には従者のノアとフラン、そしてイグナート・カレリン公爵が揃っていた。
「お前達を見送ったら、我らもデザリアに向かう。」
先を譲ると笑ったニコライは美しいポーレット公爵家の甲冑を身に纏い、冒険者姿の弟の肩を叩いた。
「行ってきます。兄上。」
「あぁ、無事に帰れ。
母上が泣くのはゴメンだ。」
兄弟の別れをイオリは静かに見守った。
「お前もだぞ。イオリ。」
突如ニコライに抱きしめられたイオリは驚きながらも恥ずかしそうに頷いた。
「はい。
また、お会いしましょう。」
足下ではニコライの従魔であるカーバンクルのデニが番であるヴァルトの従魔・ルチア、そして息子のクロムスと別れの挨拶をしていた。
互いに頬を擦れ合っては何かを語るように鼻をピクピクと動かしていた。
そこにゼンが加わるとデニは安心したように鼻を擦り付けた。
『ルチアは聖属性。
クロムスはシールドの力を持っている。
きっと役に立つはずだ。
愛しい子。』
夫として父として、これから危険が増える旅に家族を送り出すデニも妻や子と同じ様に自分にも勤めがある。
『ニコライの事は必ず私が守ろう。
愛しい子。イオリ。
どうか、無事の帰還を。』
「はい。デニさん。
有難うございます。」
家族を頼むと一言も言わないカーバンクルの父に目線を合わせ礼を言うイオリをデニは愛おしそうに目を潤ませるのだった。
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