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旅路 〜カプリースへ〜
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ーーー“カプリース”の名を口にするのは海で命の危機を感じた者達ばかりだったのです。
リルラの話を聞いていた者達は渋い顔をした。
「死に面していたと言うのだな?」
「はい。
溺れていたところ誰かに引っ張られたとか、打ち上げられた砂浜がキラキラして綺麗だったとか・・・。
皆、意識が朦朧としている時の話なので記憶が朧げなのです。
誰の話を繋ぎ合わせても荒唐無稽な話で、当時の私は鵜呑みにする事が出来ませんでした。
《“カプリース”に行くには1度死なねばなりません。》
と報告したらルッツ・ヴァハマンは激怒していましたよ。」
ニコライとイグナートが乾いた笑いをするとリルラは含み笑いをした。
「どうだ?イオリ。
足掛かりは掴めそうか?」
静かに聞いていたイオリをニコライが声を掛けた。
「はい。
リルラさんの話は、恐らく重要です。
“グランヌス”の宰相であるケンショー・オオスギさんが調べてくれた内容にも似たような話がありましたよ。」
「1度死ぬらしいって事か・・・。
大丈夫なのか?」
淡々と話すニコライとイオリをイグナートが心配そうに見つめていた。
「“グランヌス”で会った火龍のラーヴァが大体の位置を教えてくれました。
本当に俺が行く必要があるのなら“カプリース”への道は開けていると思います。」
楽観的なイオリの中に絶対神を信じる芯がある事を知っているニコライは決めた様に頷いた。
「そうか。
それならお前に頼みがある。」
一呼吸置くとニコライはニコリと微笑んだ。
「此処からの旅にヴァルトを連れて行ってくれ。」
「はい?」
いつのまにかテーブルに戻ってきていたヴァルトがイオリの肩を叩いた。
「この世界の行く末を見届けたいと、父上と国王に願い出たんだ。」
何かを決意したようなヴァルトにイオリは驚いた。
思わず、問いかけるような視線を送ると、ニコライは困った様に微笑んでいた。
「私も初めは反対したんだ。
イオリの邪魔になるからやめろと・・・。
しかし、弟はお前と共に行く決めているんだ。
それならば、使節団を任された私が見極めると言って父達に納得させたんだよ。」
イオリは使節団でもないヴァルトがいる意味を理解した。
「・・・危険です。」
「分かってる。
でも子供達も行くんだろう?
世界の平和が掛かってるのに、大人が尻尾を丸めて隠れているなんて変じゃないか。
この数年、ずっと考えていた。
何故、私達は出会った?
広い世界の中、あの“明けない魔の森”で私達を引き合わせたのは絶対神だ。
そう思えば私には、この世界の人間として、私にも役目があるのではないか?」
確かに、この世界に来た時にポーレットの“魔の森”に転移する事を決めたのは絶対神リュオンだった。
イオリの安全を考えての事と思っていたが、ヴァルトからみたら運命だった。
「マテオ・アースガイルの血の流れるヴァルトも何か役に立つかもしれない。
連れて行け。
ポーレット公爵家で揉まれたコイツだ。
邪魔にはならんだろう。」
どうやら、2人の中ではイオリ達の旅についてくる事は決定している様だ。
「泣き言はやめてくださいよ。」
「バカにするな。」
揶揄うイオリにヴァルトはニカッと笑った。
リルラの話を聞いていた者達は渋い顔をした。
「死に面していたと言うのだな?」
「はい。
溺れていたところ誰かに引っ張られたとか、打ち上げられた砂浜がキラキラして綺麗だったとか・・・。
皆、意識が朦朧としている時の話なので記憶が朧げなのです。
誰の話を繋ぎ合わせても荒唐無稽な話で、当時の私は鵜呑みにする事が出来ませんでした。
《“カプリース”に行くには1度死なねばなりません。》
と報告したらルッツ・ヴァハマンは激怒していましたよ。」
ニコライとイグナートが乾いた笑いをするとリルラは含み笑いをした。
「どうだ?イオリ。
足掛かりは掴めそうか?」
静かに聞いていたイオリをニコライが声を掛けた。
「はい。
リルラさんの話は、恐らく重要です。
“グランヌス”の宰相であるケンショー・オオスギさんが調べてくれた内容にも似たような話がありましたよ。」
「1度死ぬらしいって事か・・・。
大丈夫なのか?」
淡々と話すニコライとイオリをイグナートが心配そうに見つめていた。
「“グランヌス”で会った火龍のラーヴァが大体の位置を教えてくれました。
本当に俺が行く必要があるのなら“カプリース”への道は開けていると思います。」
楽観的なイオリの中に絶対神を信じる芯がある事を知っているニコライは決めた様に頷いた。
「そうか。
それならお前に頼みがある。」
一呼吸置くとニコライはニコリと微笑んだ。
「此処からの旅にヴァルトを連れて行ってくれ。」
「はい?」
いつのまにかテーブルに戻ってきていたヴァルトがイオリの肩を叩いた。
「この世界の行く末を見届けたいと、父上と国王に願い出たんだ。」
何かを決意したようなヴァルトにイオリは驚いた。
思わず、問いかけるような視線を送ると、ニコライは困った様に微笑んでいた。
「私も初めは反対したんだ。
イオリの邪魔になるからやめろと・・・。
しかし、弟はお前と共に行く決めているんだ。
それならば、使節団を任された私が見極めると言って父達に納得させたんだよ。」
イオリは使節団でもないヴァルトがいる意味を理解した。
「・・・危険です。」
「分かってる。
でも子供達も行くんだろう?
世界の平和が掛かってるのに、大人が尻尾を丸めて隠れているなんて変じゃないか。
この数年、ずっと考えていた。
何故、私達は出会った?
広い世界の中、あの“明けない魔の森”で私達を引き合わせたのは絶対神だ。
そう思えば私には、この世界の人間として、私にも役目があるのではないか?」
確かに、この世界に来た時にポーレットの“魔の森”に転移する事を決めたのは絶対神リュオンだった。
イオリの安全を考えての事と思っていたが、ヴァルトからみたら運命だった。
「マテオ・アースガイルの血の流れるヴァルトも何か役に立つかもしれない。
連れて行け。
ポーレット公爵家で揉まれたコイツだ。
邪魔にはならんだろう。」
どうやら、2人の中ではイオリ達の旅についてくる事は決定している様だ。
「泣き言はやめてくださいよ。」
「バカにするな。」
揶揄うイオリにヴァルトはニカッと笑った。
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