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旅路 〜カプリースへ〜
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「あっ!
ヴァルト、お前。
何、1人で肉の塊を食おうとしてんだよ!
さっき、豚の角煮に齧り付いていただろうが!」
「良いじゃないか!
そっちに他のがあるだろう!」
「ヴァルト、貴方。
高貴な子息としての矜持はないんですか?」
「イオリの料理の前に、そんなもの無い!」
些か、主人と従者の会話として情けないものであるが、賑やかなのは食事の問題だけではない事は誰にもわかっていた。
「良かったですね。
再会できて。」
ニコライの従者であるフランがイオリと嬉しそうに話している主人を見て微笑んだ。
「ヴァルト様は宜しいんですか?
再会が叶って1番嬉しいのはヴァルト様でしょう?」
兄と話すイオリにチラリと視線を向けると、ヴァルトは「フフ。」と笑った。
「私は後で良い。」
再び肉にガッツくヴァルトにトゥーレとマルクルは呆れ、ノアとフランは苦笑した。
「お前も、大変だったのではないか?
ヒューゴ。
よく、イオリを・・・いや、家族を支えてくれた。
父上も叔父上・・国王陛下もお前がいるから安心と常々口にされていたぞ。」
同じテーブルで静かに食事をしていたヒューゴに一手に視線が集まった。
「滅相もないお言葉ですね。
まぁ、退屈はしなかったです。」
微笑むヒューゴにヴァルト達も色々想像出来る手前、笑うしかない。
「端々に送られてきた報告を聞けば、労いの言葉では余りある気もするが、お前から見た世界はどうだった?」
自分の意見を聞かれるとは思っていなかったヒューゴは考え込んだ。
「それぞれの国々が独自のルーツに誇りを持っている事は間違い無いですね。
今回の旅では、その混じり合わなかった点と点がイオリが登場した事で線で結ばれた様に感じます。
勿論、個々に問題点もありますが、今のリーダー達は柔軟に対応出来る方達だと思っていますよ。」
グイっとコップを煽ったヒューゴに5人は驚いたように見つめた。
「お前も、成長したなぁ。」
「・・・何ですか。」
褒められて居心地悪そうに身を捩ったヒューゴにヴァルトは微笑んだ。
「いや、どこか他者の事など関心を持つ事のなかったお前が国の繋がりを気遣うなど、良い傾向だ。」
それに対し、4人の従者達も大いに頷いた。
「苦労を背負う従者仲間に乾杯を。」
「「「乾杯!」」」
ヒューゴの苦労を労う様で、己達を責めている4人の従者達をジト目で睨みつけたヴァルトはテーブルから視線を移した。
自分の分身である従魔のルチアとクロムス、兄の従魔であるデニがイオリの従魔であるゼン、アウラ、ソルがいつの間にか戯れている。
何やら会話をしている様なデニとソルの隣では、仲良しのゼンとクロムスが過激に擽りあっているのを、ルチアとアウラが止めに入っていた。
従魔同士の再会に顔を綻ばせたヴァルトが最後の肉の塊を頬張ると兄・ニコライの声が聞こえてきた。
「リルラからイオリの次の行き先を聞いたぞ。
“カプリース”とはお前も大概苦労するな。」
揶揄うような兄の台詞であったが、本題に入ると気づいたヴァルトは真剣な顔でイオリ達のテーブルに戻って行った。
ヴァルト、お前。
何、1人で肉の塊を食おうとしてんだよ!
さっき、豚の角煮に齧り付いていただろうが!」
「良いじゃないか!
そっちに他のがあるだろう!」
「ヴァルト、貴方。
高貴な子息としての矜持はないんですか?」
「イオリの料理の前に、そんなもの無い!」
些か、主人と従者の会話として情けないものであるが、賑やかなのは食事の問題だけではない事は誰にもわかっていた。
「良かったですね。
再会できて。」
ニコライの従者であるフランがイオリと嬉しそうに話している主人を見て微笑んだ。
「ヴァルト様は宜しいんですか?
再会が叶って1番嬉しいのはヴァルト様でしょう?」
兄と話すイオリにチラリと視線を向けると、ヴァルトは「フフ。」と笑った。
「私は後で良い。」
再び肉にガッツくヴァルトにトゥーレとマルクルは呆れ、ノアとフランは苦笑した。
「お前も、大変だったのではないか?
ヒューゴ。
よく、イオリを・・・いや、家族を支えてくれた。
父上も叔父上・・国王陛下もお前がいるから安心と常々口にされていたぞ。」
同じテーブルで静かに食事をしていたヒューゴに一手に視線が集まった。
「滅相もないお言葉ですね。
まぁ、退屈はしなかったです。」
微笑むヒューゴにヴァルト達も色々想像出来る手前、笑うしかない。
「端々に送られてきた報告を聞けば、労いの言葉では余りある気もするが、お前から見た世界はどうだった?」
自分の意見を聞かれるとは思っていなかったヒューゴは考え込んだ。
「それぞれの国々が独自のルーツに誇りを持っている事は間違い無いですね。
今回の旅では、その混じり合わなかった点と点がイオリが登場した事で線で結ばれた様に感じます。
勿論、個々に問題点もありますが、今のリーダー達は柔軟に対応出来る方達だと思っていますよ。」
グイっとコップを煽ったヒューゴに5人は驚いたように見つめた。
「お前も、成長したなぁ。」
「・・・何ですか。」
褒められて居心地悪そうに身を捩ったヒューゴにヴァルトは微笑んだ。
「いや、どこか他者の事など関心を持つ事のなかったお前が国の繋がりを気遣うなど、良い傾向だ。」
それに対し、4人の従者達も大いに頷いた。
「苦労を背負う従者仲間に乾杯を。」
「「「乾杯!」」」
ヒューゴの苦労を労う様で、己達を責めている4人の従者達をジト目で睨みつけたヴァルトはテーブルから視線を移した。
自分の分身である従魔のルチアとクロムス、兄の従魔であるデニがイオリの従魔であるゼン、アウラ、ソルがいつの間にか戯れている。
何やら会話をしている様なデニとソルの隣では、仲良しのゼンとクロムスが過激に擽りあっているのを、ルチアとアウラが止めに入っていた。
従魔同士の再会に顔を綻ばせたヴァルトが最後の肉の塊を頬張ると兄・ニコライの声が聞こえてきた。
「リルラからイオリの次の行き先を聞いたぞ。
“カプリース”とはお前も大概苦労するな。」
揶揄うような兄の台詞であったが、本題に入ると気づいたヴァルトは真剣な顔でイオリ達のテーブルに戻って行った。
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