続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜カプリースへ〜

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 洞窟の前に陣取っていたゴブリン達を総殺し、一息をついたイオリが振り返ると満足そうなヒューゴがいた。

「あれ、子供達は?」

 ヒューゴの後にいたはずの子供達がいない。

「ん?
 後にいたはずだが・・・あれ?
 あっ。アイツら!」

 あんなにゴブリンを嫌がっていたのに、洞窟に目掛けて突進する子供達を発見してイオリ達は驚いた。

「どんな弱いのであろうと、階級の高い魔獣は同種と比べて桁違いに強い。
 舐めてかかると痛い目にあうぞ。」

 心配そうなヒューゴが後を追いかけ走り出した。

「ゼンも子供達をフォローしてやって。」

『了解。任せてよ。』

 ヒューゴとゼンが向かって行った事でイオリは安心して微笑んだ。

「みんな、どうしたんだろう。
 やる気満々だな。」

 呑気なイオリをアウラがドンと後ろから鼻をぶつけてきた。

「うん。
 分かってる。
 俺達も行こうか。」

 アウラに急き立てられイオリが洞窟に向かって歩み出した時だった。

「行くよ~!
 火の子達集まれぇぇぇ!」

 ニナが杖を掲げて火の精霊を呼んだ。
 見る見る間に大きくなった火の玉をニナは恐れる事なく迎え入れると、何かを囁いた。
 すると大きな火の玉が鳥の形と変化し、それを見たニナは微笑むと勢いをつけて洞窟に向かって投げ込んだ。

「よいしょ!」

ゴォォォォォ!!

 音を立てて洞窟を焼き払って行く炎に双子とナギが拍手を送る。

「凄い!出来たじゃん!」
「中にいる奴も火の鳥に追いかけられちゃ、飛び出てくるんじゃないか?」
「でも、この位置は危ないかも・・・。」

 ナギの言う通りだった。
 洞窟の中に留まる事の出来ない火が外に漏れ始めたのだ。

「おいおい。
 危ねぇな。」

 追いついたヒューゴが焦った様に洞窟の入り口をシールドで防いだ。

「火の扱いには気をつけるようにって言っただろう!?」

 コツンと額を小突かれたニナは「へへへっ。」と誤魔化すように笑った。

『いつの間に火の鳥なんて出せるようになったの?』

 ナギがペロリとニナの頬を舐めるとニナは擽ったそうに、身を捩った。

「ソルちゃんみたいなのをしたの。」

 答えになっていないニナの答えを後に詳しく聞いてみれば、ニナの頭に浮かんだ形を妖精が具現化してくれるのだ教えてくれた。
 ニナにとって火はソルの美しい真紅の体を思い出すとかで、今回は火の鳥として変化したのだ。
 ちなみに風と水はゼンを連想するから狼の形に変わるらしい。
 他は、どんな変化をするのかを聞いてもニナは「うふふ。」と言うだけだった。

 ーーー話を戻して

 ヒューゴのお陰で漏れ始めていた炎を洞窟の中に押し込む事に成功した。

「・・・終わったかな?」

 中の様子を伺うように、パティがソロソロと近づき耳を澄ませる。

ドンッ!!

 「ぎゃっ!まだ何かいる!!」

 大きな音に慌てて戻ってきたパティが双剣に手をやった。
 そんなパティに苦笑するとヒューゴは、まだ姿の見えぬ敵を睨みつけた。

「ここいらのボスの登場って事だな。」

 シールドの向こうに巨大な影が見えてきた。
 所々に煙を纏い火傷が見えるは、太い棍棒でヒューゴのシールドを壊そうと叩いている。

ドンッ!!ドンッ!!

「・・・ゴブリンキングだな。
 厄介な相手が出張ってきたもんだ。」

 溜息を吐いたヒューゴにスコルがニヤリとした。

「オレ達がやる。
 任せて。」

 ゴブリンキングは通常のゴブリン500匹分の力と恐れられている。
 この集落を自分の帝国に変えていたのに邪魔をされて怒り狂うゴブリンキング相手に一歩も譲らないスコルにヒューゴは根負けした。

「危なくなったら手を出すからな。」

「やった!
 皆んな、やるぞ!!
 集まれ。」

 子供達は何だか集合するとコソコソと会議を始めるのだった。
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