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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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しおりを挟む「おいおいおい。
“カプリース”だって?」
子供達が悲鳴を上げていた同じ頃ヒューゴは頭を抱えていた。
ーーー水の国“カプリース”
ご機嫌に首をフラフラと揺らすラーヴァと対照的なヒューゴにイオリが不安そうに問いかけた。
「問題ありですか?」
「大ありだ。
世界中の高位の冒険者が、その存在を確かめようと旅立っても辿り着けた試しのない伝説の国だ。」
どういう事なのだと眉を顰めるイオリの頭をラーヴァが撫でた。
『“カプリース”っていうのはね。
古い言葉で“気まぐれ”って意味があるんだぁ。
行きたいと願っても、受け入れてくれるかは“カプリース”次第って事。』
楽しそうなラーヴァの話にイオリは嫌な予感しかしない。
『ちょっと変わり者が多いけど、悪い子達ではないから。』
「本気で“カプリース”に行くのか・・・。」
冒険者にとって“カプリース”とは幻の国だった。
行って帰ってきた者はいない。
それをラーヴァは、ちょっとしたお使いの様に言うものだからヒューゴの戸惑いは仕方がない。
それでも、イオリとの日々で幻も伝説も現実にあると知ってしまったヒューゴも腹を括るしかなかった。
『グランヌスを下って東に向かって行くと良いよ。
砂漠の国よりも、もっともっと東の方角なんだ。』
砂漠の国“デザリア”、森の国“ルーシュピケ”、そして火の国“グランヌス”と円を書くように旅してきたイオリ達である。
旅の最初の国“デザリア”が既に懐かしくも感じていた。
『“カプリース”にわさ、ドラゴンの学者がいるんだよ。
きっと助けになってくれる。
スカイヤはイオリを待ってるんだ。
“中つ国”への道は用意されているはずだよ。』
道は用意されている。
ラーヴァは、そう言うが現在ドラゴンは他種族との交流を絶っている。
簡単に会えるかは行ってみなければ分からないのだ。
「しょーがね。
行くか、“カプリース”。」
先程まで頭を抱えていたヒューゴがイオリよりも先に立ち上がった。
「グランヌスでの“エルフの里”の奴らとの戦いは今までと違った。
向こうもダークエルフの影をチラつかせてまで本腰を入れてんだ。
多分、イオリの事をハッキリと認識したはずだ。
時間をかけてる暇はねーだろ?」
何処かヤケクソの様に言い切ったヒューゴに同意するとイオリは声を上げて笑った。
イオリの笑い声にゼンが首をもたげ、ソルがご機嫌にステップを踏み、アウラが蹄を鳴らした。
「何?何?」
パティがイオリに抱きつき、何が楽しいのかと笑顔で見上げて来た。
「みんな名残惜しいけど出発だ。」
「いつ?」
スコルがポケットに手を入れてニヤリとした。
「準備が出来次第いつでも。」
「僕は準備万端だよ。」
磨き上げたライアーをナギが、嬉しそうに撫でる。
「ニナも!」
フンすかと鼻息を荒くした妹を抱き上げたヒューゴが鼻を優しく弾いて笑っている。
グランヌスの滞在も、そろそろ終盤を迎える事になりそうだった。
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