続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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「ハァ、お腹いっぱい。」

 パティがパンパンになった腹を摩ると、バサっと倒れ込んだ。

「パティ、食べ過ぎ。」
「クスクス。お腹、はち切れちゃうんじゃない?」

 呆れるスコルと楽しそうに笑うナギに見下ろされても、パティはニッと笑った。

 用意された収穫祭の料理はテーブルから溢れる程にある。

 王宮も含めて、何処もかしこも無礼講とばかりに騒がしかった。
 そんな中、後宮は実に落ち着いていた。

 国王をはじめ、王妃や側妃、王子達は久しぶりに家族の時間を楽しんでいた。

「兄様、兄様。
 あのモフモフは何ですか?」

「ユズ。
 あちらは神獣のゼン様だよ。
 私達を助けてくれたんだ。」

「凄い!
 触りたいです。」

 目をキラキラとさせる末の妹の頭を撫でるとムネタカは微笑んだ。

「ユズ。
 お客様に失礼な事をしたら駄目だ。」

 妹の発言を兄であるヨリタカが咎めるが、チラチラと向ける視線で実は彼自身もゼンに興味があるのを悟り、ムネタカは苦笑した。

「ゼンちゃんに触りたいの?
 一緒に行こう。
 優しく触れば大丈夫だよ。」

 果物を頬張っていたニナが気付きユズに手を差し出した。

「本当!?
 私、触りたいです!」

 縋る様に見上げられるとムネタカは「クックッ。」と笑い頷いた。
 
「ヨリタカ。
 妹が神獣の毛を毟らないように、お前も行っておいで。」

「!!
 はい!」

 ヨリタカは嬉しさを隠しきれずに庭に飛び出して行った。

 ムネタカはゼンに恐る恐る手を伸ばす弟妹を見つめ微笑んだ。

「元気になって良かったな。」

「はい。」

 同じく優しい瞳で妹を見送ったヒューゴにムネタカはニッコリと頷いた。
 
 救出後に目を覚ました弟妹から、透明の球体の中にいたの時の記憶がないと聞き、恐怖を思い出す必要がないと安堵した。

 それでも衰弱していた3人を母達をはじめ父も兄であるムネタカも心配した。
 殿医の診断とナギの癒しの力、そしてイオリの栄養たっぷりの料理のお陰で徐々に回復してきたのである。

 ペロリとゼンに顔を舐められて恥ずかしそうに微笑むヨリタカにムネタカの眉も下がる。

 側妃アオイを母に持つヨリタカとユズは、強く優しいムネタカが大好きだった。
 弟妹揃って、ムネタカの様に強くなり、将来は兄を支える軍に入りたいと言う。
 ヨリタカは良いとして、ユズには可愛らしい姫のままでいて欲しいと願ってしまうムネタカだった。

「兄様。足りてますか?」

 そこに、ムネタカと同腹の妹であるルリが大きな皿を持って現れた。

「・・・何だそれは?」

 問いかけるムネタカにルリは満面の笑みを浮かべた。

「イオリ様のお手製ハンバーガーという物です。
 丸いパンを半分に切って肉や野菜、ソースが入っている豪勢なお料理です。
 この油で揚げた芋も良い香りですよ。」

 ムネタカの隣に座ったルリは、フライドポテトを食べては微笑んだ。

「そうじゃない。
 お前、先ほど山盛り食べていたではないか。
 シチューに角煮、炊き込みご飯・・・あっ!
 カレーライスを食べているのも見たぞ!」

「兄様、ガーリックチキンが抜けております。
 あれは絶品ですわね!」

 ムネタカの妹であるルリ姫は細身であり、母譲りの美貌の持ち主だった。
 加えてクールな母ソウビと違い、ルリは柔らかい雰囲気が備わりグランヌスの男達の憧れの存在だった。

 ただ大食いなのである。

 大食漢の男と比べても、異次元の胃袋の持ち主だった。

「お前、起きたてなのだから・・・。」

 呆れるムネタカにもルリは、何処吹く風だった。

「兄様?
 私、何食分無駄にしたかお分かりですか?
 幸いな事に今日は収穫祭ではありませんか。
 いくら食べても良い日なのです。」

 そうしてルリはハンバーガーに齧り付いた。

「何処も大変だな。」

 幸せそうなルリと、頭を抱えるムネタカを見比べ、楽しそうに笑うヒューゴだった。

 
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