続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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 日が暮れる空の下、いつもより明るい提灯がグランヌスの町を照らす。

 王宮に建てられた見晴し台から町を見下ろした国王トウカ・ノブタカ・ショーグンが巨大な扇子を掲げた。

ドドンッ!!

 その後ろで太鼓を叩くは王子のムネタカ。
 太鼓の音が聞こえると町の至る所から歓声が上がる。

 ノブタカがもう一度、扇子を振ればムネタカが再び太鼓を叩く。

ドドンッドンッ!!

 グランヌスの空に火龍が姿を現し、なお一層住人達の感情が最高潮まで高まっていく。

「さぁ、楽しめ。」

 ニヤリとした国王ノブタカが扇子を八の字に振れば、ムネタカが太鼓を叩き続けた。

ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪

ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪

 呼応する様に町の方から音頭が聞こえてきた。

ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪

ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪

 グランヌスの一大祭りである収穫祭が始まった。

 酒を煽り、町中に溢れた料理を食べ、陽気に歌ったり踊ったりとグランヌスの住人は無礼講とばかりに大いに騒いだ。

 呑めや歌えや騒げや踊れ♪

 真っ赤なクルンクルンした長い髪を掻き上げると、人型になった火龍のラーヴァは嬉しそうに屋根から人々を見下ろしていた。

『これこそが私が愛した収穫祭だよ。
 元に戻って良かったぁ。
 ねぇ。
 ガンダルライドウォッシュボーン。
 君も喜んでくれるだろう?』

 今はいない親友に語りかけたラーヴァは人々に混じって大酒を飲んで豪快に笑うドワーフ達を見て微笑んだ。
 
 猜疑心など、何処へ行ったのか。
 火龍ラーヴァの願い通り、収穫祭のお陰で、住民達は以前の様に打ち解けていった。
 しかし貴族達は、そこまで単純ではないだろう。
 ラーヴァが切り開いた一致団結への道を、どう活かすかは王族達の力に掛かっている。

 国を1つにすると豪語した王子ムネタカのこれからを見守る事にしよう。

『あー!
 アレって、温泉卵!?
 私も食べるよ!
 ちょっと、みんな残しておいてよぉぉ。』

 火龍ラーヴァは屋根から飛び降りると、人々の中に混ざって行った。

__________

 とざい とーざい!

 月が美しい今宵から始まる実りへの祈り。
 この峻烈なる大地にて、また1年を過ごす事への感謝を捧げよ。

 我が国の刻が止まった暗闇の日々。
 毒花の香りに寄せられた虫達が次々と翻弄されていった。
 闇霧に惑わされた年月は、取り戻す事は出来ない。

 しかし、恐る時は過ぎた。

 国を取り戻す為に奔走したムネタカ王子の尽力により、大いなる光が毒花に戦いを挑んでいった。
 それに助力したのは闇をも打ち晴らす火龍と、それに追随した真っ赤なドラゴン!
 
 光り輝く雨を降らせて、人々の不安を洗い流す。

 大いなる光がグランヌスの解放に力を注ぐ姿は、嘗ての大将軍を思い出させた!

 声を上げ大地を震わせよ、グランヌスの民よ!
 我らは強き者への敬愛を忘れない。
 時世に伝えよ、国を救った恩人の存在を!
_________
 
 練り歩く瓦版屋の口上に町中から歓声が起こった。
 “収穫祭”は3日は続く。
 人々が名も知らぬ恩人がいた事を知るのに時間は十分にあった。

「これ、イオリさん嫌がるんじゃないッスか?」

 瓦版屋の男・・・ロクは顔を隠して後を振り向いた。

「名前は出してないだろう?
 それに、やっちまえばこっちのもんだ。
 ほれ、続けろ。」

 事件のあらましを瓦版に書き下ろしバラ撒いていくカンスケ爺やが機嫌良く笑っている。

「あ~あ。
 し~らね。」

 ロクは苦笑した。
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