続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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『ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪』

 「ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
  ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪」

 屋根に飾り付けをする火龍が口ずさめば、陽気なドワーフ達が祭り用の提灯に光を灯す。

『ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪』

 「ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
  ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪」

 その歌声を人々は微笑みながら見送った。

 国王トウカ・ノブタカ・ショーグンの掛け声で始まった収穫祭の準備に、今やグランヌスの住人達は大忙しだった。

「テーブルは足りる!?」
「足りなきゃ、ウチのを持ってけよ!」

「おい!酒は?
 あれがないと始まらねーだろうよ!」
「それなら、心配ないよ。
 イケダ屋の翁が大盤振る舞いしてくれるってさ。」
「なんだって?そいつは良いや!」

 それにしたって収穫祭と名の付く国の一大祭りである。
 至る所から調理の音や匂いがしてくる。
 グランヌスの兵士や衛兵達も、この日ばかりは刀を包丁に変えて住人達に混ざって忙しそうだ。

『ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪』

 「ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
  ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪」

 国に影を落としていた事件が終わった後も、事が事なだけに隣人や友人に猜疑心の芽が消えない中、火龍とドワーフの歌声がグランヌスに住む者達の心を踊らせる。

「おいおいおい。
 肉が足りなくないか?」
「狩猟組は何をしてるんだい?」
「もういっちょ行ってくるか。」

 ひもじい思いをしていた時代の名残りで“収穫祭”には、誰だろうと山ほど食べる。
 食材など、あればあるだけ良いのだ。
 今からでも、山を降りて魔獣や動物を狩ってこようと人々が立ち上がった時だった。

ドシン ドシン ドシンッ!!

 真っ白な狼が音を立ててグランヌスの門を潜って来た。

「うわぁぁ!
 見て、スコル!!
 提灯が変わってるよ。」
「本当だ。凄いや。
 町全部が食堂みたいだ。」

 真っ白な狼から双子の子供が顔を出して辺りを見渡しては大きな口を開けて笑っている。

「「「「・・・。」」」」

 双子は、静まり返り自分達を見つめるグランヌスの住人に気づくと真っ白な狼から飛び降りた。

「大きなレッドボアがいたから捕まえて来たんだけど、いる?」

 そう。
 なぜ住人達が静まり返っていたかというと真っ白な狼が自分よりも大きなレッドボアの首根っこを加えて引きずるようにやって来たからだった。
 反応をしない住人達にパティが不安そうにスコルに囁いた。

「要らないのかな?」
「えっ?そうなの?
 大丈夫だよ。
 みんなが要らなくてもイオリが使うよ。」

 双子のコソコソ話に1人の男が近寄った。

「坊主。嬢ちゃん。
 このレッドボアもらって良いのかい?」

 2人は顔を見合わせるとニッコリと頷いた。

「うん。
 ノブタカがさ。
 収穫祭は見てるより参加した方が楽しいって言うからさ。
 ゼンちゃんと狩って来たんだよ。」
「みんなで食べよう!」

 ゼンが鼻でレッドボアを押し出すと住人の歓声が上がった。

「おい、こんなデカいレッドボア見た事あるか?」
「特大級だね。ありがとうね。」
「ノブタカって国王の事じゃないよな?」
「解体だ!解体を急げ!」
「こいつは今日の主役だな。」

 褒められた双子とゼンは住人に、もみくちゃにされながらも楽しそうに笑うのだった。
 

 
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