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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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「・・・何なの、この子達。」
手を出す間もなく唖然としていたアオイ妃の元にスタッとロクが降り立った。
「幼くても立派な冒険者なんだそうですよ。
双子はAランクッス。」
「Aランク!?
そんな子、グランヌスにもいないわよ。」
アオイ妃は今尚、敵をボコボコにしている双子に驚いた視線を向けた。
「アオイ様。
後で怒られてくださいね。」
ボロボロになった庭園を見つめ呆れた顔をしたロクにアオイ妃が視線を合わす事はなかった。
「そ・・そう言えば、向こうはどう?」
話を逸らすアオイ妃にロクは苦笑した。
「敵は“エルフの里の戦士”です。
恐らく、子供にやられてるのも奴らの仲間ですよ。」
「“エルフの里の戦士”!?
姉様は大丈夫なの?
えっ?あの子達“エルフの里”の奴を倒しちゃったって事?
どうなってんのよ!!
ロクっ!詳しく、説明しなさいぃぃ。」
頭が追いつかずにパニック状態のアオイ妃にブンブンと揺さぶられ、無表情になるロクだった。
がんばれ、ロク
_____________
「他は終わった様だな。
残りはお前だけだ。」
操っていたツユクサが倒れているのを姫巫女は呆然と見つめていた。
国王トウカ・ノブタカ・ショーグンに刀を突きつけられてもビクともしない姫巫女に、戦いを終えた者達の視線が集まっている。
イオリは姫巫女・・・いや、セインという娘を憐れに思っていた。
“エルフの里”に産まれてさえいなければ、癒しの力を持つ彼女は崇拝された事だろう。
“魅了”の力を悪用さえしなければ、人々に愛された事だろう。
全て、たらればの話だ。
彼女は明らかに外の世界の事を理解していなかった。
現実、国を1つ乗っ取り、世界を混沌の時代に誘う旗頭になってしまったのだ。
過ちから止まるきっかけに目を背け、戦いを続けた彼女に対し、分からなかったでは澄ます事は出来ない。
守ってくれていた筆頭侍女ツユクサはもういない。
“戦士”は皆、膝を付いた。
魅了が解けた今、自分を慕っていた者達は離れていく。
作られた魅力は、目の前のカリスマ・・・目覚めた国王を前に何の力もなかった。
どうしたら良いのか、姫巫女は分からなかった。
ーーーもう、どうでも良い。
考えるのをやめよう。
そうだ。
あの、辛かった幼少期だって考えるのをやめて生きのびたのだ。
思考をとめてしまえば、楽になれる。
ユラユラと揺れるセインに誰もが警戒の目を向けていた。
『良いぞ。
絶望は我の糧になる。』
セインに語りかける声が聞こえた。
『もう少しで・・・もう少しで、其方の使命が終わる。
大いなる絶望を手にした今、残すは我が武器のみ。
其方は我の器。
其方は我になり、我は其方になり復活を果たすのだ。
其方を愛さぬ世界など滅ぼしてしまえばいい。
そして其方は新たな世界の主になるのだ。』
それは考える事をやめたセインの脳に、スルッと入り込んだ。
ーーー新たな世界。
なんと聞き心地の良い言葉だろう。
ーーー私を愛さぬ世界などいらない。
再び未熟な心が闇に染まっていく。
それはもう、誰にも止められない。
手を出す間もなく唖然としていたアオイ妃の元にスタッとロクが降り立った。
「幼くても立派な冒険者なんだそうですよ。
双子はAランクッス。」
「Aランク!?
そんな子、グランヌスにもいないわよ。」
アオイ妃は今尚、敵をボコボコにしている双子に驚いた視線を向けた。
「アオイ様。
後で怒られてくださいね。」
ボロボロになった庭園を見つめ呆れた顔をしたロクにアオイ妃が視線を合わす事はなかった。
「そ・・そう言えば、向こうはどう?」
話を逸らすアオイ妃にロクは苦笑した。
「敵は“エルフの里の戦士”です。
恐らく、子供にやられてるのも奴らの仲間ですよ。」
「“エルフの里の戦士”!?
姉様は大丈夫なの?
えっ?あの子達“エルフの里”の奴を倒しちゃったって事?
どうなってんのよ!!
ロクっ!詳しく、説明しなさいぃぃ。」
頭が追いつかずにパニック状態のアオイ妃にブンブンと揺さぶられ、無表情になるロクだった。
がんばれ、ロク
_____________
「他は終わった様だな。
残りはお前だけだ。」
操っていたツユクサが倒れているのを姫巫女は呆然と見つめていた。
国王トウカ・ノブタカ・ショーグンに刀を突きつけられてもビクともしない姫巫女に、戦いを終えた者達の視線が集まっている。
イオリは姫巫女・・・いや、セインという娘を憐れに思っていた。
“エルフの里”に産まれてさえいなければ、癒しの力を持つ彼女は崇拝された事だろう。
“魅了”の力を悪用さえしなければ、人々に愛された事だろう。
全て、たらればの話だ。
彼女は明らかに外の世界の事を理解していなかった。
現実、国を1つ乗っ取り、世界を混沌の時代に誘う旗頭になってしまったのだ。
過ちから止まるきっかけに目を背け、戦いを続けた彼女に対し、分からなかったでは澄ます事は出来ない。
守ってくれていた筆頭侍女ツユクサはもういない。
“戦士”は皆、膝を付いた。
魅了が解けた今、自分を慕っていた者達は離れていく。
作られた魅力は、目の前のカリスマ・・・目覚めた国王を前に何の力もなかった。
どうしたら良いのか、姫巫女は分からなかった。
ーーーもう、どうでも良い。
考えるのをやめよう。
そうだ。
あの、辛かった幼少期だって考えるのをやめて生きのびたのだ。
思考をとめてしまえば、楽になれる。
ユラユラと揺れるセインに誰もが警戒の目を向けていた。
『良いぞ。
絶望は我の糧になる。』
セインに語りかける声が聞こえた。
『もう少しで・・・もう少しで、其方の使命が終わる。
大いなる絶望を手にした今、残すは我が武器のみ。
其方は我の器。
其方は我になり、我は其方になり復活を果たすのだ。
其方を愛さぬ世界など滅ぼしてしまえばいい。
そして其方は新たな世界の主になるのだ。』
それは考える事をやめたセインの脳に、スルッと入り込んだ。
ーーー新たな世界。
なんと聞き心地の良い言葉だろう。
ーーー私を愛さぬ世界などいらない。
再び未熟な心が闇に染まっていく。
それはもう、誰にも止められない。
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