続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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「あ~あ。こりゃ酷えや・・・。ハハ」

 主人の命により離宮から後宮に急いで駆けつけたロクは変わり果てた庭園に枯れた笑い声を上げた。
 花々こそないが、美しく整えられていた庭が今では、所々に大きな穴が開き硝煙が上がっている。


 側妃アオイが用いた細い筒はグランヌスの隠密愛用の爆薬で、普段なら工作作業に使われる事が多い。
 件の側妃は忍び隠れる隠密の中で珍しく感情の赴くままに使用しては度々、仲間達を呆れさせてきた。

「姿の見えない相手を引きずり出すには丁度良いじゃない。」

 そんな言い訳をしたアオイ妃であったが、カンスケ爺やからコッテリと説教を喰らうのは後々の話である。


「いた?」

 キョロキョロと辺りを見渡すニナにナギが首を横に振った。

「・・・分かんない。」

 辺りは焦げた匂いが充満し、何が何だか分からなくなっていた。
 責める様な子供達の視線から顔を背けたアオイ妃は口笛を吹く様にしながらも目を凝らす。

「ニナ。
 風で匂いを消しちゃえ。」

 もう、大人に任せられないとばかりにスコルが声を上げた。

「はーい。」

 ニナの可愛い声が聞こえたかと思えば、周辺を強めの風が吹く。
 匂いに敏感な獣人の双子が安心したように息を吐いた。

「集合っ!!」

 スコルの招集に額を突き合わせてコソコソと相談する子供達を、仲間に入れてもらえなかったアオイ妃がソワソワと見守った。

「いくぞ!」

「「「了解!!」」」

「えっ?
 何?
 何するの?」

 スコルの掛け声と、それに応えた子供達にアオイ妃が戸惑った。

 子供達の動きに迷いはなかった。

「ニナっ!」

「はーい!
 光の子、集まれ~!」

 背伸びをして掲げたニナの杖に、瞬く間に光が集まってきた。
 眩い光で照らされた庭にパティの声が響いた。

「いたっ!
 みーっけ!」

 双剣を抜いたパティが走り込んで行った。

《姿が見えなくても物体が消えた訳じゃないなら、強い光があれば地面に影が浮き出るんじゃない?》

 ナギの予想が見事に的中した。

「1番もらい!」

『グギッ。』

 唐突に襲われた敵は致命傷を負わずに済んだとはいえ子供とは思えない攻撃に思わず声を漏らした。

「そこか!逃がすかよ!」

 影を追ったスコル追随した一振りが敵に深傷をお見舞いする。

『ギャーー!!
 フンッ。」

 痛みを堪えた敵がスコルの目の前で炎を操る。

「コイツ、魔法使うぞ!!」

 スコルが警戒して距離を置くと、勝負を決めようとしていたパティから悔しそうな唸り声が聞こえた。

 さて、どうやって攻撃しようか。
 
 考える子供達に助言をしようとアオイ妃が一歩踏み出した時だった。

バシャンッ!!

「キャキャキャ。」

 悪戯っ子なニナの笑い声の先で、姿の見えなかった敵が派手に泥を全身にかかっていた。

「ナイス!
 泥なら、火も消えるし姿も浮きでる!
 ハハハ。
 ニナ、最高。」

 楽しそうなスコルの褒め言葉にニナが親指を立てて喜んでいる。

 ♪~♬~♪

 戦いに場違いな優しい音色が聞こえた。

『・・・!
 ギャギャギャ!』

 泥で汚されたと知り驚いていた敵の全身を蔦が這い上がり、キツく拘束するとバランスを崩してバタリと倒れた。

『餓鬼共、許サン!』

 必死に争う敵を双子が見下ろした。 

「子供なら、何とかなると思った?
 残念でした。」

 スコルがニッコリと微笑む。

『ヤメロ・・・ケモノ風情ガ!」

 双子が悪い顔で剣を振り上げると焦った様な声が聞こえた。

「「バイバイ。」」

 声を揃えた双子の容赦ない攻撃に敵の叫び声が・・・聞こえなかった。

「あれ?
 ニナ、音消してる?」

「うん。
 だって、あの人煩くてラーヴァちゃんとソルちゃんの歌声聞こえないんだもん。」

「フフフ。確かにね。」

 美しい二重奏を続ける火龍とドラゴンを見上げ、2人は微笑んだ。

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