続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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「おおー!
 ムネタカ様が“エルフの里の戦士”の1人を討ち取られたぞ!!」

 グランヌスの未来を担う次期当主の見事な戦いぶりにグランヌスの衛兵達が歓喜する。

 現在、グランヌスの精鋭が集まる軍の多くは姫巫女たち“エルフの里”の策略により“ルーシュピケ”への進軍の為、“パライソの森”の手前で駐留していた。
 王妃ソウビの機転により戦いこそ始まっていないが、現在の国難において国に兵がいないのは痛手である。
 その為に王宮や城下町の治安を守る衛兵達への重圧は並々ならぬものがあった。

 既に“エルフの里の戦士”との戦いは始まっている。
 国王やムネタカ、そして恐れる事もなく挑み、吹き飛ばされている仲間達。
 強敵でありながらも、国を貶めた愚劣者を前に彼らの戦意は薄れていなかった。

『ギャッ!』

 つんざく様な声を出しながら、2人の“エルフの里の戦士”が純白のフェンリルと戦っていた。

「あれは!」

 その外側からは、もう1人の“エルフの戦士”が純白のフェンリルを弓で狙っている。

「おい、皆んなっ!」

 グランヌスの衛兵達は3人を相手にする純白のフェンリル・・・ゼンに助力する為に参戦した。

「この野郎っ!客人の従魔を狙うとは。」
「皆んな、囲め囲め!」

 衛兵に囲まれた“エルフの里の戦士”はお馴染みのガチガチと歯を鳴らす威嚇をする。
 彼らにとって、この場で最も巨体なゼンを標的にするには道理だったかもしれない。
 獲物を狩るように狙っていた“エルフの里の戦士”にとってグランヌスの衛兵は邪魔な羽虫と変わらなかった。
 剣や槍を振り回し、衛兵達を蹴散らしていく“エルフの里の戦士”。
 そんな彼らをゼンの前脚の攻撃が襲う。

『ガァッ!』

 剣の“エルフの里の戦士”を踏みつけたゼンは周囲を見渡した。

 倒れながらも、戦い続けるグランヌスの衛兵。
 そして、自分を獲物と見定めている“エルフの里の戦士”の殺気。

 ゼンは神獣らしからぬ溜息を吐いた。

 ゼンにとって、1番大事なのはイオリであり、その次に家族やアースガイルの知人達が続く。
 姫巫女への怒りも、イオリへの侮辱に対してであり、親のようなリュオンに対する想いによるものだった。

 イオリと共にいながら、実は冷めた目で人間を見ていたゼンにとって、“エルフの里の戦士”は大いに気に入らないが、唐突に参戦してきたグランヌスの衛兵達も煩わしいかったのだ。

『別に助けてもらわなくても平気だったし。
 イオリじゃないんだから、ボクと一緒に戦うなんて無理だし。』
 
 ブツブツと文句を言うゼンであったが、それでも彼らが善意の上で自分を助けてくれようとしていた事を知っていた。
 
 だから、溜め息を吐いたのだ。

 ゼンは“エルフの里の戦士”を踏みつけていた前脚に体重を乗せると、『グェェ。』っと気を失った敵を放り投げた。
 それをグランヌスの衛兵が間も置かずに縛り上げた。
 
 弓を持つ敵と戦う衛兵を気遣いながら竜巻を起こし、“エルフの里の戦士”を吹き上げ鋭利な爪で切り裂いた。
 そして最後に槍の敵が襲って来るのを後脚で蹴り飛ばした。

 ゼンにより重症を負った“エルフの里の戦士”は最後にはグランヌスの衛兵の手でよってトドメ刺された。

 自分達の手によって“エルフの里の戦士”を仕留めた衛兵達が歓喜を上げるのを呆れたように見下ろしていたゼンも口元を緩めた。

『まぁいっか。』

 こうして、離宮に現れた多くの“エルフの里の戦士”が戦いに敗れていく中で、最初に拘束された“エルフの里の戦士”が何故だか笑っていた。

『ギャッギャッギャ。
 消エタ同胞ガ後宮ニ散ラス血ノ花ヲ楽シムト良イ。
 ギャギャッギャ。』

 そう喚き、ゼンによって頭を押さえつけられ再び気を失った“エルフの里の戦士”を前に衛兵達は青褪めたのだった。
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