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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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ーーーそうだ。怒りがお前を強くする。
この世は力の弱き者に残酷だ。
お前こそが我の器。
我に成り変わり世界を手にするのだ。
神の囁きが聞こえる。
姫巫女は自分を否定する目の前の敵に怒りをぶつけた。
「私の幸せを奪わせはしない!」
姫巫女はツユクサ・・・だったモノを操り、王妃に襲いかかった。
「させぬよ。
それは我が妻ぞ。」
国王自ら刀を手にして見るも無惨な操り人形に刃を向けた。
「退けっ!
まずは、そこの女を排除する。」
「なんだ其方。
存外、旦那様に本気で惚れていたのか?」
執拗に自分を狙う姫巫女に王妃ソウビは煽るように笑った。
「違うっ!
惚れるだなんだと愚かな人間め!
目障りだと言っているのだ。」
姫巫女は国王の側妃ではない。
あくまでも寵愛を受けた客人に過ぎない。
後宮で王妃が権力を振るっている以上、この国で1番の女になる事は出来ないのだ。
それが煩わしいと思っていた。
「何故、私が穢らわしい人間に心を奪われねばならんのだ?
求めるのは弱い人間であり、愛を与えるのは私の方だ。」
ツユクサを相手にする国王は己の妻が楽しげに揶揄っているのを見て口元を緩めた。
「なんじゃ、つまらん。
人の男を横恋慕する年増かと思えば、恋する事も知らぬ干からびたババアときたか。
惚れた男1つ手玉に取れずに悪女になるとは嘆かわしい事だ。」
「惚れてなどおらん!
それに私はお前の夫すら誑かしてみせたぞ。」
どこか得意気な姫巫女を王妃が鼻で笑った。
「己の魅力ではないだろうに、ようも鼻高々でいられるものだ。
“エルフの里”とは、かようにも世間知らずの田舎者であったか。
手に入れたい男に“魅了”を使うなど恥を知れ。」
言い切ったソウビ王妃は、今も自分を守りながら戦う夫に微笑んだ。
姫巫女は余裕で笑う王妃を前に憤然とした。
どうにか、その気に食わない顔を苦渋で染めてしまいたい。
ツユクサを操る姫巫女の手に力が入る。
「本当は2人の関係が羨ましかったんでしょ?」
魔力を流し込もうとしていた姫巫女に柔らかなイオリの声が問いかけた。
「国王様に愛される王妃様が羨ましかったんじゃなくて、王妃様にも愛される国王様・・・愛に包まれた家族が羨ましかったんでしょ?」
国王トウカ・ノブタカ・ショーグンにはソウビ王妃以外にも側妃であるアオイ妃がいる。
関係は複雑にも関わらず、互いに思いやる仲の良い家族であった。
一重に王妃を愛する国王と、敬愛する側妃をコントロールしているソウビ王妃の気遣いの賜物であるが、それを他人が知る必要はない。
それぞれに生まれた子供達も実に仲が良かった。
荒廃した土地で、寄せ集められた荒んだ子供達と共に過ごした姫巫女にとって、家族とは欲しても手に入れる事の出来ぬ物だった。
それが、羨ましさから妬みに変わっていった。
だとしても、それを認める姫巫女ではない。
「・・・そんなもの。
“使命”がある私にはいらぬ。」
どこか弱さを見せる姫巫女にイオリは眉を下げた。
「家族に縁の薄かった俺には分かる。
だから、人は折角できた繋がりを大切にするんだ。
悪意から、その繋がりを守ろうとする人間は何よりも強い。」
王妃とイオリに気取られた姫巫女がハッと後退した。
「もう、我の大切な物を好きにはさせん。」
そう言った国王トウカ・ノブタカ・ショーグンの一太刀が姫巫女とツユクサを繋げる糸を断ち切った。
この世は力の弱き者に残酷だ。
お前こそが我の器。
我に成り変わり世界を手にするのだ。
神の囁きが聞こえる。
姫巫女は自分を否定する目の前の敵に怒りをぶつけた。
「私の幸せを奪わせはしない!」
姫巫女はツユクサ・・・だったモノを操り、王妃に襲いかかった。
「させぬよ。
それは我が妻ぞ。」
国王自ら刀を手にして見るも無惨な操り人形に刃を向けた。
「退けっ!
まずは、そこの女を排除する。」
「なんだ其方。
存外、旦那様に本気で惚れていたのか?」
執拗に自分を狙う姫巫女に王妃ソウビは煽るように笑った。
「違うっ!
惚れるだなんだと愚かな人間め!
目障りだと言っているのだ。」
姫巫女は国王の側妃ではない。
あくまでも寵愛を受けた客人に過ぎない。
後宮で王妃が権力を振るっている以上、この国で1番の女になる事は出来ないのだ。
それが煩わしいと思っていた。
「何故、私が穢らわしい人間に心を奪われねばならんのだ?
求めるのは弱い人間であり、愛を与えるのは私の方だ。」
ツユクサを相手にする国王は己の妻が楽しげに揶揄っているのを見て口元を緩めた。
「なんじゃ、つまらん。
人の男を横恋慕する年増かと思えば、恋する事も知らぬ干からびたババアときたか。
惚れた男1つ手玉に取れずに悪女になるとは嘆かわしい事だ。」
「惚れてなどおらん!
それに私はお前の夫すら誑かしてみせたぞ。」
どこか得意気な姫巫女を王妃が鼻で笑った。
「己の魅力ではないだろうに、ようも鼻高々でいられるものだ。
“エルフの里”とは、かようにも世間知らずの田舎者であったか。
手に入れたい男に“魅了”を使うなど恥を知れ。」
言い切ったソウビ王妃は、今も自分を守りながら戦う夫に微笑んだ。
姫巫女は余裕で笑う王妃を前に憤然とした。
どうにか、その気に食わない顔を苦渋で染めてしまいたい。
ツユクサを操る姫巫女の手に力が入る。
「本当は2人の関係が羨ましかったんでしょ?」
魔力を流し込もうとしていた姫巫女に柔らかなイオリの声が問いかけた。
「国王様に愛される王妃様が羨ましかったんじゃなくて、王妃様にも愛される国王様・・・愛に包まれた家族が羨ましかったんでしょ?」
国王トウカ・ノブタカ・ショーグンにはソウビ王妃以外にも側妃であるアオイ妃がいる。
関係は複雑にも関わらず、互いに思いやる仲の良い家族であった。
一重に王妃を愛する国王と、敬愛する側妃をコントロールしているソウビ王妃の気遣いの賜物であるが、それを他人が知る必要はない。
それぞれに生まれた子供達も実に仲が良かった。
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それが、羨ましさから妬みに変わっていった。
だとしても、それを認める姫巫女ではない。
「・・・そんなもの。
“使命”がある私にはいらぬ。」
どこか弱さを見せる姫巫女にイオリは眉を下げた。
「家族に縁の薄かった俺には分かる。
だから、人は折角できた繋がりを大切にするんだ。
悪意から、その繋がりを守ろうとする人間は何よりも強い。」
王妃とイオリに気取られた姫巫女がハッと後退した。
「もう、我の大切な物を好きにはさせん。」
そう言った国王トウカ・ノブタカ・ショーグンの一太刀が姫巫女とツユクサを繋げる糸を断ち切った。
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