続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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 キラキラと美しい雨を降らせる火龍とドラゴンの神々しい姿を姫巫女は唖然と見上げていた。

 ーーー老師様、どうして里は砂だらけなの?

 “特別な子”として選ばれた時に、老師と呼ばれる老エルフに聞いた事があった。

 ーーー邪神リュオンなる者の所為だ。

 酷いと思った。
 里の皆んなは、あんなに苦しんでいるのに・・・。

 ーーー特別な力を持つ其方なら、強い力を取り戻す事が出来る。
    それが、ルミエール様より遣わされた其方の使命だ。
    我らが希望。

 期待された時の誇らしさが脆い牙城の様に崩れていく。

「・・・叶うわけがない。」

 思わず口に出していた自分に愕然とする。

「ぼーっとしてて良いのかな?」

 そんな声と共に自分を守っていた戦士2人がバタリと倒れた。
 戸惑う姫巫女の視線の先には、先程の黒い塊・・・神より授けられた武器を構えたイオリが自分を狙い定めていた。



  
 1人で国の軍1つに匹敵する“エルフの里の戦士”。

 姫巫女を守る様に立っていた敵を前に殺気立っていたグランヌスの衛兵に国王が語りかける。

「我らが培った日々の鍛錬が身を結ぶ時が来た。
 “エルフの里”・・・如何に強き相手か理解をしているつもりだが、1人の刀使いとして武者震いが止まらん。
 皆も同じであろう?
 逃げも隠れもしない。
 国の為に命を落とすのなら本望。」

 国王トウカ・ノブタカ・ショーグンの言葉に火の国の男達が頷き返した。
 
「だから、死んじゃダメだってば。」

 国王を筆頭に興奮している男達の空気を切り裂く様にイオリがジト目を向けた。

「死んでどうするんです?
 残された者に後始末をさせるんですか?
 そんな無責任な決意要らないんですよ。
 どうせなら、生き残ると吠えてくださいよ。」

 自分達の決心を無責任と片付けられた火の国の男達は驚いた顔をしていた。

「フフフ。
 本当にイオリは面白い?」

 1人クスクスと笑っていたのは王妃ソウビだった。

「隠密は生きて情報を持って帰るのが信条。
 死は国の未来の為に、なんら役には立たぬ事を知っている。
 我が国の男は肝っ玉が小さくて片腹痛いわ。
 惨めったらしくとも、共に生きてくれる男が私は好きだ。」

 そんな王妃に王が笑った。
 
「ならば、情けなくも生き恥を晒すか。
 我の人生は其方と共にある。」

 見つめ合う両親に嬉しくも、照れ臭さを感じたムネタカは隣にいたロクに肩を竦めてみせた。

「先日まで険悪だったのに、世話が掛かる親達だよ。」

「晒す恥も、見方によるッスよ。
 ソウビ様の小言を嬉しそうに聞いているお館様・・・良いじゃないですか。」

「そうだな。」

 まだ言い合いを続ける両親をムネタカは微笑ましく見つめた。



「許さない・・・許さない・・・許さない!!」

 和やかな空気に苛立つように姫巫女が叫んだ。
 
 グッタリしていたツユクサが操り人形の様に姫巫女の前に飛び出てくる。

「この世の中心は私。
 私を認めぬ者など要らぬ。
 ・・・私達はもう引き返せないの。」

 自己承認の根源の様な台詞の最後に子供の様に涙を流した姫巫女が心の叫びを上げていた。

「再び、我ら“エルフの里”こそが世界を手にする時がやって来た。
 戦士よ。
 存分に暴れるが良い。」

 その言葉を合図に、一斉に“エルフの里の戦士”が襲いかかってきた。


 

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