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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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グランヌスの貴族ヨシノリ・アラキは強さを求める国の中でプライドを燻らせていた。
幼い頃より剣術や体術を学ぶグランヌスにおいて、才能が開花しなかった半端者。
彼を知る者達はヨシノリ・アラキを、そう評価するだろう。
血反吐を吐いて努力をしてきた訳でもない。
かと言って、勉学にのめり込んだ訳でもない。
他国との争いを終了して何年もたった貴族の子息の中には甘ったれた考えを持つ者が現れるのも時代の性なのかもしれなかった。
ーーー戦もないのに、バカみたいに剣を振ってどうするんだ。
どいつもこいつも、暑苦しい。
努力をしない自分を正当化する為にヨシノリ・アラキは愚だをまく青年期を過ごした。
そんな人間が大人になり、要職に就けないのも当たり前の事だった。
しかし、当の本人は自分を顧みる事もなく、自分に対する周囲の評価が不当であると感じていた。
ーーー宰相など、ただの乳兄弟なだけじゃないか。
私は、なんて運がないんだ。
そう、私はただ運がないだけだ。
運・・・そんな不確かな物で片付けた男の行く末は不穏しかなかった。
「助けてください!!」
眉間のシワを寄せたヨシノリ・アラキは、しがみ付いてきた男・・・ミズガルドの貴族ドナン・リューゲを引き剥がした。
「我が主人が国により、不名誉の末に粛清されたのだ!
このままでは私は帰国次第、逮捕される!!
私は、ただ主人の言う事を聞いていただけなのだ。
不当だ!不当な拘束で身を滅ぼすなど絶対に嫌だ!」
顔を真っ赤にして喚き散らす男にヨシノリ・アラキは興味もなく溜息を吐いた。
ーーーこの男とも終わりだな。
なかなか、美味い汁を吸えたもんだが、面倒に巻き込まれるのは避けたい。
ミズガルドの貴族ルッツ・ヴァハマンの商品は良質でヨシノリ・アラキも気に入っていた。
その彼が失脚となれば、付き合いも今日までだ。
「私ではお力になれませんな。」
「そんな事を言わないで下さい!
国から持ち出した貴重な魔道具を差し上げます。」
次々とテーブルに乗せられていく魔道具を見て、ヨシノリ・アラキの考えが変わっていった。
ーーーほう、なかなか良い物を持っているではないか?
「これは?」
透明の球体を手にしたヨシノリ・アラキにドナン・リューゲは必死に説明した。
「それは、生体を生きたまま拘束できる魔道具です。
我が国では珍しい魔獣を捕える際に使っていました。」
「・・・人も生きたまま拘束出来るのか?」
「生命体の強さによって変わるそうです。
人に試した事はありませんが、恐らく・・・。」
「どのくらいある?」
「10個ほど・・・。」
「面白い。」
「それじゃ!」
絶望から希望をみたドナン・リューゲにヨシノリ・アラキは考え込んだ。
「・・・全てだ。
貴方の・・・お前の全てを差し出せ。
魔道具から家財道具。
私が有効に利用してやろう。」
ヨシノリ・アラキは自分にもチャンスが来たと高揚した。
ーーー国をひっくり返す事が出来るかもしれないな。
面白くなってきた。
治癒能力を持つ、よく当たる占い師がいるらしい。
その話を聞いたのは、それから暫くしてからの事だった。
幼い頃より剣術や体術を学ぶグランヌスにおいて、才能が開花しなかった半端者。
彼を知る者達はヨシノリ・アラキを、そう評価するだろう。
血反吐を吐いて努力をしてきた訳でもない。
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他国との争いを終了して何年もたった貴族の子息の中には甘ったれた考えを持つ者が現れるのも時代の性なのかもしれなかった。
ーーー戦もないのに、バカみたいに剣を振ってどうするんだ。
どいつもこいつも、暑苦しい。
努力をしない自分を正当化する為にヨシノリ・アラキは愚だをまく青年期を過ごした。
そんな人間が大人になり、要職に就けないのも当たり前の事だった。
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運・・・そんな不確かな物で片付けた男の行く末は不穏しかなかった。
「助けてください!!」
眉間のシワを寄せたヨシノリ・アラキは、しがみ付いてきた男・・・ミズガルドの貴族ドナン・リューゲを引き剥がした。
「我が主人が国により、不名誉の末に粛清されたのだ!
このままでは私は帰国次第、逮捕される!!
私は、ただ主人の言う事を聞いていただけなのだ。
不当だ!不当な拘束で身を滅ぼすなど絶対に嫌だ!」
顔を真っ赤にして喚き散らす男にヨシノリ・アラキは興味もなく溜息を吐いた。
ーーーこの男とも終わりだな。
なかなか、美味い汁を吸えたもんだが、面倒に巻き込まれるのは避けたい。
ミズガルドの貴族ルッツ・ヴァハマンの商品は良質でヨシノリ・アラキも気に入っていた。
その彼が失脚となれば、付き合いも今日までだ。
「私ではお力になれませんな。」
「そんな事を言わないで下さい!
国から持ち出した貴重な魔道具を差し上げます。」
次々とテーブルに乗せられていく魔道具を見て、ヨシノリ・アラキの考えが変わっていった。
ーーーほう、なかなか良い物を持っているではないか?
「これは?」
透明の球体を手にしたヨシノリ・アラキにドナン・リューゲは必死に説明した。
「それは、生体を生きたまま拘束できる魔道具です。
我が国では珍しい魔獣を捕える際に使っていました。」
「・・・人も生きたまま拘束出来るのか?」
「生命体の強さによって変わるそうです。
人に試した事はありませんが、恐らく・・・。」
「どのくらいある?」
「10個ほど・・・。」
「面白い。」
「それじゃ!」
絶望から希望をみたドナン・リューゲにヨシノリ・アラキは考え込んだ。
「・・・全てだ。
貴方の・・・お前の全てを差し出せ。
魔道具から家財道具。
私が有効に利用してやろう。」
ヨシノリ・アラキは自分にもチャンスが来たと高揚した。
ーーー国をひっくり返す事が出来るかもしれないな。
面白くなってきた。
治癒能力を持つ、よく当たる占い師がいるらしい。
その話を聞いたのは、それから暫くしてからの事だった。
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