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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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「父上?
・・父上っ!!」
喜ぶ息子をチラリと見やると国王トウカ・ムネタカ・ショーグンは口元をニヤリと緩めた。
初めて目にした禍々しいオーラは消え、だらし無く着流していた姿は今はない。
鉄紺の着物に髪を綺麗に結び、腰に刀を差した出立は嘗ての姿を取り戻した様だった。
それでも顔には多少の疲れが見えていた。
王妃であるソウビが隣に寄り添って支えているのが、それを伺える。
「国王がお戻りになられた・・・。」
目に涙を溜めた宰相の言葉に衛兵達が嬉しそうに声を上げる。
「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」
離宮の庭園に足を踏み入れた国王は気遣う王妃に頷くと、跪く衛兵達を誇らしげに見つめ、1人歩みを進めて息子の前に立った。
「待たせた。」
「お帰りをお待ちしておりました。」
久しぶりの息子との会話は短くもあったが、互いに安堵した親子は頷き合った。
次に国王は自分が不在の間、国を支えてくれた親友・・・宰相ケンショー・オオスギの肩を掴んだ。
「大義であった。」
謝罪をしない国王の最大限の労いの言葉だった。
全てを理解している宰相は一筋の涙を流すと頭を下げた。
「ハッ。」
再会を喜ぶ時間は短い。
国王は、すぐに国難の根源に厳しい視線を向けた。
「ノブタカ様!!」
嬉しそうな姫巫女が駆け寄ると、闇から影が飛び出してきて、国王を守る様に刀を構えた。
「小娘よ。
下がってろい。」
装束を身に纏った隠密の頭目カンスケ・シノノメが主人の道を遮る女を牽制した。
国王は涙目で見上げる娘に何の心も動かない自分に安堵した。
「親父殿。
大丈夫だ。」
いたく心配をかけたであろう義理の父の背をポンと叩くと国王トウカ・ノブタカ・ショーグンは己の刀を抜くと目にも止まらぬ速さで姫巫女の喉元に突きつけた。
「えらく好き勝手やってくれた様だな。」
「・・・ノブタカ様?
どうしたの?
いつもの様に不安を取り除いて差し上げますわ。」
思い通りにならぬ事が続き、やっと味方が来たとばかりに嬉し涙で微笑みを浮かべる姫巫女に国王ノブタカは顔を歪めた。
「誤解をするな。
我の好みは背の高い豊満な女子だ。
加えて、簡単に涙も見せぬ気の強いのか一等良い。」
眉を顰める国王の肩越しに王妃が満足気に微笑んでいるのが見えて姫巫女は顔を真っ赤にした。
「どうして、何もかも上手くいかないの?
私は“神より愛された子”で誰よりも美しく、誰もが敬うべき存在なのに・・・。」
自分を拒否する人間達がいる事が信じられないとばかりに頭を抱える姫巫女は先程から踞っている己の侍女を見下ろした。
「ねぇ、何とか言って!
みんなが変なの!
其方なら分かるであろう?」
可哀想な事に侍女オモトの精神も崩壊の一途を辿っている最中であり、姫巫女に視線を送ることなく己の世界に入り込んでた。
「大丈夫だ。
お前の事を話せる奴らなら他にもいる。」
カンスケ爺やが蔑みの視線を送ると、離宮の門から2人の男が引きずられる様にしてやって来るのが見えた。
「これはこれは。」
待ってましたとばかりに、闇深い笑顔で相手を迎え入れたのは宰相ケンショー・オオスギだった。
「ヨシノリ・アラキ殿。
ご自身の家臣ドナン・リューゲを連れてのお出ましか。」
顔面蒼白の2人は乱暴に放り投げられると、怯えたように悲鳴を上げるのだった。
・・父上っ!!」
喜ぶ息子をチラリと見やると国王トウカ・ムネタカ・ショーグンは口元をニヤリと緩めた。
初めて目にした禍々しいオーラは消え、だらし無く着流していた姿は今はない。
鉄紺の着物に髪を綺麗に結び、腰に刀を差した出立は嘗ての姿を取り戻した様だった。
それでも顔には多少の疲れが見えていた。
王妃であるソウビが隣に寄り添って支えているのが、それを伺える。
「国王がお戻りになられた・・・。」
目に涙を溜めた宰相の言葉に衛兵達が嬉しそうに声を上げる。
「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」
離宮の庭園に足を踏み入れた国王は気遣う王妃に頷くと、跪く衛兵達を誇らしげに見つめ、1人歩みを進めて息子の前に立った。
「待たせた。」
「お帰りをお待ちしておりました。」
久しぶりの息子との会話は短くもあったが、互いに安堵した親子は頷き合った。
次に国王は自分が不在の間、国を支えてくれた親友・・・宰相ケンショー・オオスギの肩を掴んだ。
「大義であった。」
謝罪をしない国王の最大限の労いの言葉だった。
全てを理解している宰相は一筋の涙を流すと頭を下げた。
「ハッ。」
再会を喜ぶ時間は短い。
国王は、すぐに国難の根源に厳しい視線を向けた。
「ノブタカ様!!」
嬉しそうな姫巫女が駆け寄ると、闇から影が飛び出してきて、国王を守る様に刀を構えた。
「小娘よ。
下がってろい。」
装束を身に纏った隠密の頭目カンスケ・シノノメが主人の道を遮る女を牽制した。
国王は涙目で見上げる娘に何の心も動かない自分に安堵した。
「親父殿。
大丈夫だ。」
いたく心配をかけたであろう義理の父の背をポンと叩くと国王トウカ・ノブタカ・ショーグンは己の刀を抜くと目にも止まらぬ速さで姫巫女の喉元に突きつけた。
「えらく好き勝手やってくれた様だな。」
「・・・ノブタカ様?
どうしたの?
いつもの様に不安を取り除いて差し上げますわ。」
思い通りにならぬ事が続き、やっと味方が来たとばかりに嬉し涙で微笑みを浮かべる姫巫女に国王ノブタカは顔を歪めた。
「誤解をするな。
我の好みは背の高い豊満な女子だ。
加えて、簡単に涙も見せぬ気の強いのか一等良い。」
眉を顰める国王の肩越しに王妃が満足気に微笑んでいるのが見えて姫巫女は顔を真っ赤にした。
「どうして、何もかも上手くいかないの?
私は“神より愛された子”で誰よりも美しく、誰もが敬うべき存在なのに・・・。」
自分を拒否する人間達がいる事が信じられないとばかりに頭を抱える姫巫女は先程から踞っている己の侍女を見下ろした。
「ねぇ、何とか言って!
みんなが変なの!
其方なら分かるであろう?」
可哀想な事に侍女オモトの精神も崩壊の一途を辿っている最中であり、姫巫女に視線を送ることなく己の世界に入り込んでた。
「大丈夫だ。
お前の事を話せる奴らなら他にもいる。」
カンスケ爺やが蔑みの視線を送ると、離宮の門から2人の男が引きずられる様にしてやって来るのが見えた。
「これはこれは。」
待ってましたとばかりに、闇深い笑顔で相手を迎え入れたのは宰相ケンショー・オオスギだった。
「ヨシノリ・アラキ殿。
ご自身の家臣ドナン・リューゲを連れてのお出ましか。」
顔面蒼白の2人は乱暴に放り投げられると、怯えたように悲鳴を上げるのだった。
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