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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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「うっわ。怖ッ。
主の笑顔が怖いッス。」
「フフ。
王子、誰に学んだんだかな。」
茶会の様子にロクとヒューゴは笑いを堪えた。
「どんな時も笑顔の人がいましたねー。」
「あれは天然だけどな。
まぁ、笑顔が人を苛立たせるのも事実だ。
目の前のお嬢さん相手に、どこまで通じるかはムネタカ様次第だな。」
呑気な2人は、ムネタカと姫巫女が対峙するテーブルに近づく真っ黒な青年を見送るのだった。
_________
人は、どれ程の沈黙に耐える事が出来るのだろう。
今の現状を正しく理解していない人間が、この場に1人いた。
「お久しぶりですわね。
体調が悪いと聞いてましたので心配しておりましたのよ?」
「有難う御座います。」
「宜しければ、私がお祈りを致しましょう。」
両手を合わせ握りしめ目を閉じる姫巫女に宰相が、これみよがしに舌打ちをした。
オモトは、その無礼な態度に眉を顰めた。
《この国の多くの人間が姫巫女様に救われているのに・・・。》
オモトの不満気な態度に宰相の刃のような視線が突き刺ると次女は気まずそうに目を逸らした。
「茶の準備を致します。」
屋敷内に用意していた茶会の準備を台無しにされ、溢れる溜息を堪えるオモトに宰相の冷たい声が届く。
「結構、こちらで用意しました。」
それにはオモトは顔を真っ赤にして怒りの形相で叫んだ。
「招待したのはこちらで御座います!」
流石に主人がバカにされすぎていると抗議する侍女などお構いなしの宰相である。
「それは失礼。
騒ぎがあった離宮で、王子をもてなすだけの余裕があるとは思いませなんだ。
・・・何が入っているか分からないのに、王子が口にするわけがないだろうが。」
立派な嫌味の後の呟きも、しっかりと侍女には聞こえたらしい。
屈辱で顔色が最早、紫色まで変化していた。
「ねぇ、ムネタカ様・・・王子。
宰相様って、こんなに嫌な人だったかしら?
お顔立ちが整ってる分、とても怖いわ。」
困った顔で小首をかしげる姫巫女に、ムネタカは温度のない微笑みを浮かべ名言を避けた。
すると、そこに真っ黒な青年がヒョイっと姿を現した。
「お待たせしました。」
青年は慣れた手つきで茶菓子を用意すると、最後に陶磁器を使ったポットを高い位置で傾け美しい所作で茶を注いだ。
「まぁ。」
見事にカップに収まった紅茶は実に香りが豊かだった。
「どうぞ。」
王子は青年に礼を言うと混ざりっ気のない笑顔でカップを傾けた。
艶やかな紅茶を前に目を煌かせた姫巫女が手を伸ばすと、オモトの金切り声がした。
「毒味もしていないのになりません!!」
こちらを疑ったのだから、そっちも同じだろう?
とばかりの目を投げかけるオモトに宰相はバカにしたように鼻で笑った。
そして姫巫女も、そんなオモトを不満そうに見上げた。
「王子に失礼だわ。」
主人の潤んだ瞳に息を呑むがオモトは引かずに、首を横に振った。
そんな時だった。
ムネタカが素早く姫巫女のカップに手を伸ばした。
「では私が・・うん。美味しい。
これで良いね?」
突然のムネタカの行動に、宰相は呆れ、オモトは唖然とし、姫巫女は頬を染めた。
真っ黒な青年のクスクスと笑う声が聞こえたかと思えば、ムネタカは、それまでとは違う表情のない顔で言った。
「私への用とは何でしょう?
異教の巫女よ。」
主の笑顔が怖いッス。」
「フフ。
王子、誰に学んだんだかな。」
茶会の様子にロクとヒューゴは笑いを堪えた。
「どんな時も笑顔の人がいましたねー。」
「あれは天然だけどな。
まぁ、笑顔が人を苛立たせるのも事実だ。
目の前のお嬢さん相手に、どこまで通じるかはムネタカ様次第だな。」
呑気な2人は、ムネタカと姫巫女が対峙するテーブルに近づく真っ黒な青年を見送るのだった。
_________
人は、どれ程の沈黙に耐える事が出来るのだろう。
今の現状を正しく理解していない人間が、この場に1人いた。
「お久しぶりですわね。
体調が悪いと聞いてましたので心配しておりましたのよ?」
「有難う御座います。」
「宜しければ、私がお祈りを致しましょう。」
両手を合わせ握りしめ目を閉じる姫巫女に宰相が、これみよがしに舌打ちをした。
オモトは、その無礼な態度に眉を顰めた。
《この国の多くの人間が姫巫女様に救われているのに・・・。》
オモトの不満気な態度に宰相の刃のような視線が突き刺ると次女は気まずそうに目を逸らした。
「茶の準備を致します。」
屋敷内に用意していた茶会の準備を台無しにされ、溢れる溜息を堪えるオモトに宰相の冷たい声が届く。
「結構、こちらで用意しました。」
それにはオモトは顔を真っ赤にして怒りの形相で叫んだ。
「招待したのはこちらで御座います!」
流石に主人がバカにされすぎていると抗議する侍女などお構いなしの宰相である。
「それは失礼。
騒ぎがあった離宮で、王子をもてなすだけの余裕があるとは思いませなんだ。
・・・何が入っているか分からないのに、王子が口にするわけがないだろうが。」
立派な嫌味の後の呟きも、しっかりと侍女には聞こえたらしい。
屈辱で顔色が最早、紫色まで変化していた。
「ねぇ、ムネタカ様・・・王子。
宰相様って、こんなに嫌な人だったかしら?
お顔立ちが整ってる分、とても怖いわ。」
困った顔で小首をかしげる姫巫女に、ムネタカは温度のない微笑みを浮かべ名言を避けた。
すると、そこに真っ黒な青年がヒョイっと姿を現した。
「お待たせしました。」
青年は慣れた手つきで茶菓子を用意すると、最後に陶磁器を使ったポットを高い位置で傾け美しい所作で茶を注いだ。
「まぁ。」
見事にカップに収まった紅茶は実に香りが豊かだった。
「どうぞ。」
王子は青年に礼を言うと混ざりっ気のない笑顔でカップを傾けた。
艶やかな紅茶を前に目を煌かせた姫巫女が手を伸ばすと、オモトの金切り声がした。
「毒味もしていないのになりません!!」
こちらを疑ったのだから、そっちも同じだろう?
とばかりの目を投げかけるオモトに宰相はバカにしたように鼻で笑った。
そして姫巫女も、そんなオモトを不満そうに見上げた。
「王子に失礼だわ。」
主人の潤んだ瞳に息を呑むがオモトは引かずに、首を横に振った。
そんな時だった。
ムネタカが素早く姫巫女のカップに手を伸ばした。
「では私が・・うん。美味しい。
これで良いね?」
突然のムネタカの行動に、宰相は呆れ、オモトは唖然とし、姫巫女は頬を染めた。
真っ黒な青年のクスクスと笑う声が聞こえたかと思えば、ムネタカは、それまでとは違う表情のない顔で言った。
「私への用とは何でしょう?
異教の巫女よ。」
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