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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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ムネタカはテーブルの上に置かれた姫巫女からの招待状を見下ろした。
「・・・目覚めたのですね。」
代わりに苦々しい顔をしたのは宰相のケンショー・オオスギである。
先行して報告を受けていた2人は離宮の惨状を前に、今しがた届いた穏やかな文章の招待状に寒気がしていた。
「離宮で気を失った貴族達は?」
「イオリ殿が命は無事だと申されているそうです。
回収したのちに医官や回復師達の元に送ります。」
姫巫女に心を明け渡していたとはいえ、惑わされ騙されていた側面もある。
自国の民である貴族達を守るのも彼等の仕事だった。
「“魅了”されていない反逆者達は、姫巫女が眠りについた時点で離宮に寄り付きもしていないようです。
今回も登城すらしておりません。
既に我が手の者達が監視についています。」
イオリと話した後の宰相の動きは早かった。
特に、ヨシノリ・アラキという貴族の屋敷への監視は念入りだった。
ドナン・リューゲ・・・。
ミズガルドから亡命してきた男を文官として受け入れ、1番最初に姫巫女を王宮へと連れて来たのも、この男だった。
姫巫女が力を持ち出すと、意気揚々と王宮を闊歩し、宰相の苦言ものらりくらりと躱し、王が“魅了”に落ちると姫巫女を側室にと押していた。
「やっと、奴に鉄槌を下せます。」
ムネタカの知らないところで苦労していたのだろう。
目をギラつかせる宰相を見上げると、ムネタカは姫巫女からの招待状を差し出した。
「行くと伝えてください。」
「・・・畏まりました。」
本当は駄目だと言いたい。
しかし、先頭に立つ覚悟を持った王子を前に宰相は頭を下げた。
「大丈夫。
国は取り返します。
この歪んだ秩序を正す時が来たんです。」
今だに眠りから醒めない国王を想い、ムネタカは優しく微笑んだ。
__________
「まぁ♪
ムネタカ様が茶会に来てくださるの?
嬉しいわ。」
第一王子の茶会への参加表明を聞き、喜ぶ姫巫女を前にしながらもオモトは心が晴れずにいた。
《私の名を忘れていた・・・?》
先程、可愛らしく首を傾げて自分の名を聞いてきた主人を信じられずにいたオモトは、現状を知りながら無邪気に微笑む姫巫女を真っ直ぐに見る事が出来ずにいた。
「裏庭に倒れている皆様は如何しましょう?」
問いかけるオモトに姫巫女は、先程と同じように首を傾けた。
「貴方の良いようにして良いのよ?
でも、いつまでも、そのままにしてたら困るわ。」
ーーー綺麗なお庭だから。
そう言うと、整った髪を確認するように鏡を覗き込む姫巫女だった。
「ツユクサ様は・・・。」
同じ様に意識のない筆頭侍女の名を口にすると姫巫女は、やっと虚な目をした。
「可哀想に・・・どうしたのかしらね。
疲れていたのかしら?」
あどけなさがある姫巫女に眉を顰めるとオモトは痛む手を摩った。
「離宮を危険に晒した者です。
拘束をいたします。」
自分以外の侍女が姿を現さない事にも疑問を持たずにいる姫巫女にオモトは隙間風の吹く心に、なんとか蓋をした。
パンッ
すると良い事を考えたとばかりに手を打った姫巫女は満面の笑みで振り返った。
「茶会の席でムネタカ様にお願いしましょう。
困った時は王家を頼れとノブタカ様とツユクサが言っていたもの!」
《王子は敵です!》
そう叫びたい気持ちを抑え黙り込むオモトに視線を送る事なく姫巫女は曇った空を見上げ微笑むのだった。
その一刻後、離宮にて第一王子と姫巫女の茶会が始まった。
「・・・目覚めたのですね。」
代わりに苦々しい顔をしたのは宰相のケンショー・オオスギである。
先行して報告を受けていた2人は離宮の惨状を前に、今しがた届いた穏やかな文章の招待状に寒気がしていた。
「離宮で気を失った貴族達は?」
「イオリ殿が命は無事だと申されているそうです。
回収したのちに医官や回復師達の元に送ります。」
姫巫女に心を明け渡していたとはいえ、惑わされ騙されていた側面もある。
自国の民である貴族達を守るのも彼等の仕事だった。
「“魅了”されていない反逆者達は、姫巫女が眠りについた時点で離宮に寄り付きもしていないようです。
今回も登城すらしておりません。
既に我が手の者達が監視についています。」
イオリと話した後の宰相の動きは早かった。
特に、ヨシノリ・アラキという貴族の屋敷への監視は念入りだった。
ドナン・リューゲ・・・。
ミズガルドから亡命してきた男を文官として受け入れ、1番最初に姫巫女を王宮へと連れて来たのも、この男だった。
姫巫女が力を持ち出すと、意気揚々と王宮を闊歩し、宰相の苦言ものらりくらりと躱し、王が“魅了”に落ちると姫巫女を側室にと押していた。
「やっと、奴に鉄槌を下せます。」
ムネタカの知らないところで苦労していたのだろう。
目をギラつかせる宰相を見上げると、ムネタカは姫巫女からの招待状を差し出した。
「行くと伝えてください。」
「・・・畏まりました。」
本当は駄目だと言いたい。
しかし、先頭に立つ覚悟を持った王子を前に宰相は頭を下げた。
「大丈夫。
国は取り返します。
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今だに眠りから醒めない国王を想い、ムネタカは優しく微笑んだ。
__________
「まぁ♪
ムネタカ様が茶会に来てくださるの?
嬉しいわ。」
第一王子の茶会への参加表明を聞き、喜ぶ姫巫女を前にしながらもオモトは心が晴れずにいた。
《私の名を忘れていた・・・?》
先程、可愛らしく首を傾げて自分の名を聞いてきた主人を信じられずにいたオモトは、現状を知りながら無邪気に微笑む姫巫女を真っ直ぐに見る事が出来ずにいた。
「裏庭に倒れている皆様は如何しましょう?」
問いかけるオモトに姫巫女は、先程と同じように首を傾けた。
「貴方の良いようにして良いのよ?
でも、いつまでも、そのままにしてたら困るわ。」
ーーー綺麗なお庭だから。
そう言うと、整った髪を確認するように鏡を覗き込む姫巫女だった。
「ツユクサ様は・・・。」
同じ様に意識のない筆頭侍女の名を口にすると姫巫女は、やっと虚な目をした。
「可哀想に・・・どうしたのかしらね。
疲れていたのかしら?」
あどけなさがある姫巫女に眉を顰めるとオモトは痛む手を摩った。
「離宮を危険に晒した者です。
拘束をいたします。」
自分以外の侍女が姿を現さない事にも疑問を持たずにいる姫巫女にオモトは隙間風の吹く心に、なんとか蓋をした。
パンッ
すると良い事を考えたとばかりに手を打った姫巫女は満面の笑みで振り返った。
「茶会の席でムネタカ様にお願いしましょう。
困った時は王家を頼れとノブタカ様とツユクサが言っていたもの!」
《王子は敵です!》
そう叫びたい気持ちを抑え黙り込むオモトに視線を送る事なく姫巫女は曇った空を見上げ微笑むのだった。
その一刻後、離宮にて第一王子と姫巫女の茶会が始まった。
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