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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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ホワンにとって故郷“ルーシュピケ”を離れると言うことは想像の付かぬ大事件だった。
獣人の代表者である象の獣人であるフェンバインに「お前、イオリについていけ。」と言われたのは寝耳に水の事だった。
「なんで?
ルーシュピケにグランヌスの兵士が来る。
俺も戦う。」
不満そうなホワンにフェンバインはルーシュピケの代表として“神の愛し子”の助けをして来いと言ったのだ。
それを聞いた、ガーディアンの狼獣人アズロは自分が行くと騒いだが、ガーディアンである彼にはルーシュピケを守る義務がある。
それにアズロはニナが、目当てなのだ。
ホワンは溜め息を吐きながらも、イオリ達に同行する事を了承した。
「ずるいぞ!!」
騒ぐ、アズロを無視し準備を進めたホワンであったが、1人になると微笑んだ。
ホワンもニナや子供達、イオリを気に入っていたのである。
イオリ達について旅をしたホワンであったが、元来が1人行動を好む男だった。
グランヌスの手前の渓谷に入る頃にはイオリ達から距離を空けて1人で旅を続けた。
折にかけて顔を出せば、子供達が嬉しそうに食べ物を差し出す。
ホワンは旅の途中で見つけた木の実や花などを見つけてはニナに渡した。
それも、グランヌスに近づけは難しくなった。
なんせグランヌスの領土は豊かな緑の中で暮らしていたホワンが想像も出来ぬ程に植物がなかったのだ。
「暮らしにくい場所だ。」
ホワンは、こんな土地で暮らすなんて気がしれないとルーシュピケを恋しがった。
ホワンの1人行動はグランヌスに入ってからも変わらなかった。
小男のホワンは身を隠すのが得意だった。
“イケダ屋”に入っていったイオリ達を見送ると、屋根に登って赤提灯が並ぶグランヌスの景色を見つめていた。
1度だけ、朱色の半纏を羽織った男が現れて、食事を置いて行ったが身元もバレているなら、まぁいいかと放っておいた。
イオリ達の話は聞こえていた。
なんせホワンは猿の獣人なのだ。
人族よりも聴覚が鋭い。
イオリが“イケダ屋”を飛び出した後も、ついて行った。
変な服装をしたイオリに首を捻ったが、厳しいと聞いていた門を攻略する為だろうと心の内側で彼らの苦労を労った。
「アイツ、なんて名前だったかなぁ~。」
イオリ達を通した呑気な門番に「コイツは大丈夫か?」と思いながらも、ホワン自身も、すんなりと門を入った。
それから後宮とやらに向かったイオリ達とは逆に自分は1番怪しげな場所に潜り込んだ。
変な匂いのする屋敷に顔を歪めたが、ルーシュピケの特産の布にエルフの代表者であるハニエルが高度な魔法を施し作り上げたスカーフを顔全体に巻けば、問題なく過ごす事が出来た。
日夜、離宮と呼ばれる怪しげな建物に隠れていたホワンに誰も気づく事もなく、彼自身も動く事もなかった。
ガルルゥゥギャァァァ!
グギャァァ!ヴァァァァ!!!
身の毛もよだつ、あの雄叫びが上がる事がなければ・・・。
ホワンは、持ち帰った指輪をイオリに差し出した。
「ヤバそうなの持ってきた。」
平然と言うが、指輪にはおまけが付いていた。
即ち、切り落とされた侍女の指ごと指輪を持って来たホワンである。
「・・・顔を合わすのは久しぶりだね。
お疲れ様。ホワン。」
引き攣る顔で労うイオリに、「うん。」とクールに頷くホワンであった。
獣人の代表者である象の獣人であるフェンバインに「お前、イオリについていけ。」と言われたのは寝耳に水の事だった。
「なんで?
ルーシュピケにグランヌスの兵士が来る。
俺も戦う。」
不満そうなホワンにフェンバインはルーシュピケの代表として“神の愛し子”の助けをして来いと言ったのだ。
それを聞いた、ガーディアンの狼獣人アズロは自分が行くと騒いだが、ガーディアンである彼にはルーシュピケを守る義務がある。
それにアズロはニナが、目当てなのだ。
ホワンは溜め息を吐きながらも、イオリ達に同行する事を了承した。
「ずるいぞ!!」
騒ぐ、アズロを無視し準備を進めたホワンであったが、1人になると微笑んだ。
ホワンもニナや子供達、イオリを気に入っていたのである。
イオリ達について旅をしたホワンであったが、元来が1人行動を好む男だった。
グランヌスの手前の渓谷に入る頃にはイオリ達から距離を空けて1人で旅を続けた。
折にかけて顔を出せば、子供達が嬉しそうに食べ物を差し出す。
ホワンは旅の途中で見つけた木の実や花などを見つけてはニナに渡した。
それも、グランヌスに近づけは難しくなった。
なんせグランヌスの領土は豊かな緑の中で暮らしていたホワンが想像も出来ぬ程に植物がなかったのだ。
「暮らしにくい場所だ。」
ホワンは、こんな土地で暮らすなんて気がしれないとルーシュピケを恋しがった。
ホワンの1人行動はグランヌスに入ってからも変わらなかった。
小男のホワンは身を隠すのが得意だった。
“イケダ屋”に入っていったイオリ達を見送ると、屋根に登って赤提灯が並ぶグランヌスの景色を見つめていた。
1度だけ、朱色の半纏を羽織った男が現れて、食事を置いて行ったが身元もバレているなら、まぁいいかと放っておいた。
イオリ達の話は聞こえていた。
なんせホワンは猿の獣人なのだ。
人族よりも聴覚が鋭い。
イオリが“イケダ屋”を飛び出した後も、ついて行った。
変な服装をしたイオリに首を捻ったが、厳しいと聞いていた門を攻略する為だろうと心の内側で彼らの苦労を労った。
「アイツ、なんて名前だったかなぁ~。」
イオリ達を通した呑気な門番に「コイツは大丈夫か?」と思いながらも、ホワン自身も、すんなりと門を入った。
それから後宮とやらに向かったイオリ達とは逆に自分は1番怪しげな場所に潜り込んだ。
変な匂いのする屋敷に顔を歪めたが、ルーシュピケの特産の布にエルフの代表者であるハニエルが高度な魔法を施し作り上げたスカーフを顔全体に巻けば、問題なく過ごす事が出来た。
日夜、離宮と呼ばれる怪しげな建物に隠れていたホワンに誰も気づく事もなく、彼自身も動く事もなかった。
ガルルゥゥギャァァァ!
グギャァァ!ヴァァァァ!!!
身の毛もよだつ、あの雄叫びが上がる事がなければ・・・。
ホワンは、持ち帰った指輪をイオリに差し出した。
「ヤバそうなの持ってきた。」
平然と言うが、指輪にはおまけが付いていた。
即ち、切り落とされた侍女の指ごと指輪を持って来たホワンである。
「・・・顔を合わすのは久しぶりだね。
お疲れ様。ホワン。」
引き攣る顔で労うイオリに、「うん。」とクールに頷くホワンであった。
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