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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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ーーーそれから、少し前の事。
姫巫女の執務室に2人の侍女が姿を現していた。
「オモト様の命で、掃除に参りました。」
執務室の扉を守っていた2人の衛兵は訝し気ながら侍女達を見下ろした。
「いつ目が覚めても良いように、姫巫女様のおわす所は綺麗にしなければならないと・・・。」
衛兵は「なるほど」と納得すると、掃除道具を手にする2人の為に扉を開いてやった。
「終わった時に、中から扉を叩きなさい。
そうしたら、何も持ち出していない事を確認した後に出ても良いとする。」
「「はい。」」
侍女達は扉が閉じるのを確認すると、顔を見合わせ被っていた頭巾を取った。
すると、2人の頭についていた耳がピコピコと動く。
「無事に潜入成功だね。」
犬獣人のシャロットが親指を上げると、ラックがニッコリとした。
掃除女と呼ばれる、最下層の侍女に紛れていた2人はこの数日間、離宮の至る所を調べ上げていた。
体のラインが細く、猫撫で声の出るラックが男の子であるとは誰も気づいていなかった。
今朝も、2人は姫巫女の寝室から出て来たオモトに衛兵が取り囲んでいると騒ぎ立て、離宮に不安な風を送り込んだばかりだった。
2人が何故、危険を犯してまで姫巫女の部屋までやって来たのかというと・・・。
『恐らく、追い詰められた離宮はムネタカさんとの交渉に弟さんと妹さん達を利用するはずです。』
国民、全てが人質の今、早急に命が御脅かされる可能性が高いのは王子と姫達である。
イオリの懸念に忍び込んでいた者達が動き出したのだ。
今朝の演説の後、ツユクサがオモトを連れて、姫巫女の執務室に向かったのは分かっていた。
出て来た2人の様子から、秘密は執務室に集められていると考えて、思い切ってオモトに掃除を願い出たのだ。
「お可哀想な姫巫女様の為に、いつでもどこでも、姫巫女様の全てを美しくして差し上げたい。」
涙ながらに訴え掛ければ、オモトは頷き許可を出してくれた。
「思ったより、チョロかったね。
あの人さ、多分。
“魅了”にかかってないよ。」
ラックはオモトは本気の忠誠心から姫巫女を心配していると考えていたのだ。
「よし、早く見つけよう。」
2人は手際良く、辺りを調べ始めた。
ピチチチッ
そこに、小窓から真っ赤な小鳥が飛び込んできた。
「ソル?」
思わず、驚く2人に返事をするように、短く「ピチチッ。」と鳴くと、ソルは棚にあった黄色の石を突っついた。
それは、この国では“龍の目”と呼ばれる希少な黄色翡翠の宝玉だった。
「これ?
これが気になるんだね?」
「ラックちょっと待って。」
ソルが示す石に手をかけようとするラックをシャロットが制止した。
「開けた時に仕掛けがあるかもしれないよ。」
俗に言う、音が出たり暗器が飛び出たりするのをシャロットは心配しているのだ。
「ピチチチッ!」
「ソルが大丈夫って言ってる。
いくよ。」
ラックが黄色翡翠の宝玉を動かすと、棚が音も立てずに静かに開いた。
「開いた!」
「よくやった、ソルちゃん!
ついでに王子達はどこか分かる?」
シャロットが問いかけると、ソルは迷わずに1つの箱に向かって飛び立った・・・。
それから、数分後の事だった。
トントントン
衛兵は部屋の中からのノックに扉を開けると、顔を出した2人の侍女に厳しい目を向けた。
「まさかと思うが、姫巫女様の私物を持ち出してはいないな?」
「「はい。」」
もう1人の衛兵が執務室を見渡し、変わった事がない事を確認すると侍女達は解放された。
「ご苦労だった。」
「「失礼します。」」
2人の侍女は、そのまま離宮の端に行くと燃え盛る焼却炉に煙玉を放り込んだ。
登って行く、煙を見上げると2人はニンマリして姿を消すのだった。
姫巫女の執務室に2人の侍女が姿を現していた。
「オモト様の命で、掃除に参りました。」
執務室の扉を守っていた2人の衛兵は訝し気ながら侍女達を見下ろした。
「いつ目が覚めても良いように、姫巫女様のおわす所は綺麗にしなければならないと・・・。」
衛兵は「なるほど」と納得すると、掃除道具を手にする2人の為に扉を開いてやった。
「終わった時に、中から扉を叩きなさい。
そうしたら、何も持ち出していない事を確認した後に出ても良いとする。」
「「はい。」」
侍女達は扉が閉じるのを確認すると、顔を見合わせ被っていた頭巾を取った。
すると、2人の頭についていた耳がピコピコと動く。
「無事に潜入成功だね。」
犬獣人のシャロットが親指を上げると、ラックがニッコリとした。
掃除女と呼ばれる、最下層の侍女に紛れていた2人はこの数日間、離宮の至る所を調べ上げていた。
体のラインが細く、猫撫で声の出るラックが男の子であるとは誰も気づいていなかった。
今朝も、2人は姫巫女の寝室から出て来たオモトに衛兵が取り囲んでいると騒ぎ立て、離宮に不安な風を送り込んだばかりだった。
2人が何故、危険を犯してまで姫巫女の部屋までやって来たのかというと・・・。
『恐らく、追い詰められた離宮はムネタカさんとの交渉に弟さんと妹さん達を利用するはずです。』
国民、全てが人質の今、早急に命が御脅かされる可能性が高いのは王子と姫達である。
イオリの懸念に忍び込んでいた者達が動き出したのだ。
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出て来た2人の様子から、秘密は執務室に集められていると考えて、思い切ってオモトに掃除を願い出たのだ。
「お可哀想な姫巫女様の為に、いつでもどこでも、姫巫女様の全てを美しくして差し上げたい。」
涙ながらに訴え掛ければ、オモトは頷き許可を出してくれた。
「思ったより、チョロかったね。
あの人さ、多分。
“魅了”にかかってないよ。」
ラックはオモトは本気の忠誠心から姫巫女を心配していると考えていたのだ。
「よし、早く見つけよう。」
2人は手際良く、辺りを調べ始めた。
ピチチチッ
そこに、小窓から真っ赤な小鳥が飛び込んできた。
「ソル?」
思わず、驚く2人に返事をするように、短く「ピチチッ。」と鳴くと、ソルは棚にあった黄色の石を突っついた。
それは、この国では“龍の目”と呼ばれる希少な黄色翡翠の宝玉だった。
「これ?
これが気になるんだね?」
「ラックちょっと待って。」
ソルが示す石に手をかけようとするラックをシャロットが制止した。
「開けた時に仕掛けがあるかもしれないよ。」
俗に言う、音が出たり暗器が飛び出たりするのをシャロットは心配しているのだ。
「ピチチチッ!」
「ソルが大丈夫って言ってる。
いくよ。」
ラックが黄色翡翠の宝玉を動かすと、棚が音も立てずに静かに開いた。
「開いた!」
「よくやった、ソルちゃん!
ついでに王子達はどこか分かる?」
シャロットが問いかけると、ソルは迷わずに1つの箱に向かって飛び立った・・・。
それから、数分後の事だった。
トントントン
衛兵は部屋の中からのノックに扉を開けると、顔を出した2人の侍女に厳しい目を向けた。
「まさかと思うが、姫巫女様の私物を持ち出してはいないな?」
「「はい。」」
もう1人の衛兵が執務室を見渡し、変わった事がない事を確認すると侍女達は解放された。
「ご苦労だった。」
「「失礼します。」」
2人の侍女は、そのまま離宮の端に行くと燃え盛る焼却炉に煙玉を放り込んだ。
登って行く、煙を見上げると2人はニンマリして姿を消すのだった。
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