589 / 781
旅路 〜グランヌス・王宮〜
597
しおりを挟む
「おぅおぅ、随分と集まって来たッスね。」
呆れたような声を出していたのはムネタカの命を受けた隠密のロクだった。
「きっと全てではないでしょうね。」
同じく覗き込んでいたイオリが面白そうに頷いた。
「あれだけ目立つ噂を流したんだ。
敵に動きがあってもおかしくは無いが・・・。」
ウンザリしたように溜息を吐いたのはヒューゴだ。
ムネタカが第1王子の名の下に下した命令により、現在、離宮の正面には兵士が配備されていた。
いつでも中に雪崩れ込む勢いで威嚇をしている彼らは、姫巫女の台頭により苦渋を飲まされてきた家門の者達である。
当然、離宮は門を堅く閉じ正面に面した庭には離宮付き衛兵が配置され、互いに睨み合っている状況だった。
そしてイオリ達3人がいるのは、裏庭と呼ばれる小さな庭園を覗ける外壁だ。
ヒューゴの手によってシールドスキルが張られ、人から見え辛く加工している。
かつて、ムネタカがコーラルと共に姫巫女の部屋を覗いた裏戸が存在するのが、こちらの庭園だった。
その裏戸を利用して、続々と貴族達が隠れるように集まって来ているのだ。
それもこれも、抜け穴を作らせたイオリの指示である事を彼等は気付きもしていない。
皆、姫巫女に傾倒した者達で此度の第1王子の動きに不安を覚え、姫巫女に縋りにやって来たのだった。
中には子供まで連れて祈りを捧げる者達までもがいた。
「・・・それで、姫巫女ってのは、まだ目覚めていないんだよな。」
想像以上の心酔ぶりにヒューゴの顔が引き攣っている。
通常の頭の持ち主なら当然の反応だった。
「主が国抜けをした時よりも酷くなってる気がするッス。
あっ・・・。
今、侍女に迎え入れられたのって侯爵の人ッスよ。
奥方までいる・・・あぁいうのが1人いると社交の人集めが楽になるんスよね。」
ーーー本当は穏やかな人柄の老貴族なんスけどね。
ロクは疲れたように眉を下げた。
主人と共に放浪し、苦難を乗り越えてきた彼もまた、この“魅了”騒ぎの被害者でもあった。
リルラによってもたらされた“デザリア”による“ルーシュピケ”への救援の報告はムネタカだけじゃなくロクにとっても胸を熱くした。
何故なら、あの2人が役目をやり遂げたという事だからである。
この“魅了”事件により、主人であるムネタカは心を許す友人を2人も失った。
それはムネタカにとっても同じ事であったのだ。
今、目の前で虚な目をしているグランヌスの貴族達の中にも“魅了”から解放されたとて、今までと同じ生活・・・同じ心情で生活が送れなくなる者達も現れるに違いなかった。
「面倒臭い」が口癖で生きてきたロクも、この数年の国の変化によって、主人の為に生きると決めてから走りっぱなしである。
「王子や姫達は無事ッスかね。」
呟いたロクは自分の言葉に不安が募り、思わずイオリの顔を見つめた。
すると、イオリが何かに気づいて微笑んだ。
ーーーこの人は、こんな時でも笑うのか。
力の抜けたロクの背を突いたヒューゴが空を指をさした。
「どうやら、大丈夫なようだ。」
「えっ?」
思わず振り返ったロクの目にモクモクと上がる白い煙があった。
「あれは・・・。」
「人質の確保の合図だ。
イオリ!」
「了解っ!」
唖然とし、状況が掴めていないロクの目の前でイオリがスナイパーライフを構えた。
呆れたような声を出していたのはムネタカの命を受けた隠密のロクだった。
「きっと全てではないでしょうね。」
同じく覗き込んでいたイオリが面白そうに頷いた。
「あれだけ目立つ噂を流したんだ。
敵に動きがあってもおかしくは無いが・・・。」
ウンザリしたように溜息を吐いたのはヒューゴだ。
ムネタカが第1王子の名の下に下した命令により、現在、離宮の正面には兵士が配備されていた。
いつでも中に雪崩れ込む勢いで威嚇をしている彼らは、姫巫女の台頭により苦渋を飲まされてきた家門の者達である。
当然、離宮は門を堅く閉じ正面に面した庭には離宮付き衛兵が配置され、互いに睨み合っている状況だった。
そしてイオリ達3人がいるのは、裏庭と呼ばれる小さな庭園を覗ける外壁だ。
ヒューゴの手によってシールドスキルが張られ、人から見え辛く加工している。
かつて、ムネタカがコーラルと共に姫巫女の部屋を覗いた裏戸が存在するのが、こちらの庭園だった。
その裏戸を利用して、続々と貴族達が隠れるように集まって来ているのだ。
それもこれも、抜け穴を作らせたイオリの指示である事を彼等は気付きもしていない。
皆、姫巫女に傾倒した者達で此度の第1王子の動きに不安を覚え、姫巫女に縋りにやって来たのだった。
中には子供まで連れて祈りを捧げる者達までもがいた。
「・・・それで、姫巫女ってのは、まだ目覚めていないんだよな。」
想像以上の心酔ぶりにヒューゴの顔が引き攣っている。
通常の頭の持ち主なら当然の反応だった。
「主が国抜けをした時よりも酷くなってる気がするッス。
あっ・・・。
今、侍女に迎え入れられたのって侯爵の人ッスよ。
奥方までいる・・・あぁいうのが1人いると社交の人集めが楽になるんスよね。」
ーーー本当は穏やかな人柄の老貴族なんスけどね。
ロクは疲れたように眉を下げた。
主人と共に放浪し、苦難を乗り越えてきた彼もまた、この“魅了”騒ぎの被害者でもあった。
リルラによってもたらされた“デザリア”による“ルーシュピケ”への救援の報告はムネタカだけじゃなくロクにとっても胸を熱くした。
何故なら、あの2人が役目をやり遂げたという事だからである。
この“魅了”事件により、主人であるムネタカは心を許す友人を2人も失った。
それはムネタカにとっても同じ事であったのだ。
今、目の前で虚な目をしているグランヌスの貴族達の中にも“魅了”から解放されたとて、今までと同じ生活・・・同じ心情で生活が送れなくなる者達も現れるに違いなかった。
「面倒臭い」が口癖で生きてきたロクも、この数年の国の変化によって、主人の為に生きると決めてから走りっぱなしである。
「王子や姫達は無事ッスかね。」
呟いたロクは自分の言葉に不安が募り、思わずイオリの顔を見つめた。
すると、イオリが何かに気づいて微笑んだ。
ーーーこの人は、こんな時でも笑うのか。
力の抜けたロクの背を突いたヒューゴが空を指をさした。
「どうやら、大丈夫なようだ。」
「えっ?」
思わず振り返ったロクの目にモクモクと上がる白い煙があった。
「あれは・・・。」
「人質の確保の合図だ。
イオリ!」
「了解っ!」
唖然とし、状況が掴めていないロクの目の前でイオリがスナイパーライフを構えた。
応援ありがとうございます!
176
お気に入りに追加
9,853
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる