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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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「オモト様っ!」
何かに当てられフラフラと廊下に出たオモトに慌ててやって来た侍女達が声を掛けた。
「如何した?」
「へっ、兵士達が離宮を取り囲んでおりまする!」
「武装した者達が離宮をっ!」
「なんと・・・。」
オモトは驚きを隠せずに周囲を見渡した。
すると、塀の外側に旗や槍などが立ち並んでいるのが見えた。
「登城中の貴族の方々は何をしておるのだ!
姫巫女様を傷つけるなどあってはならん!
あれほど、姫巫女様の恩恵に預かりながら、肝心な時に役に立たんとは・・・。」
「・・・鎮まれ。」
侍女達の叫びを聞いていたのか、ずっと姫巫女の寝所に篭っていたツユクサが姿を現した。
「姫巫女様がお休みの今、離宮を守るのが我らの使命だ。
離宮を囲む兵士とやらも、すぐに手を出してはこないだろう。
王様が姿を見せぬ今、王宮は第1王子の邪心が蔓延ってしまっている。
お優しい姫巫女様は争いを好まれまい。
準備が整い次第、第1王子との話し合いをせねばならんな。
皆、気を引き締めよ。
姫巫女様はグランヌスの光であり、未来を守る御方である。
かの王子が何をしようとも、姫巫女様がいる限り、グランヌスの栄光は消えぬ。」
「「「「「はいっ!」」」」」
それまで、取り乱していた侍女達が力強く返事をした。
それはオモトも同じだった。
《そうだ。
姫巫女様がおわす限り、我らは守られている。》
「オモトよ。
姫巫女様の私室へ、共に参れ。
第1王子との会談の準備じゃ。」
「はい!」
先ほどまで恐れていたツユクサを尊敬の面持ちで見つめたオモトは、颯爽と歩く上司の後に続いた。
「我らは後宮に嵌められたようだな。
王様の姫巫女様への寵愛を憎んでいるのだろう。
脆弱で愚かな者達は強者を妬み、陥れようとする。」
呟くツユクサの言葉にオモトも同調するように頷いた。
「そんな悪しき国を変えられたのは姫巫女様じゃ。
薄汚れた国に光をもたらし、迷える民に夢を見せ、憂いを抱える貴族達を導いた。
神に愛されたというは姫巫女様の事だ。」
「勿論でございます。」
2人は姫巫女の私室に辿り着くと、扉を開け放った。
「第1王子の反乱など、我らにとって赤子が泣き叫んでいるのと同じ事。
哀れな王子・・・再び、膝をつき己の弱さを知る事になるだろう。」
勝手知ったるツユクサは慣れた手つきで仕掛け扉を開いて行った。
オモトにしては初めての部屋の奥に様々な調度品が見えた。
「ツユクサ様・・・これは?」
振り返ったツユクサの生気のない瞳にオモトはビクッとした。
「姫巫女様が大切にされている道具達だ。
王子との話し合いで必要になる。
姫巫女様が目覚めぬ今、頼りになるのは其方だけじゃ。
あの方の為に、私と共に離宮を守っておくれ。」
「・・・勿論でございます。」
オモトはツユクサから1つの指輪を渡された。
「邪心に染まった第1王子の思惑は分かりません。
有事の際には、この指輪の宝石を叩き割るのです。
そうすれば、姫巫女様の守護の恩恵に預かり、姫巫女様のいる所に戻る事が出来ます。
何かあれば、姫巫女様を連れて逃げなさい。」
「ツユクサ様は?」
「私は姫巫女様の為に時間稼ぎをします。
良いですね?
有事の際には躊躇ってはなりませんよ。」
大事な任を与えられたオモトは恐怖よりも興奮が勝り、嬉しそうに指輪を填めた。
光に翳し、微笑むオモトを淀んだ瞳をしたツユクサが見つめているとも知らずに・・・。
何かに当てられフラフラと廊下に出たオモトに慌ててやって来た侍女達が声を掛けた。
「如何した?」
「へっ、兵士達が離宮を取り囲んでおりまする!」
「武装した者達が離宮をっ!」
「なんと・・・。」
オモトは驚きを隠せずに周囲を見渡した。
すると、塀の外側に旗や槍などが立ち並んでいるのが見えた。
「登城中の貴族の方々は何をしておるのだ!
姫巫女様を傷つけるなどあってはならん!
あれほど、姫巫女様の恩恵に預かりながら、肝心な時に役に立たんとは・・・。」
「・・・鎮まれ。」
侍女達の叫びを聞いていたのか、ずっと姫巫女の寝所に篭っていたツユクサが姿を現した。
「姫巫女様がお休みの今、離宮を守るのが我らの使命だ。
離宮を囲む兵士とやらも、すぐに手を出してはこないだろう。
王様が姿を見せぬ今、王宮は第1王子の邪心が蔓延ってしまっている。
お優しい姫巫女様は争いを好まれまい。
準備が整い次第、第1王子との話し合いをせねばならんな。
皆、気を引き締めよ。
姫巫女様はグランヌスの光であり、未来を守る御方である。
かの王子が何をしようとも、姫巫女様がいる限り、グランヌスの栄光は消えぬ。」
「「「「「はいっ!」」」」」
それまで、取り乱していた侍女達が力強く返事をした。
それはオモトも同じだった。
《そうだ。
姫巫女様がおわす限り、我らは守られている。》
「オモトよ。
姫巫女様の私室へ、共に参れ。
第1王子との会談の準備じゃ。」
「はい!」
先ほどまで恐れていたツユクサを尊敬の面持ちで見つめたオモトは、颯爽と歩く上司の後に続いた。
「我らは後宮に嵌められたようだな。
王様の姫巫女様への寵愛を憎んでいるのだろう。
脆弱で愚かな者達は強者を妬み、陥れようとする。」
呟くツユクサの言葉にオモトも同調するように頷いた。
「そんな悪しき国を変えられたのは姫巫女様じゃ。
薄汚れた国に光をもたらし、迷える民に夢を見せ、憂いを抱える貴族達を導いた。
神に愛されたというは姫巫女様の事だ。」
「勿論でございます。」
2人は姫巫女の私室に辿り着くと、扉を開け放った。
「第1王子の反乱など、我らにとって赤子が泣き叫んでいるのと同じ事。
哀れな王子・・・再び、膝をつき己の弱さを知る事になるだろう。」
勝手知ったるツユクサは慣れた手つきで仕掛け扉を開いて行った。
オモトにしては初めての部屋の奥に様々な調度品が見えた。
「ツユクサ様・・・これは?」
振り返ったツユクサの生気のない瞳にオモトはビクッとした。
「姫巫女様が大切にされている道具達だ。
王子との話し合いで必要になる。
姫巫女様が目覚めぬ今、頼りになるのは其方だけじゃ。
あの方の為に、私と共に離宮を守っておくれ。」
「・・・勿論でございます。」
オモトはツユクサから1つの指輪を渡された。
「邪心に染まった第1王子の思惑は分かりません。
有事の際には、この指輪の宝石を叩き割るのです。
そうすれば、姫巫女様の守護の恩恵に預かり、姫巫女様のいる所に戻る事が出来ます。
何かあれば、姫巫女様を連れて逃げなさい。」
「ツユクサ様は?」
「私は姫巫女様の為に時間稼ぎをします。
良いですね?
有事の際には躊躇ってはなりませんよ。」
大事な任を与えられたオモトは恐怖よりも興奮が勝り、嬉しそうに指輪を填めた。
光に翳し、微笑むオモトを淀んだ瞳をしたツユクサが見つめているとも知らずに・・・。
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