続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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「戻りました!」

 いつもの様な笑顔で戻ってきたイオリを迎え入れた面々の顔は険しかった。

「あれ?
 問題ありました?」

 呑気なイオリにヒューゴが溜息を吐く。

「後宮に刺客が向けられた。
 それがまた“ガレー”で取り逃した男だ。
 あそこではハマジィと名乗っていたが、偽名だとよ。」

「捕まえたんですよね?」

「あぁ。
 アオイ様とロクさんとリルラがな。」

「じゃあ、大丈夫ですね。」

 イオリは3人を讃えるように微笑んだ。

「イオリ様。
 先ほど、デザリアの方にも取り逃した男を確保したと連絡を入れました。
 その際に、“デザリア”から“ルーシュピケ”に魔法使いの軍隊を加勢に送ったとの事です。」

「間に合いそうですか?」

 “ルーシュピケ”の自然を傷つけられる恐れに眉を顰めたイオリにソウビ王妃が頷いた。

「とりあえず、安心して欲しい。
 王が“魅了”から解放された後に直ちに宰相が“ルーシュピケ”討伐隊に撤退命令を発令した。」

 安堵するイオリにソウビ王妃は顔を顰めた。

「ただ、姫巫女の信派が一定数紛れ込んでいる為に現地では揉めているそうだ。
 こちらも、出来るだけ早く解決しなければ余計な争いが生まれてしまう。」

「なるほど・・・。」

 ソウビ王妃の話に考え込むイオリにヒューゴが声をかけた。

「それで?
 お前は何しに行ったんだ?」

 用件も言わずに飛び出したイオリに不思議そうな視線が集まった。

「あぁ、あのですね。
 “魅了”にかかった人間とかからなかった人間の違いが分かりました。」

 嬉しそうに話すイオリを静寂が包み込んだ。

「ん?」

 もっと喜んでくれるかと思ったのに違った反応が帰ってきてイオリは首を傾げた。

「“魅了”の影響力の広がり方が変だって言いませんでした?」

「それが分かったんですか?」

 恐る恐る問いかけるムネタカにイオリはニッコリと頷いた。

「ラーヴァですよ。ラーヴァ。
 ラーヴァが好んで使う源泉が引かれている温泉を利用している人は、ラーヴァの守護の恩恵に預かっているんです。
 この国には5つの源泉があるんですよね?
 ラーヴァが好んで使うのは大滝の湯と呼ばれる1つの源泉だけです。
 後宮は大滝の湯から温泉を引いていますが、王様の私室に引かれている温泉は別の源泉です。
 王妃様を含めた後宮の人達が“魅了”されていなかったのはラーヴァのお陰なんですよ。」

 驚きすぎて何も言えなくなっていた一同の中、カンスケ爺やが口を開いた。

「それじゃ町の連中も同じって事かい?」

「その筈です。」

 自信を持ったイオリの瞳にカンスケ爺やは溜息を吐いた。

「なんてこった。
 温泉によって違いがあったのか・・・。
 よく気づいたもんだな。」

 褒められて、照れたように微笑むイオリの肩をヒューゴが叩いた。

「こいつは、変な所で鼻が効くんです。
 感が良いと言うか、非常識というか・・・。」

「違いない。」

 苦笑いするカンスケ爺やの隣で王妃であるソウビが悪い顔で笑みを作った。

「今まで、誰が“魅了”されて誰がされていないのか分からなかったが、これでハッキリするという事か。
 だとしたら、大滝の湯を利用していて姫巫女陣営にいる輩は不忠者という事で間違いないな。」

「あっ。」

 そこまで頭を回していなかったイオリはソウビ王妃の考察に感心した。

「確かに。」

 イオリが頷いたのを見てとると、ソウビ王妃はムネタカに頷いた。

「炙り出せ。」

 反撃の準備が始まる。




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