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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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「あっ!リルラだぁ!」
庭で遊んでいたパティが廊下を歩いてくるリルラに気が付き、笑顔で手を振っている。
殺伐とした戦いの後に聞く、子供の声に癒される瞬間だった。
「どこ行ってたの?」
無邪気に駆け寄って来たパティにリルラは微笑んだ。
「ちょっと、そこまでね。
みんなは何してるの?」
「朝ごはん食べて、追いかけっこして遊んでたんだけどさ。
イオリがラーヴァとゼンちゃん連れて、どっか行っちゃったんだよね。」
「どこかに行った?」
目を見張るリルラの肩越しにロクが頭を抱えていた。
「うん。
源泉?っていうのが気になるみたい。
ヒューゴが、すぐに帰って来るって言ってるから大丈夫だよ。」
リルラはパティの手を取り、王妃の元に歩いて行った。
「姉様っ!」
側妃・アオイが抱きつくと王妃・ソウビは呆れたように眉を下げて微笑んだ。
「何も其方が行く事はあるまい?
・・・ドブネズミはどうした?」
「捕獲しました。
そのご報告を・・・。」
ロクとリルラが頭を下げると、ソウビ妃は納得したように頷いた。
キョトンとするパティの頭を撫でると、ソウビ妃は庭にいた2人の若者に声をかけた。
「子供達はドワーフ達と遊んでおれ。
ムネタカ。ヒューゴ。
其方達も参れ。」
「はい。」
アウラに子供達の事を頼むとヒューゴはソウビ妃の後を追った。
____________
「ねぇ。イオリ、どこ行くの?」
鼻を利かすイオリの後をラーヴァが不思議そうな顔をしながらついて行く。
「うーん。
こっちかな?いや、あっちだな。」
『・・・臭い。』
夢中で何かを追い求めるイオリの後でゼンが顔を引き攣らせている。
ゼンにとって、グランヌスに全体を覆う硫黄の匂いが鼻を刺激して辛いのだ。
「ここだ・・・。
ラーヴァ分かる?
この源泉は?」
イオリが何をしたいのか分からないラーヴァであったが、ボコボコと沸騰する湯を掬い匂いを嗅いだ。
「・・・これは違う。
私の好きな源泉の湯じゃないね。」
「じゃあ、次!」
『イオリ!
一体何を探してるの?』
たまらずに聞いたゼンを振り返ると、珍しく顔を高揚させたイオリがいた。
「後宮にはラーヴァの好きな源泉が引かれているけど、王の私室に引かれている湯はラーヴァが好きじゃない源泉なんだ!」
興奮気味のイオリにラーヴァとゼンが顔を見合わせた。
「だから?」
首を傾げるラーヴァに同調するようにゼンが頷いた。
『それが何?』
「最初から気になってたんだよ。
言ったろう?
なんで、“魅了”にかかっている人間とかからない人間がいるんだろうって。
それは王宮に限らず、グランヌスの町でも見られる事だよ。
共通点は何だろうって、ずっと思ってた。」
足早に歩くイオリの後を2人は追いかけた。
「やっと分かった!
ラーヴァだよ!」
「私?」
心当たりのないラーヴァが困ったように立ち止まった。
「ラーヴァが利用する源泉が引かれている風呂を日常的に利用している人は“魅了”にかかっていない。」
言い切ったイオリに目を丸くしたラーヴァだった。
「期せずして、その人達はラーヴァの守護の恩恵を受けているんだよ。」
謎が解けて、晴々とした顔のイオリはゼンとラーヴァを振り返った。
「後宮に戻ろう。
みんなに教えなくっちゃ。」
庭で遊んでいたパティが廊下を歩いてくるリルラに気が付き、笑顔で手を振っている。
殺伐とした戦いの後に聞く、子供の声に癒される瞬間だった。
「どこ行ってたの?」
無邪気に駆け寄って来たパティにリルラは微笑んだ。
「ちょっと、そこまでね。
みんなは何してるの?」
「朝ごはん食べて、追いかけっこして遊んでたんだけどさ。
イオリがラーヴァとゼンちゃん連れて、どっか行っちゃったんだよね。」
「どこかに行った?」
目を見張るリルラの肩越しにロクが頭を抱えていた。
「うん。
源泉?っていうのが気になるみたい。
ヒューゴが、すぐに帰って来るって言ってるから大丈夫だよ。」
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・・・ドブネズミはどうした?」
「捕獲しました。
そのご報告を・・・。」
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「子供達はドワーフ達と遊んでおれ。
ムネタカ。ヒューゴ。
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「はい。」
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「ねぇ。イオリ、どこ行くの?」
鼻を利かすイオリの後をラーヴァが不思議そうな顔をしながらついて行く。
「うーん。
こっちかな?いや、あっちだな。」
『・・・臭い。』
夢中で何かを追い求めるイオリの後でゼンが顔を引き攣らせている。
ゼンにとって、グランヌスに全体を覆う硫黄の匂いが鼻を刺激して辛いのだ。
「ここだ・・・。
ラーヴァ分かる?
この源泉は?」
イオリが何をしたいのか分からないラーヴァであったが、ボコボコと沸騰する湯を掬い匂いを嗅いだ。
「・・・これは違う。
私の好きな源泉の湯じゃないね。」
「じゃあ、次!」
『イオリ!
一体何を探してるの?』
たまらずに聞いたゼンを振り返ると、珍しく顔を高揚させたイオリがいた。
「後宮にはラーヴァの好きな源泉が引かれているけど、王の私室に引かれている湯はラーヴァが好きじゃない源泉なんだ!」
興奮気味のイオリにラーヴァとゼンが顔を見合わせた。
「だから?」
首を傾げるラーヴァに同調するようにゼンが頷いた。
『それが何?』
「最初から気になってたんだよ。
言ったろう?
なんで、“魅了”にかかっている人間とかからない人間がいるんだろうって。
それは王宮に限らず、グランヌスの町でも見られる事だよ。
共通点は何だろうって、ずっと思ってた。」
足早に歩くイオリの後を2人は追いかけた。
「やっと分かった!
ラーヴァだよ!」
「私?」
心当たりのないラーヴァが困ったように立ち止まった。
「ラーヴァが利用する源泉が引かれている風呂を日常的に利用している人は“魅了”にかかっていない。」
言い切ったイオリに目を丸くしたラーヴァだった。
「期せずして、その人達はラーヴァの守護の恩恵を受けているんだよ。」
謎が解けて、晴々とした顔のイオリはゼンとラーヴァを振り返った。
「後宮に戻ろう。
みんなに教えなくっちゃ。」
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