続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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「ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪」

 「「「「ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
     ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪」」」」

「飲めや♪歌え♪
 楽しめ♪笑え♪」

 「「「「ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
     ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪」」」」

 ラーヴァと子供達の陽気な歌声が聞こえてくる。
 その周りではドワーフ達が嬉しそうに踊っていた。

「昨日までの静かさは、何処へやらだな。」

 王妃・ソウビの笑みにムネタカが嬉しそうに微笑んだ。

「ソウビよ。
 アヤツの様子はどうだ?」

 カンスケ爺やの問いにソウビ王妃は口元を緩めた。
 父がアヤツというのが夫である国王である事が分かっているのだ。

「暫く眠ったら目覚める事でしょう。
 元来、丈夫な体なのです。
 あれしきの事で、身を縮こまらせる事はないはずです。」

「そうか。
 あれも、思いの外、純粋な男だったな。」

 “魅了”の力に屈した国王に苦笑するとカンスケ爺やは室内に入って行った。

「離宮への情報漏洩は宰相が画策しているので、父上は王の寝室にいると思っているはずです。
 この数年、彼らには助けられています。」

 ムネタカは王宮にいる数少ない心許せる男・・・宰相であるケンショー・オオスギへの信頼を口にした。

 この1日で敵を掻い潜り帰郷し、国王トウカ・ノブタカ・ショーグンを“魅了”から解放したかと思えば、火龍であるラーヴァの出現と目まぐるしかった。

 そのラーヴァと言えば、ドワーフとの再会の際こそ親のような慈愛の姿をみせたが、今は子供のように、はしゃいでいた。

「まるで幼子のようだ。」

 微笑む母に、ムネタカも笑顔を見せた。

「我々のようにしがらみが無い分、純粋なのでしょう。」

 太陽が昇っているのに関わらず、分厚い雲に覆われたグランヌス。
 絶えず噴火の危険に晒されながらも、今日まで無事を確保できていたのはラーヴァのお陰だった。

「ねぇ、ラーヴァ。」

「なんだい?ナギ。」

 楽しそうに話す2人の様子に周囲はホッコリした。

「ラーヴァは溶岩のお風呂に入るのが好きなの?」

「うん。好きだよ。
 でも、溶岩浴だけじゃなくて温泉の源泉にも浸かる事があるよ。」

「源泉?
 後宮のお庭は源泉が引かれてるって言ってたよ。」

 ナギが指差すとラーヴァは熱いのも気にせずに、ボコボコと噴出している池の湯を掬い上げた。

 クンクンと匂いを嗅ぐとラーヴァは頷いた。

「うん。
 この温泉は私が好きな源泉と繋がってるね。」

「ラーヴァ、他にも源泉ってあるんですか?」

 聞き耳を立てていたイオリが問いかけるとラーヴァは嬉しそうに振り向いた。

「うん。
 この火山には8つの溶岩溜まりと5つの源泉があるよ。」

「ラーヴァが入る源泉は1つですか?」

 何かを確かめるようなイオリにキョトンとするとラーヴァは静かに頷いた。

「そうだよ。
 私は溶岩に浸かる方が好きだもの。
 でも、大滝の湯は長年通っている大好きな源泉さ。」

 ラーヴァの話を聞いてイオリが「まさか・・・。」と呟いた。

「ラーヴァ!
 王宮に存在する源泉の確認に行きましょう。」

 イオリが立ち上がったのを見て、ラーヴァが首を傾げた。

「なんで?」

 それは、他の人間も同じ事だった。

 ゼンとラーヴァを連れ立ったイオリが慌てたように飛び出て行くのを惚けるように見ていた一同の中、ただ1人ヒューゴだけは理解した様だった。

「何かに気づいたんでしょう。
 気が済んだら帰ってきますよ。」

 いつもの事だと苦笑するヒューゴに釣られ、笑う一同だった。 
 
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