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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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 あの日、ラーヴァは里の人間達と和解した。
 ラーヴァは、この気の良い友人が住みやすいように火山の熱から人里を守る守護を施した。
 絶対神リュオン様から授かった力を利用して、多少の作物も育つように手を貸した。

 ラーヴァの恩恵を得た里は“グランヌス”と名を改め、国を造り、火龍との絆を深めていった。

「おい、ラーヴァ。
 今日も鉱石探しに行くぞ。
 一緒に来るか?」

『うん。
 ガンダルライドウォッシュボーン。
 一緒に行くよ。』

 ラーヴァは友の側で笑う日々が幸せだったのだ・・・。

____________

 ーーーあれから数千年後。

「火龍様といえば、ドワーフ達に会わせてあげたいものですね。」

 ムネタカの一言がラーヴァの心を跳ね上げさせる。

「・・・ドワーフ帰ってきた?」

 恐る恐る聞くラーヴァにイオリは微笑んだ。

「4人のドワーフが仲間達の意思を継いで火龍様から貰った炎を持って逃げていたんです。
 グランヌスに来る途中で出会い、一緒に国入りしました。
 カンスケ爺やさんのお陰で、今は安全な場所にいますよ。」

 それを聞くと、ラーヴァは嬉しそうにカンスケ爺やを持ち上げた。

「爺や!
 ありがとう。」

「火龍様が喜ばれる事が1つ出来ましたな。」

 カンスケ爺やは孫を愛でる好々爺の様に顔を綻ばせた。

 ラーヴァは友と同族のドワーフを愛していた。
 嘗ての様に姿を現さず交流しなくとも、ドワーフ達への愛情と守護はやめなかった。

 グランヌスのドワーフ達は仕事熱心だった。
 
 鉱石を掘る者、製錬する者、魔道具を作る者・・・。
 中でもグランヌスは剣術の国であった。
 王侯貴族から庶民まで自分達の武器を所望するこの国では、武防具を作り出す職人が大勢いた。

トンッ!テンッ!カカンッ!
トンッ!カカンッ!

トンッ!テンッ!カカンッ!
トンッ!カカンッ!

 ドワーフ達が織りなす音はラーヴァの大好きな音色だった。
 
 今やいなくなった友を彷彿させるドワーフ・・・。

 そのドワーフ達の声が聞こえなくなった。
 
 ラーヴァは人里に降りた。
 硫黄や硝煙の匂いに混じり、気分の悪い匂いがグランヌスの国を覆っていた。

 ラーヴァの好きなドワーフ達の姿が見えない。

 ーーーどこに行ったの?

 ーーーねぇ、ドワーフはどこ?

 すれ違う人間達の虚な目にウンザリとした。

 ーーー私の好きなグランヌスは、どうしちゃったんだろう? 
    嘘の笑顔、嘘の怒り、嘘の力・・・。
    何で、こんなに気持ちが悪いの?

 戸惑い困惑するラーヴァを心配して龍族の仲間達が気にかけてきた。
 
《神の愛し子がやってくる・・・。》

 懐かしい空の王の声にラーヴァは希望を見た。
 
 やって来た、愛し子はラーヴァにとっても愛らしい人族だった。

「イオリ、今ここに君がいて私は幸せだよ。」

「俺もラーヴァに会えて嬉しいですよ。」

 久々の幸福感にラーヴァは喜びを得るのだった。


「エルフの小僧っ!
 ワシらを何処へ連れて行く!!」

 ドワーフの声が後宮の庭に響き渡ったのは間もなくの事だった。
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