続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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 火山の中腹で火龍とドワーフが会話を繰り広げるという、不思議な光景があった。 

 ラーヴァはこの際だとばかりに、思いの丈をガンダルライドウォッシュボーンにぶつけた。

『私はね。
 静かな山が好きなんだ。
 それなのに、いつの間にか人が増えてきて煩いんだ。』

「あぁ、そりゃ悪かったな。
 この山はお前さんの住処だったんだな。」

 人族と同じように移住してきたガンダルライドウォッシュボーンは申し訳なさそうに眉を下げた。

 ガンダルライドウォッシュボーンは何故、人族が過酷な火山に住もうとしたのかを話し始めた。
 納得しきれない顔で、ラーヴァは渋々耳を傾ける。

『ガンダルライドウォッシュボーンは恩人だから、火山にいても良いよ。
 さっきの石も欲しい?』

「良いのか?
 全部、希少な石だぞ。」

『いいよ。
 私にとって、それは転がった石と同じだからね。
 ねー、ガンダルライドウォッシュボーン。』

「何だ?」

 アレキサンドライトなどの滅多に手に入らない鉱石を転がった石と言うラーヴァにガンダルライドウォッシュボーンは笑った。

『あの、煩い音は何なの?』

「煩い音?」

 耳を澄ませば、収穫祭の太鼓の音が聞こえてきた。

「おぉ、収穫祭の音だな。」

『収穫祭って何?
 毎年、この時期に煩いんだ。
 今日だって、脅かして邪魔してやろうと思ってたら石を踏んじゃったんだよ。』

 脅かしてやろうと思ってと気軽に言うラーヴァにガンダルライドウォッシュボーンは驚いた。

「お前、何しようとしてんだよ。
 俺達にとって収穫祭ってのは1年を生き抜いた祝いの日なんだよ。」

『・・・祝いの日?
 そんなに火山で暮らすのが辛いの?』

「過酷だな。
 1番は食い物が問題だ。
 仲間達が外から手に入れた食いもんを皆んなで分けたり、畑も作ったりしているが、育ち難い。
 まぁ、大変なんだ。」

 ラーヴァは、やっぱり人間達は馬鹿だと思った。
 それなのに、ガンダルライドウォッシュボーンのニカッとした笑顔にラーヴァは目を奪われた。

「それでも、俺はこの土地が好きだ。
 こうやって、美しい鉱石を見つけられる場所なんて、世界中探したってないさ。」

『・・・そう。』

 すると、ガンダルライドウォッシュボーンは思いついたようにラーヴァを見上げた。

「ラーヴァよ。
 お前も収穫祭に来たらどうだ?」

『えぇぇ?!』

「お前と話していて気がついた!
 お前はワシ達の事を知らないし、俺達もお前の事を知らない。
 一緒に楽しもう。
 祭りに参加したら煩いなんて気にならん。」

 困惑するラーヴァの気持ちなど、お構いなしにガンダルライドウォッシュボーンは満面の笑みを浮かべたのだった。

『本当に?』

「本当に!」

『本当の本当に?』

「本当の本当に!」

 ガンダルライドウォッシュボーンはラーヴァの大きな体に喝を入れると、共に里に向かった。

 人里は火龍の出現に大騒ぎになったが、ガンダルライドウォッシュボーンの説得に人間達はラーヴァを暖かく迎え入れた。

「さぁ、ラーヴァよ。
 収穫祭だ。
 飲めや、歌え♪
 楽しめ♪笑え♪」

『何その、変な歌・・・クククッ。
 クククッ。
 アハハハハ。』

 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 
『人間って、変なの。
 でも、何だか楽しい。』

 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪
 ドンドン♪ ドドン♪ ドンドドン♪

「ラーヴァ。
 楽しいか?」

 ガンダルライドウォッシュボーンは大きな樽に酒を注ぎ、ラーヴァと共に飲み干した。
 当初は戸惑っていたラーヴァであったが、陽気に笑う声に釣られて、自然と笑顔になった。

『ガンダルライドウォッシュボーン。
 楽しいよ。
 人は脆くて愚かだけど、私は祭りが気に入ったよ。』

 この日、ラーヴァは静寂を手放した代わりに友を得たのだった。

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