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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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ガンダルライドウォッシュボーン。
この長ったらしい名前のドワーフには、いつくかの逸話がある。
牛を持ち上げる程の怪力で声が大きく、物作りよりも鉱山狂いで、鉱石を掘る事に関しては誰にも負けない。
豪快な男で、大酒飲み。
乱闘騒ぎがあった時には、酒飲み比べで対決し23人もの男を酔いつぶしたらしい。
そんなドワーフが、この日も鉱石にありつこうと火山を登っていた。
「もう少しで収穫祭か・・・。
1年経つのが早いもんだ。」
今だに、生きてくのが精一杯の火山での暮らしである。
それでも、また1年生きる事が出来た。
グランヌスで暮らす者達にとって、収穫祭は大切な日だった。
ギャァァァ!!
突如として、獣の叫び声が響いた。
空気が震え、山が怯えているようだ。
連れてきた山羊達もが小刻みに震えている。
「なんだ?」
ガンダルライドウォッシュボーンが辺りを見渡していると、山が地響きを上げて揺れた。
ダンダン ダダン ダンダダン
『痛いよぉぉ。
痛いよぉぉ。』
遠くの方から、誰かが泣いている声がした。
「こんな、山で誰が何をしてるんだ?
おーい。おーい。
泣いてるのは誰だい?」
蒸気で前が言えなくなっているのも構わずに、声を張り上げたガンダルライドウォッシュボーンは耳を澄ませた。
『痛いよぉぉ。
岩を踏んじゃったんだぁ。
痛いよぉぉ。
とってよぉぉ。』
「岩を踏んで痛い?
何言ってやがんだ?
まぁ、しょうがねぇ。
ちょっと待ってろ。
助けてやるから・・・。」
助けてやると、言いかけたガンダルライドウォッシュボーンの前に降り立ったのは大きな大きな火龍だった。
「ヒヤァァァ。
火龍だぁぁぁ。」
まさか声の主が火龍と思っていなかったガンダルライドウォッシュボーンは、腰が抜かしそうな勢いだった。
『小さい人間。
私の足の裏の石をとっておくれよ。
痛くて、敵わないんだ。』
さっきまで、脅かしてやろうと思っていたのも忘れて火龍のラーヴァは頼み込んだ。
反して、怯えていたガンダルライドウォッシュボーンは反骨心剥き出しで怒り出した。
「誰が、小さい人間だ!
ワシは立派なドワーフだ!
争いばかりしよる人族と同じにするな!」
ドワーフと名乗った、小さな人にキョトンとするとラーヴァ頷いた。
『うん、分かった。ごめんなさい。』
「良いって事よ。
ほら、火龍よ。
足を出してみろ。
なんだ、これ!?」
ガンダルライドウォッシュボーンが驚くのも無理はなかった。
素直に差し出した火龍の足の裏には、様々な鉱石が刺さっていたのだ。
「こいつは、痛てぇだろうな。
どれもこれも、良質な鉱石だ。
滅多に拝めねぇ、アレクサンドライトまであるじゃねーか。
よし。待ってろ。」
そうして、ガンダルライドウォッシュボーンは1つ1つの鉱石をとってやり、薬を塗ってやった。
「さぁ、どうだ?」
『・・・うん。
痛くないよ。
ありがとう。
小さ・・・ドワーフ。』
火龍が再び小さいと言おうとした事に苦笑すると、ドワーフは胸を張った。
「ワシの名前はガンダルライドウォッシュボーン。
1字たりとも略すんじゃねーぞ。
火龍のお前さんの名前は何て言う?」
『私の名前・・・他の龍族は私の事をラーヴァと呼ぶよ。
ガンダルライドウォッシュボーン。』
「そうか、ラーヴァか。
ワシは、鉱石を採るのが仕事だ。
時折、山に登ってくるんだ。
ラーヴァよ。仲良くしよう。」
仲良くしようと言われたラーヴァは戸惑った。
別に仲良くしようと思わなかったからだ。
『仲良くしないと駄目?』
「仲良くした方が楽しいだろうが。」
ラーヴァとガンダルライドウォッシュボーンの押し問答はまだまだ続いた。
この長ったらしい名前のドワーフには、いつくかの逸話がある。
牛を持ち上げる程の怪力で声が大きく、物作りよりも鉱山狂いで、鉱石を掘る事に関しては誰にも負けない。
豪快な男で、大酒飲み。
乱闘騒ぎがあった時には、酒飲み比べで対決し23人もの男を酔いつぶしたらしい。
そんなドワーフが、この日も鉱石にありつこうと火山を登っていた。
「もう少しで収穫祭か・・・。
1年経つのが早いもんだ。」
今だに、生きてくのが精一杯の火山での暮らしである。
それでも、また1年生きる事が出来た。
グランヌスで暮らす者達にとって、収穫祭は大切な日だった。
ギャァァァ!!
突如として、獣の叫び声が響いた。
空気が震え、山が怯えているようだ。
連れてきた山羊達もが小刻みに震えている。
「なんだ?」
ガンダルライドウォッシュボーンが辺りを見渡していると、山が地響きを上げて揺れた。
ダンダン ダダン ダンダダン
『痛いよぉぉ。
痛いよぉぉ。』
遠くの方から、誰かが泣いている声がした。
「こんな、山で誰が何をしてるんだ?
おーい。おーい。
泣いてるのは誰だい?」
蒸気で前が言えなくなっているのも構わずに、声を張り上げたガンダルライドウォッシュボーンは耳を澄ませた。
『痛いよぉぉ。
岩を踏んじゃったんだぁ。
痛いよぉぉ。
とってよぉぉ。』
「岩を踏んで痛い?
何言ってやがんだ?
まぁ、しょうがねぇ。
ちょっと待ってろ。
助けてやるから・・・。」
助けてやると、言いかけたガンダルライドウォッシュボーンの前に降り立ったのは大きな大きな火龍だった。
「ヒヤァァァ。
火龍だぁぁぁ。」
まさか声の主が火龍と思っていなかったガンダルライドウォッシュボーンは、腰が抜かしそうな勢いだった。
『小さい人間。
私の足の裏の石をとっておくれよ。
痛くて、敵わないんだ。』
さっきまで、脅かしてやろうと思っていたのも忘れて火龍のラーヴァは頼み込んだ。
反して、怯えていたガンダルライドウォッシュボーンは反骨心剥き出しで怒り出した。
「誰が、小さい人間だ!
ワシは立派なドワーフだ!
争いばかりしよる人族と同じにするな!」
ドワーフと名乗った、小さな人にキョトンとするとラーヴァ頷いた。
『うん、分かった。ごめんなさい。』
「良いって事よ。
ほら、火龍よ。
足を出してみろ。
なんだ、これ!?」
ガンダルライドウォッシュボーンが驚くのも無理はなかった。
素直に差し出した火龍の足の裏には、様々な鉱石が刺さっていたのだ。
「こいつは、痛てぇだろうな。
どれもこれも、良質な鉱石だ。
滅多に拝めねぇ、アレクサンドライトまであるじゃねーか。
よし。待ってろ。」
そうして、ガンダルライドウォッシュボーンは1つ1つの鉱石をとってやり、薬を塗ってやった。
「さぁ、どうだ?」
『・・・うん。
痛くないよ。
ありがとう。
小さ・・・ドワーフ。』
火龍が再び小さいと言おうとした事に苦笑すると、ドワーフは胸を張った。
「ワシの名前はガンダルライドウォッシュボーン。
1字たりとも略すんじゃねーぞ。
火龍のお前さんの名前は何て言う?」
『私の名前・・・他の龍族は私の事をラーヴァと呼ぶよ。
ガンダルライドウォッシュボーン。』
「そうか、ラーヴァか。
ワシは、鉱石を採るのが仕事だ。
時折、山に登ってくるんだ。
ラーヴァよ。仲良くしよう。」
仲良くしようと言われたラーヴァは戸惑った。
別に仲良くしようと思わなかったからだ。
『仲良くしないと駄目?』
「仲良くした方が楽しいだろうが。」
ラーヴァとガンダルライドウォッシュボーンの押し問答はまだまだ続いた。
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