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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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「一体、何をしとる?」
後宮の庭でキャンプまがいな事をしてる上に、呑気に食事をしているイオリ達にカンスケ爺やの呆れ声が聞こえた。
「爺やさんも、どうですか?
源泉で茹でた卵ですよ。」
「何、あぶねー事してんだよ。」
そう言いながらも、勧められた椅子に座るカンスケ爺やだった。
「こっちから、茹で卵。プルンプルンの温泉卵。」
茶色いのが、スコッチエッグですよ。」
「スコッテ・・・何だって?」
眉間に皺を寄せるカンスケ爺やを子供達がクスクスと笑った。
「スコッチエッグです。
半熟卵をひき肉で覆って、乾燥したパンの粉を塗して油で揚げてるんですよ。
ソースをかけて食べると美味しいです。
でも、爺やさんは、こっちの出汁の入った温泉卵の方が好きかもしれませんね。」
イオリが勧める器と茶色い揚げ玉を暫く見比べると、カンスケ爺やは
「両方よこせ。」
と、言い。
再び子供達を笑わせるのだった。
「うん、こりゃ美味い。
源泉で茹でたと言ったか?」
温泉卵を平らげたカンスケ爺やは驚愕した様に、ボコボコと灼熱を感じる池を見つめた。
「はい。
熱があれば良いわけですから、蒸気で食材を蒸す事も出来ますよ。」
「源泉はな、鉄が溶けたりする程熱いから危険というのが常識だ。」
「鉄が溶ける?
それは熱だけが問題じゃなくて酸の所為なんじゃないですか?」
「酸?」
聞いた事がなかったのだろう。
カンスケ爺やは首を捻った。
「温泉は湯の成分によっても、効能が変わるんです。
肌がスベスベになる温泉もあれば、内蔵の疲れに効く温泉もありますよ。
俺も詳しい訳じゃないですけど、酸が強すぎると鉄も溶かすって聞いたことがありますよ。
グランヌスにある幾つかが、強酸性の高い源泉って事なんじゃないですか?」
「ふん。そんな事がな・・・。」
そこで初めてカンスケ爺やの視線が、先ほどから食べる手を止めない真っ赤な長い髪の男に移った。
「で、コイツは誰なんだ?」
皿いっぱいに作って貰ったスコッチエッグを嬉しそうに頬張っていた男はキョトンと首を傾げた。
「パティの恩人!」
食い気が強いパティが珍しく、男に温泉卵を差し出している。
それは兄であるスコルも同じで、先程から甲斐甲斐しくもてなしている様子が見えた。
「・・・王宮の人じゃないんですか?」
心配そうに聞いているのはヒューゴだった。
彼とて、此処が何処だか忘れていない。
簡単に入る事が出来ないのに気負う事なく現れた男を王宮の関係者だと思っていたのだ。
「知らん顔だな・・・。」
カンスケ爺やの目も徐々に厳しくなっていく。
「あぁ、彼なら大丈夫ですよ。」
そんな中、1人困った様に笑うイオリが頬を掻いた。
「知り合いか?」
訝しげるヒューゴに肩を竦めると、イオリは腰バックから水筒を取り出すとコップに注いだ。
「以前、スカイヤが気に入った酒です。
1杯、如何ですか?
火龍様。」
「「火龍様?」」
ヒューゴとカンスケ爺やの声が重なり、ギョッとして男を見つめた。
「へー。スカイヤが・・・。
うん。貰う。
ありがとう。稀人。」
そして、男はイオリの差し出したコップを一気に飲み干したのだった。
後宮の庭でキャンプまがいな事をしてる上に、呑気に食事をしているイオリ達にカンスケ爺やの呆れ声が聞こえた。
「爺やさんも、どうですか?
源泉で茹でた卵ですよ。」
「何、あぶねー事してんだよ。」
そう言いながらも、勧められた椅子に座るカンスケ爺やだった。
「こっちから、茹で卵。プルンプルンの温泉卵。」
茶色いのが、スコッチエッグですよ。」
「スコッテ・・・何だって?」
眉間に皺を寄せるカンスケ爺やを子供達がクスクスと笑った。
「スコッチエッグです。
半熟卵をひき肉で覆って、乾燥したパンの粉を塗して油で揚げてるんですよ。
ソースをかけて食べると美味しいです。
でも、爺やさんは、こっちの出汁の入った温泉卵の方が好きかもしれませんね。」
イオリが勧める器と茶色い揚げ玉を暫く見比べると、カンスケ爺やは
「両方よこせ。」
と、言い。
再び子供達を笑わせるのだった。
「うん、こりゃ美味い。
源泉で茹でたと言ったか?」
温泉卵を平らげたカンスケ爺やは驚愕した様に、ボコボコと灼熱を感じる池を見つめた。
「はい。
熱があれば良いわけですから、蒸気で食材を蒸す事も出来ますよ。」
「源泉はな、鉄が溶けたりする程熱いから危険というのが常識だ。」
「鉄が溶ける?
それは熱だけが問題じゃなくて酸の所為なんじゃないですか?」
「酸?」
聞いた事がなかったのだろう。
カンスケ爺やは首を捻った。
「温泉は湯の成分によっても、効能が変わるんです。
肌がスベスベになる温泉もあれば、内蔵の疲れに効く温泉もありますよ。
俺も詳しい訳じゃないですけど、酸が強すぎると鉄も溶かすって聞いたことがありますよ。
グランヌスにある幾つかが、強酸性の高い源泉って事なんじゃないですか?」
「ふん。そんな事がな・・・。」
そこで初めてカンスケ爺やの視線が、先ほどから食べる手を止めない真っ赤な長い髪の男に移った。
「で、コイツは誰なんだ?」
皿いっぱいに作って貰ったスコッチエッグを嬉しそうに頬張っていた男はキョトンと首を傾げた。
「パティの恩人!」
食い気が強いパティが珍しく、男に温泉卵を差し出している。
それは兄であるスコルも同じで、先程から甲斐甲斐しくもてなしている様子が見えた。
「・・・王宮の人じゃないんですか?」
心配そうに聞いているのはヒューゴだった。
彼とて、此処が何処だか忘れていない。
簡単に入る事が出来ないのに気負う事なく現れた男を王宮の関係者だと思っていたのだ。
「知らん顔だな・・・。」
カンスケ爺やの目も徐々に厳しくなっていく。
「あぁ、彼なら大丈夫ですよ。」
そんな中、1人困った様に笑うイオリが頬を掻いた。
「知り合いか?」
訝しげるヒューゴに肩を竦めると、イオリは腰バックから水筒を取り出すとコップに注いだ。
「以前、スカイヤが気に入った酒です。
1杯、如何ですか?
火龍様。」
「「火龍様?」」
ヒューゴとカンスケ爺やの声が重なり、ギョッとして男を見つめた。
「へー。スカイヤが・・・。
うん。貰う。
ありがとう。稀人。」
そして、男はイオリの差し出したコップを一気に飲み干したのだった。
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