続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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 震える様に立っていた男の手には赤黒い剣が握り締められていた。

「こんな時分にどうされた?お前様。」

 涼しい声で問いかけたソウビ王妃の台詞で目の前の男が国王トウカ・ノブタカ・ショーグンだと知り、イオリはひどく驚いた。

 髪は乱れ、血走った瞳に着崩れた着流しからは筋肉質な胸と脚が見えた。
 フラフラと1歩1歩前に足を進めてくる姿は、もはや“呪い”の行き着く先の人の歪みだった。

「うぅぅぅ。」

 唸る王は王妃の冷ややかな視線を気にする様子がまるでない。

「最近になって獣と化したか。
 嘗ての凛々しい御姿を何処に落としてきた。」

「何をしだぁっ!」

 唾を吐き出して喚いた王に王妃の声は届いていない。

 即座に侍女達が王妃の前に踊り出した。

「王よ!
 それ以上、近づいてはなりません!」

「王よ!
 お止まり下さい!」

「王よ!」

 そんな侍女達を薙ぎ倒しながら王はゆっくりと王妃に近づいて行く。
 そこに側妃・アオイが立ちはだかった。

「“魅了”された憐れな男。
 姉様をこれ以上、ガッカリさせないで。」

パンッ!

 王の頬を思いっきり叩いたアオイ妃の目には涙が溜まっていた。

「退けっ。」

 その痛みを感じるまでもないと、王はアオイ妃を力づくで押し倒した。

「きゃっ!」

「アオイ様!」

 ムネタカが駆け寄ると、アオイ妃はムネタカの頬に手をやった。

「今の王は本来の御方ではないのです。
 この様な姿を目に焼き付けてはなりません。
 貴方の父上は立派な方なのです。
 忘れてはいけません。」

 自分の子の様にムネタカを抱きしめたアオイ妃の目から悔し涙が流れ出た。

「これが、人が心を支配された成れの果てだ。」

 虚な目に悲しみを携えたソウビ王妃を睨み付けた王はワナワナと震えた。
 それは、暴走しそうな獣擬きなのか、はたまた人としての理性が抗っているか誰にも分からない。

「ひ・・・姫巫女に何をしたっ!
 アレが目を覚まさぬ!
 元に・・戻っ・・・せ!」

 ガチガチと歯を鳴らし苦しそうに叫ぶ王に王妃が驚いた様に呟いた。

「姫巫女が意識を失った?」

「惚けるなぁぁ!」

 剣を振り上げピタリと止まった王を王妃が力を込めた目で見上げた。

「その剣を私に振り下ろすか。」

「うぅぅぅ。」

 王は悔しそうに顔を歪めブルブルと震えていた。

「もう良いかな?」

パンッ!

 イオリが発射した弾が真っ直ぐに王を狙った。
 いつもの様に、近距離の楽な標的だった。

 しかし、思ってもみない事が起こった。
 王は身を翻しイオリの弾丸を弾き飛ばしたのだ。

「げっ!」

 弾き飛ばされた弾は床にめり込んだ。

「イオリっ!」

 驚いたのはヒューゴも同じだった。
 
「大丈夫です!」

 襲いかかってきた王の足を狙ったイオリは2発の弾丸を打ち込んだ。
 高く飛んで避けた王を見上げると、イオリはニヤリと笑った。

「今度こそ、終わらせます。」

バンバンバンバンバンッ!

 何発も撃たれた弾を最初の内は対処していた王も、最終的には胸を撃ち抜かれ倒れていった。

ズサササー!!!

 音を立てて倒れ込む王にムネタカが駆け寄った。

「父上っ!」

 心配そうなムネタカの肩をイオリがポンと叩いた。

「眠ってるだけですよ。」

 それを聞き、微笑んだムネタカは立ち尽くす母を呼んだ。

「母上。」

 フラフラっと近寄ってきたソウビ王妃は眠る夫の背を撫でると、安堵した様に微笑んだのだった。

「馬鹿な男・・・。」







































 














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