続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス〜

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「なんだ、もう終わり?」
「はぁ、緊張したぁ。」

「爺さんも中々の殺気を飛ばすもんだ。」
「ヒューゴ、爺さんじゃなくて爺やだよ。」
「兄様、お行儀良くしなさい。」

 双子を始めとしたイオリの仲間達があっけらかんと微笑んだ。
 汗を拭っていたのはムネタカの方だった。

「ジジ様・・・私の客人です。
 脅かさないで下さい。」

 そんな孫にカンスケ爺やは我関せずと煙管を吸った。

「ムネタカ、違うよ。
 爺やは本気じゃなかったもん。」
「ゼンちゃんが怒らないしね。」

 スコルとパティの言葉にカンスケ爺やは微笑んだ。

「ほう。
 孫よりも、よっぽど度胸が座っとる。」

 イオリに危険が及べば、従魔のゼンが黙っていない事は家族の中では当たり前の事だった。
 そのゼンがカンスケ爺やを真っ直ぐに見据えている。
 顔を顰める事すらしないゼンを見ていれば、目の前の老人が危険人物ではないと子供達は認識したのだ。
 それよりも・・・。

「いつもと違うから驚いたぞ。」

 イオリの方が人を挑発するような発言をして、普通ではなかったのだ。

「まぁ、なんとなく爺やさんの考えは分かったんで・・・。」

 心配そうなヒューゴの言葉に苦笑するとイオリはムネタカの方に視線を向けた。

「・・・つまり、私に聞かせたという事ですか?」

 戸惑うムネタカに答えたのはカンスケ爺やだった。

「ワシら隠密に比べ、王族のお前は考えが固いからな。
 まるで命を賭してでも、国を守ろうとするだろう。
 しかし、お前が命を落とした後はどうする?
 妹や弟達に国の行く末を押し付けるのか?」

「押し付けるって・・・。
 国を守る為に命を賭ける覚悟をして何が悪いのです?」

 頑ななムネタカが顔を顰めるとカンスケ爺やは呆れた様に溜息を吐いた。

「ムネタカさん。
 カンスケ爺やさんが言いたいのは、命を落とす覚悟があるのなら、それ以上に生きる覚悟を見せろと言っているんですよ。
 皆さんが崇拝する大将軍・十蔵さんは、家族の為に生き抜きました。
 貴方が見定めなければならないのは、もっともっと遠い未来のはずです。
 その為のです。」

「未来に生きる為の今・・・。」

 まるで初めて気づいたとでも言うようにムネタカの目が泳いだ。

「皆んなで一緒に生きていく。
 それが、国を預かる者達の役目なのではないのですか?」

 イオリの頭にポーレットの執務室で日々、民の生きる道を模索する公爵の姿が思い出された。

「金言を授けてくださり礼を言う。
 ムネタカよ。
 面白い男と会ったな。
 いや、これは絶対神による天命だったのかもしれないな。」

 楽しそうに笑う祖父を呆然と見つめていたムネタカであったが、イオリの言葉を理解するうちにジワジワと心が暖かくなる自分に気づいた。

「私が進むべき道を知った気がします。」

 ムネタカの瞳に力が入った事にカンスケ爺やは満足気に煙管を咥えると微笑んだのだった。
 
 
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