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旅路 〜グランヌス〜
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「わしの名はカンスケ・シノノメ。
グランヌスの王家に仕える隠密の頭目だ。」
イオリは、どこか既視感を感じる小さな老人を前にノスタルジーに浸る自分がいることに気がついた。
「シノノメ・・・。」
「古き時代に、この国の伝説となった大将軍様より授かった姓だ。
普段は海運商“イケダ屋”の当主カンザエモン・イケダで通っている。
分からぬようなら、爺やと呼べばいい。」
「海運商?」
海と無縁そうなグランヌスに海運商がいる事に驚くイオリにゴヴァンが囁いた。
「この国における海運商とは、言わば貿易商と同じです。
他国の商品を買い付け、売るのが仕事です。
我ら、ホワイトキャビンの旅団と同じですよ。」
理解したイオリにカンスケ爺やはニヤッと笑った。
ゴヴァンの言葉はグランヌスの隠密が他国にも出入りしている事を意味しているのだ。
「ホワイトキャビンってのは賢いのが集まってるな。」
それを聞き、ゴヴァンは無言で頭を下げた。
「お前さんのところの旅団長なら、一足先にやって来たよ。
これから派手にやっていくようだ。
アースガイルのホワイトキャビンと言えば、他国で人気の新進気鋭の商会と聞く。
面白い商品を扱うってんだから、王宮にも話が届く事だろうさ。
いかにも、あの女が口つきそうだな。」
カンスケ爺やが言った、あの女が姫巫女である事は、この部屋にいる者達は気づいていた。
「ジジ様・・・宮殿内はどうです?
父や母は、無事ですか?」
ムネタカの目が揺らいでいた。
「お前の母は無事だ。
後宮の奥で病と言って引き篭もっている。
連絡は取り合っているから心配はいらない。
父の方だが・・・宰相が踏ん張っているが、救出には手間取っている。
しかし、ムネタカよ。
何事も焦ってはいけないよ。」
安心と不安が入り混じるムネタカを諌めるとカンスケ爺やが王宮に視線を向ける。
自然とイオリの視線も、そちらに動いた。
「この国はな、絶えず強い者を求めている。
“神の愛し子”という戯言に惑わされたのも、その1つよ。
姫巫女の陣営についた者達の中には“魅了”などにかかっておらずとも、王を陥落させた姫巫女を敬わずにはいられぬ輩もいる。
それが、脈々と受け継がれてきた掟だ。ある意味、仕方がない事なのだ。
国のあり方は変わっていく。
それが外から来た要因なのか、内なるものか・・・時の流れとは人の一存では止められぬ。
しかしな、ワシは信じている。
大将軍が示した上に立つ者としての心得を・・・。」
「大将軍が示した上に立つ者としての心得・・・。」
《志なき強さに意味はなし。》
「支配の上の治世は、いつの日か崩壊する。
為政者は常に砂塵の上にいるという事を忘れてはならんのだ。」
十蔵が示した心得が時を超えても今尚、受け継がれていると知って、イオリは嬉しくなった。
「して、本物の“神の愛し子様”はどうなさる?」
突如、それまでとは違い、挑発的なカンスケ爺やがいた。
グランヌスの王家に仕える隠密の頭目だ。」
イオリは、どこか既視感を感じる小さな老人を前にノスタルジーに浸る自分がいることに気がついた。
「シノノメ・・・。」
「古き時代に、この国の伝説となった大将軍様より授かった姓だ。
普段は海運商“イケダ屋”の当主カンザエモン・イケダで通っている。
分からぬようなら、爺やと呼べばいい。」
「海運商?」
海と無縁そうなグランヌスに海運商がいる事に驚くイオリにゴヴァンが囁いた。
「この国における海運商とは、言わば貿易商と同じです。
他国の商品を買い付け、売るのが仕事です。
我ら、ホワイトキャビンの旅団と同じですよ。」
理解したイオリにカンスケ爺やはニヤッと笑った。
ゴヴァンの言葉はグランヌスの隠密が他国にも出入りしている事を意味しているのだ。
「ホワイトキャビンってのは賢いのが集まってるな。」
それを聞き、ゴヴァンは無言で頭を下げた。
「お前さんのところの旅団長なら、一足先にやって来たよ。
これから派手にやっていくようだ。
アースガイルのホワイトキャビンと言えば、他国で人気の新進気鋭の商会と聞く。
面白い商品を扱うってんだから、王宮にも話が届く事だろうさ。
いかにも、あの女が口つきそうだな。」
カンスケ爺やが言った、あの女が姫巫女である事は、この部屋にいる者達は気づいていた。
「ジジ様・・・宮殿内はどうです?
父や母は、無事ですか?」
ムネタカの目が揺らいでいた。
「お前の母は無事だ。
後宮の奥で病と言って引き篭もっている。
連絡は取り合っているから心配はいらない。
父の方だが・・・宰相が踏ん張っているが、救出には手間取っている。
しかし、ムネタカよ。
何事も焦ってはいけないよ。」
安心と不安が入り混じるムネタカを諌めるとカンスケ爺やが王宮に視線を向ける。
自然とイオリの視線も、そちらに動いた。
「この国はな、絶えず強い者を求めている。
“神の愛し子”という戯言に惑わされたのも、その1つよ。
姫巫女の陣営についた者達の中には“魅了”などにかかっておらずとも、王を陥落させた姫巫女を敬わずにはいられぬ輩もいる。
それが、脈々と受け継がれてきた掟だ。ある意味、仕方がない事なのだ。
国のあり方は変わっていく。
それが外から来た要因なのか、内なるものか・・・時の流れとは人の一存では止められぬ。
しかしな、ワシは信じている。
大将軍が示した上に立つ者としての心得を・・・。」
「大将軍が示した上に立つ者としての心得・・・。」
《志なき強さに意味はなし。》
「支配の上の治世は、いつの日か崩壊する。
為政者は常に砂塵の上にいるという事を忘れてはならんのだ。」
十蔵が示した心得が時を超えても今尚、受け継がれていると知って、イオリは嬉しくなった。
「して、本物の“神の愛し子様”はどうなさる?」
突如、それまでとは違い、挑発的なカンスケ爺やがいた。
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