続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜グランヌス(渓谷・渓流)〜

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「なぁ、アイツは何を見てるんだ?」

 囁くアシノは様子を伺うイオリを不思議そうに見上げた。

「危険を回避する為に、敵を見定めてるんだ。
 イオリの凄い才能だ。」

 ヒューゴが教えるとアシノは感心したようだった。

「鑑定眼持ちか?
 コイツはたまげた。 
 ワシらの仲間にも鉱石を見分ける為に鑑定のスキル持ちがいるが、広範囲で力を使える奴は初めて見た。」

 イオリの能力の一端を見たドワーフ達は顔を高揚させた。

「集中させてやってくれ。」

「分かった。」

 ドワーフ達はヒューゴの言葉に従い口に手を当てて黙った。

「どうだ?」

「何組か散らばって監視役がいる様ですね。
 それとは別に、1人でこちらに向かってる人がいます。
 リルラさんは、その間に上手く陣取ってるようです。」

 イオリは振り返るとムネタカに声を掛けた。

「どうやら、迎えが来たみたいですよ。」

「・・・ジジ様だな。
 ロク、連絡は取れるか?」

「了解ッス。」

 今のムネタカの仲間で自由に動けるのは“イケダ屋”を拠点とした隠密達に違いない。

「それなら、街道とは逆から向かうと伝えて下さい。
 1組の敵と遭遇しそうですけど、1番危険が少ないはずです。」

「うぃッス。」

 ロクは息を吹きかけると狐を送り出した。

「今の狐はなんだ?」
「妖か?」
「でも、紙から出たから魔法じゃないか?」
「ちっこくて、めんこいな。」

「俺の技だよ。
 凄いっしょ。」

 得意気なロクにドワーフ達は鼻を鳴らした。

「まぁまぁだな。」
「少しは役に立つな。」
「お前にしてはやるな。」
「よくやった。」

「ケッ!」

 不貞腐れるロクに子供達はクスクスと笑った。

____________

「なぁ、こんな場所での巡回に意味あるのか?」

 “グランヌス”の衛兵は岩に腰掛け、不貞腐れながら辺りを見回した。

「さぁな。
 上からの命令だ。
 ボサっとすんなよ。
 この間だって、なんかの失敗した奴がの配属に変わったんだぞ。」

「今の時代に遠征って珍しいよな。?
 そう言えば、最近は王子様方や姫様方の姿って見ないよな。
 確か・・・第1王子様って殿って話じゃなかったか?」

「滅多な事を言うもんじゃないが、誰にも言うなよ。
 宮殿内の警護担当の兄貴の話じゃ、随分前から宮殿にいないって話だ。
 国王と姫巫女様の事で喧嘩をしたらしい。」

「うへ。
 それじゃ、国を追い出されたのか?
 分かんねーな。
 姫巫女様のお陰で、国は豊かになっているのに。」

 衛兵の男は偉い人の事は分からんと呆れた。

「ん?」

 衛兵は周囲の視界が悪くなってきたのに気がついた。

「霧か?
 そんな様子なかったのに、ついてねーな。
 おい、源泉に近すぎたようだ。
 戻ろうぜ。」

 次第に霧が濃くなっていく中、重い腰を上げた衛兵が振り返ると、さっきまで会話をしていた仲間の足が見えた。
 横たわった仲間に気付き、慌てて近寄ると頭に頭痛が走った。

「痛っ・・・あれ?」

 そうして確認する暇もなく自分も意識を失っていったのだった。
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