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旅路〜グランヌス(渓谷・渓流)〜

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「精霊が見える少女。
 様々な精霊の力が使える少女。
 その者の事を人はと呼ぶのです。」

 ゴヴァンが齎した言葉にイオリとヒューゴは顔を強張らせた。
 
 そんな2人にクッターは聖女について話だした。

「聖女であれば、嬢ちゃんは人族の中でも稀有な力を得たと言う事になる。
 人が精霊の力を乞う事はあれど、精霊が自ら力を貸してくれるのだから、人々は聖女を崇めるだろう。
 認められれば、国が総力を上げて守ってくれるぞ。
 何処ぞの国では姫の様に扱うだろうし、その家族達も恩恵が得られるだろう。」

ーーーどうする?

 そう、問いかけたクッターを前にイオリとヒューゴは顔を見合わせた。

「なかった事にしましょう。」

「そだな。」

 なんて事ない会話で決めた2人にクッターは驚いた。

「何故だ?
 あの子の力は人が持つには余りある物となる。
 それを人の為に使い、恩恵が得られるのであれば、皆幸せではないか。」

「わざわざ強制されなくても、あの子は人の為に力を使いますよ。」

 イオリが優しく微笑むとクッターは目を見開いた。

「ニナは俺の妹だ。
 もう・・・2度と囚われの身になんかさせるものか。」

 ヒューゴは愛おしそうに妹をみつめる。

「ニナは好きな時に好きな場所に行き、自由に笑っていればいい。」

 ヒューゴが呟くとゴヴァンが耐えきれずに笑い出した。
 
「フハハハ。
 お2人なら、そう言うと思っていました。
 所詮、聖女とは、国の道具にしかなりえません。
 それを悪用すれば“グランヌス”の姫巫女と同じです。
 ニナ様の幸せはニナ様が決めれば良い。
 しかし、気を付けて下さい。
 世の中には巨大な力を私利私欲に利用する者達もいるのですから。」
 
 ゴヴァンの真剣な顔にイオリはニヤリとした。

「その時は最大限のを利用しますよ。」

 そう言うと、イオリは自分の指で煌めく指輪をキラキラとさせた。

 自分の為に使う事はないくせに、家族の為には躊躇う事なく権力を使う。
 そんなイオリにゴヴァンは嬉しそうに微笑み頷いた。

「仰せのままに。」

 イオリとヒューゴが満足気に笑っていると、唐突にクッターが抱きついてきた。

「・・・ククク。
 気に入った!
 ワシはお前等の様な男が好きだ!」

 興奮した様に飛び跳ねるクッターをイオリだけでなく、ヒューゴやゴヴァンも微笑んで見つめた。

 クッターは、それまでの思いを吐き捨てるように空に向かって叫んだ。

「そうだ!
 権力がなんだ!
 何がを作れだ!!
 そんなの、真っ平御免だ!
 馬鹿野郎ー!」

「・・・ん?」

 唖然とするイオリ達を気遣う事もなく、ドワーフの叫びは高い高い空に向かって吠え続けられるのであった。
 
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