続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜グランヌス(渓谷・渓流)〜

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 新しい仲間を迎えての楽しい食事会をした翌日。
 口を開けて、大きなイビキを上げて眠っているドワーフを見下ろし子供達はクスクスと笑った。

「「「「グオォォォ。」」」」

「大きな魔獣みたいなイビキ。」

 パティが1番側にいたルースターの鼻をツンツンとするとナギとニナが堪えられずに吹き出した。

「うわっ!
 おっさん達、これでよく無事に洞穴で過ごしていたッスね。
 うるさくて動物や魔獣に見つかってもおかしくないでしょう。」

 ロクは呆れ顔で近寄ると子供達と一緒に鼻を突っついた。

「おじさん達は音楽隊を目指すロバ達みたいだね。」

「・・・何それ?」

 ナギが微笑むとロクは眉間に皺を寄せて首を捻った。

「沢山働かされたロバが歳をとって働けなくなると主人に酷い事をされるんだ。
 だから主人の元から逃げ出して遠くの街で人気の音楽隊に入る決意をした。
 その途中に同じ境遇の犬と猫と鶏と仲良くなって、一緒に音楽隊を目指すんだけど。
 途中で盗賊達の家を見つけてね。
 4匹は協力して盗賊を追い出すんだ。
 その後は、その家を気にって一緒に住むんだよ。」

「へー。
 なんかの作り話?」

「作り話じゃなくて御伽話。
 世界中には、今みたいな沢山のお話があるんだって。
 このお話も《信頼していた人に裏切られても、新たな出会いがあるよ》って教えてくれているんだよ。」

 子供離れした考察のナギにロクは関心した。

「おじさん達は国の人に酷い事されたけど、国を恋しく思ってた。
 イオリやロクと出会って、帰る勇気が出たんだね。」

 そう言うとナギは、パティとニナに声を掛けて朝食の準備をするイオリとスコルの元に走って行った。

____________

「・・・ここにもない。
 あそこにも無かった・・・。
 一体どこにあるのだ。
 口惜しい。口惜しい。口惜しい。」

 ブツブツと部屋を彷徨う人影があった。

「ダンジョンを探しても見つけられない。
 役立たずのドワーフ共には作れなかった。
 は絶対に破壊は出来ない・・・。」

 荒い呼吸が、この人影の焦りを感じさせていた。

「アレさえあれば・・・この世の全てが手に入るのに・・・。
 あぁ、口惜しい。口惜しい。」

トントントン

 その人影は自分を呼ぶ声にギョッとすると、衣装を整えて何でもないかのように扉を開けた。

「姫巫女様がご起床なされました。」

 女達の通る声が離宮に響き渡る。
 
「今日も1日良い日だ事。」

 人影は離宮に押し寄せ列を作る貴族を眺めると、ジワッとした黒い物が心を満たしている様に感じた。

「姫巫女様のおなーりー!」

 今日も今日とて“グランヌス”の変わらぬ風景が始まった。
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